2話 お友達
今回は短いです。
入学試験があけて次の日。
わたしは朝から、剣の鍛練をしていた。剣の鍛練は、向こうの世界でもずっとしていたし、アートレッドに居たときも毎日していた、わたしの生活に欠かせないもの。もし、やらなかったりした日に襲われたりしたらと思うと、全くやめることができない。だいたい、この世界は前居た世界よりも文化水準がかなり下で、せいぜいルネサンスくらいのヨーロッパ程度の物だ。だから、自衛のためにはあの世界の何倍もの努力が必要で、わたしが女なので、さらにその必要性は高かった。ま、ぶっちゃけた話魔法を出し惜しみしなければどうとでもなるんだけど・・・それでも剣をやっているのは、幼いときの生活習慣のせいだね。うん、少しナーバスになってきた・・・
「サクヤ、いつもより剣を振ることに対しての姿勢がいいですね。何か良いことがありました か?・・・ もっもしや、本当にだれか好きな女の子ができたとかですか?あっあの、その、わたしは 応 えんして上げますからね。うっうん、気にしませんし。」
「・・・気が散るんだけどっ。」
全く、人のことなんだと思っているんだか・・・わたしが女の子に恋何かするわけないじゃないの。だって同性だよ?ホントにアルフィは信じられないことを言ってくるな・・・
「ってゆ~かさ、わたしが昨日気になったのは、ねこ耳のこだよ。男何だけどさ、落ち着いていそう で、とてもかっこよかったんだよね。試験官を倒していたし・・・」
すると、アルフィは更に顔を変化させた。
「つ、ついにあなたも一目ぼれを・・・」
「す~る~かっ。」
わたしが放った一撃は、正確にアルフィのあたまをえぐった。うん、ナイスコントロール!
**
あれから紆余曲折の末に学園に来てみると、もう人が沢山居た。試験結果の発表は、10時から。今が9時半なのを考えると、この国の人たちの騎士などへの思い入れの強さがうかがえる。中には午後の入学式のための服をすでに着ている人も居てここはとっても華やかだ。・・・っていうか、合格発表の日に、入学式があって、寮にも入らないのといけないのはどうかと思う。そんなだと、故郷とのお別れもできないじゃない・・・あ、わたしにはお別れする相手すら居ませんけどね!・・・べ、別にさびしくなんてないんだからね!!
(・・・心の中で独りでツンデレのまねごととか・・・少しひきますよ?)
(うっ、うわあああああああ~~・・・ひっ、人の心を読まないでよ!それくらいのプライバシーくら い守って。)
(それはそうと・・・前、昨日の人たちが来ていますよ?)
「ふえ?あ、ティアさんたちだね。どうしたの?」
言われるままに前を見ると、そこにいたのは昨日の三人、ティア、メアリー、シャルロットだった。わたしはとっさのことで、素がでそうになったけどそこは持ち前の適応力でなんとか男の子モードになる。いやー、あぶなかった。やな汗が背中をすべり落ちたね・・・
そんなことを考えているわたしのことはつゆ知らず、三人はわたしに近寄ってきてこういった。
「おはようございます。いや~、サクヤ君のようにかっこいい人に名前を覚えてもらってるなんてわた しは幸せだな~。ふふふっ、ねえ、これからひまかな?だったら私たちと一緒に来てほしいんだけ ど・・・ん、あ、いっしょに来るって言うと少し危険なひびきだったね。え~と、正しくは一緒に入学 式まで居ない?わたしたちは、親も来ないからちょうどひまなのよ。」
ティアちゃんはとてもかわいい笑顔で言った。うん、まちがいなくほとんどの男はこれで落ちるね。一撃必殺だよ。それに、すごく気配りができるんだな~。今も、わたしが途中で顔を少ししかめたのを見てすぐに訂正してたし・・・完ぺきな淑女だ。・・・って、早く返事しないと。
「うん、いいよ。ぼくも親は来なくてね、少し暇をもてあましていたんだ。そろそろ発表も始まるし、 それが終わったらどこかにいく?ってことかな。」
「うんっそうなの。あのねサクヤ君。この学園の中にはね、あの有名なケーキ屋さん「モン・テ・マー レ」があるんだよ。だからねだからね、みんなでそこに行ってね、これからよろしくね~の会を開く の。」
「・・・メアリーテンション高すぎ。わたしにとってその声は頭に響くからやめてほしい。」
「あう、シャルロットちゃんこわいよう・・・」
元気よくロリ感全開にして話すメアリーと、それに対してつっこみ(おどしかな・・・?)を入れるシャルロット。やっぱりこの三人はおもしろい。この学園に来て初めてあったのがこの子たちで本当に良かったな~って思う。なんたって、ともだちなんて・・・わたしにとって夢の中の存在だったから。あっちではいろんな理由が重なって友達ができなかったばかりか、いじめをうけていたんだし、こっちでは何年もアルフィと2人だったので、物理的に友達作りなんてできなかった。だから、今のわたしはすごく幸せなんだ。
そう思っていたら涙が出そうになったので、とりあえずわたしは爆笑でごまかした。
「ふふふ、あはははははは。」
「ええっ?サクヤ君どうしたの?そんなに笑って・・・。」
「ごめんごめん。ふふっ、いや~すまなかったね。メアリーさんとシャルロットさんのかねあいがおも しろかったからつい笑ってしまったよ。」
わたしがそう言うとメアリーちゃんは顔を真っ赤にしてしまい、何も言えなくなる。うん、かわいい。・・・対してシャルロットちゃんの無表情もすごい。
そんなふうにわたしが楽しんでいると、ティアちゃんがそろそろ時間だと言った。とたんに強く鳴り出す心臓。もしこれで落ちたら、わたしはどうなるのだろう?ティアちゃんたちともお別れなのかな?いっ・・・いや大丈夫だ。わたしは受かっているはず。そう思うことでこみ上げる不安を抑えながら、わたしは張り出された紙の方に行くのだった。
「えーと、わたしは・・・あっ、あったよ。となりにメアリーのもあるね。う~んとシャルロットのは?」
「・・・一番左上。主席・・・。」
「あっ、ほんとだ~。むぅ、シャルロットに負けるとは・・・」
ティアちゃんたちがとても喜んでいる・・・。だけど・・・わたしの番号はない。そんな、と思ってもう一度端から端まで見てもなかった。・・・どうしよう。わたし、こんなところでまた・・・それにこんなに楽しいところから、こんなに楽しい人たちとお別れなの?
「あっ、サクヤ君はどうだった?やっぱり合格だったよね。」
笑顔で聞いてくるティアちゃん。その笑顔が何よりも心にささる・・・
わたしは、ふるえる指で上を差しながら言った。
「・・・ないかな・・・」
悲痛そうなわたしの声。自分でも分かってしまう。でも、そんなわたしにかけられたのは、わたしの予想していた(求めていた)ものとは全く違う言葉だった。
「・・・いや、あたりまえじゃん。それ、魔装姫科の合格発表だよ?男の子はとなりの紙でしょ?」
「え?」
言われて見て分かった。わたし、本当の性別は女だから、いつのまにか魔装姫科を違和感なく見ていたんだ。
「ぷっ。うっわ~・・・ふふふっサクヤ君おっちゃめ~。わたしでもまちがえなかったのに~。それともなになに!サクヤ君って、女の子になりたいの~?確かに顔はきれいだし、女装とかしてもかわいくなると思うけど、流石に笑っちゃうな~。ふふふっあはははははははっ。」
流石に腹が立ったので、うん、いじめてあげなくっちゃ♪♪♪
「ふ~んそっか~。そんなにメアリーは、早死にしたいのかな?」
「え・・・」
わたしが一言言っただけで黙るメアリーちゃん。その顔には「恐怖」の文字が、ありありと浮かんでいる。そこでちょっとにらんで上げると・・・うわ、か、かわいいい!!!上目づかいでわたしを怖がる感じがとってもいい。ああ、わたしが女だというのがばれても良いからだきつきたいな・・・。
(いや、ダメですよ・・・)
あくまで冷静なアルフィ。むぅ。
(アルフィ、それでもかわいいでしょ?いいじゃん思うだけは)
(いえ、私がかわいいと思うのはあなただけですし、抱きつきたいのもあなただけですから。)
(っ~~~~~。)
(ふ、ふいうちだよ~。アルフィはわたしのお姉ちゃんみたいなものなんだから~)
結局、わたしは実行にうつせない。むぅ、反則だ。あんなの。
「クスッ。冗談だよ。ぼくも少し天然だからこういうことはよくあってね。怖がらせちゃったかな?」
そういってわたしはメアリーちゃんの頭をなでる。
「ふあ。」
そしてとってもかわいい声をだすメアリーちゃん。そのかわいさに自然と笑ってしまった。と、その時横腹をつつかれる。
「・・・ずるい。わたしも、がんばって主席とった。頭なでてもらっても良いはず。」
「・・・」 「・・・」
びっくりして何も言えないわたし。メアリーちゃんも固まっている。・・・シャルロットちゃんの意外な一面だ。
「う、うんいいけど・・・こ、これでいい?」
「いい。」
なでてあげると、シャルロットちゃんは気持ちよさそうにした。そんな顔を見ていると、冷たいというイメージは消え、かわいいと思う。・・・あれ?一国の姫様にこんなことしても良いのかな、と段々と不安になってきた。しかし、途中でその不安は魔装騎士の方を見てきたティアちゃんが戻ってきたことで、
「ねえ、サクヤ君。あなた主席だったよ。ホントにすごいね~。って、なにしてるの?」
「い、いや、これは・・・。」
「ずるい。わたしにもして欲しいな・・・」
おさまらなかった。
***
午後になり、わたしたちは入学式に行く。・・・それまでの間はどうしたって?・・・言いたくないね・・・
と、まあ、それはさておき。入学式は体育館で行われる。でもこの体育館はあっちの世界の物とは大きく違う点がいくつか会った。第一に天井がかなり高い。だいたい上に三十メートルほど。たぶん、魔装姫科の授業で使うのだと思う。というか、それくらいないと、風属性魔法はアドバンテージがなくなったりするのだ。だから必然的にあんなに高い天井になる。第二に、四角くない形をしている。これもたぶん天井と同じ理由でこうなっているんじゃないかと思う。たしか、魔装姫科では、結界魔法を習うから円状に魔力を広げる必要があったのだ。つまりこの体育館では、魔法を練習すると言うことだ。・・・魔装騎士科では知らないけど・・・
「ねえ。サクヤ君。わたしたちクラス同じかな?一緒が良いよね。」
「そうだね。でも、このメンバーは試験の成績がけっこう良かったからならないんじゃないのかな?」
今みんなの中で話題になっているのはクラス割りのことだ。この学園、今年の入学生の数は128人の魔装騎士科と、144人の魔装姫科の総勢272人だ。それを8個のクラスに分けることになっている。たぶん、力量とかで決めるからみんな違うクラスになるんじゃないかな・・・
「サクヤ君、この学校のクラス決めは先生たちのくじ引き合戦で決めるんだよ。だからだれでも、同じくラスになる可能性はなくはないの。だからそれを祈ってね。」
「そーだよ~。わたしも一緒がいいし~。」
なるほど、とわたしは思った。よし、わたしのクラスの先生・・・ひいてください。
わたしたちが祈るような気持ちで居ると、入学式は始まった。
本当は次のとセットでしたがテンポが悪くなる気がして・・・
そのかわり、つぎはすくなくとも明日中に上げたいと思います。