リアル=リアル9
号
【暖炉ノ横デ】
一列に並んで暖を取る。
冬。雪が降らないだけでも有り難いこの季節。
雪は嫌いだ。白いから。
水面に張った氷も嫌いだ。
自分の思想を感情を見透かされているみたいだから、たまらない。
心が狭いとよく例えられるけど強ち宛っているかもしれない。
『お兄ちゃん、部屋が暖まらないよ』
何故か僕のことをお兄ちゃんと呼び始めた椿の妹―紫苑。
一週間前から呼び始められた気がする。
まぁまぁ自分の妹にも同じように呼ばれてたから驚きはしなかったけど。
アイツもアイツで苦労してるんだろうな。
こっちは負われる側だけどさ。
あんな万能の奴の策なんて、どう回避したらいいのだろうか。
『アイツの万能は度が過ぎ過ぎてる』
独り言は誰にも気づかれないまま虚空に吸い込まれていった。
―ていうか僕達が暖炉の前にいるから、部屋が暖まらないんだろ?
【隣ノ過去】
僕がいた。
隣には妹がいた。
禁断の恋が似合う関係だった。
兄妹って言っても血は繋がっていない。
僕は養子だ。
家族だったのに、何時の間にか弱者強者の関係。
全て過去のお話だけど。
だけどだけどこんな有り様。
二人が家族になる前―。
僕が人さえ殺さなかったら―。
こんなことにはなっていなかったのかもしれない。
僕は呪われているから。
仕方がないのだけれど―。
哭