リアル=リアル8
兄
【案外心外】
数日間続いた雨は止み、山の麓は霧で覆われている。
雨は降っていないものの重たいどんよりとした空が広がっていた。
『おねーちゃん…』
僕は困惑していた。
少女なストーカーに追い回された挙句、
―殺されそうになった。
『おねーちゃん…。おねーちゃんを返して!』
可愛い可愛い。愛でたく、ナデナデしたくなるような声。
幼い幼い声を上げて僕を殺そうとする。
服装は着物がイメージされているだろう。
後は短刀。時代劇でよく見かける刀を真っ二つに割ったようなサイズのモノ。
透き通った黒色の刀身。その鞘にはBorBの文字。
二度目の報復。
『僕も随分と舐められたものだね』
そう思っていたらこのザマ。桁外れに強い。
―気ィ抜いたら殺されそうだ。
てか、今ナイフ持ってねぇ。どうしよ。
『おねーちゃんを返せぇぇぇえええ』
彼女は叫ぶと力強く此方に駆けてくる。鬼の形相だ。
正直マジで怖いです。
まぁ此処で殺されるわけにもいかないので、運良く転がっていたガラスの破片を掴む。
腰のポシェット。中には結蜘蛛が五本入っている。
毒は塗っていない。時間がないだけだけど。
彼女との距離、約3m。
時間稼ぎの為に一応砂を投げてみる。
………命中。
『ひゃぅぅぅぅぅ』
また可愛らしい、愛でたくなる声を上げた彼女。
心外。当たらないと思っていたのに…。
まさか、ねぇ。
BorBの内の一人じゃないのかよ?
取り敢えずポシェットの中から縄を取り出して拘束。
家にお持ち帰りして事情聴取をしようと考えた。
『お持ち帰りって……なんかエロいな』
【以外ナ再会】
とある大手スーパーマーケットで巨大な布を購入。
それで拘束した彼女をラッピングして持ち帰ってきた。
まるで小動物みたいだな。コイツ。
少女の名前は紫苑というらしい。
『紫苑!あなたどうして此処に?』
紫苑が僕に『お姉ちゃんを返せ』と言っていた理由。
まんま、彼女たちは姉妹らしかった。
『確かに言われてみると…似てる気がしないでもないな』
そう言えば…と椿が言う。
『大稀君には兄弟いないの?』
僕には…僕には…ねぇ。
『兄や弟はいないけど妹ならいるぜ』
BorBのリーダーらしいがな…。
妹