1話 入学試験
さて、ようやく学園へんがスタートします。
クラリウス島。
そこは、海洋国シリウスにおいても、特に不思議な島。
そこには、一年中目に見えない結界が張られており、だれもなかに入ったことはない。
以前、シリウスの聖装騎士も入ろうと試みたが、中からほとばしるするどい殺気に当てられ、入るのを断念した。その時は、国中で偶像として恐れられている「悪魔」をもして、「デーモンアイランド」と名付けられていた。
しかし、三十年前からその島は「聖域の島 ホーリーアイランド」と呼ばれ始めた。
それは、ある日のこと。空から一筋の光がさしたかと思うと、天に一匹のドラゴン、それもアークドラゴンが姿を現し、島に向かって光り属性の竜魔法を撃ちだした。
そしてその後、その美しいドラゴンは島へと入っていき。それ以来姿を現していないのだという。人々は、その後から島に美しい鳥や、素晴らしく色あざやかな花などが、そこに生えるのを見て、以来その地をシリウスの守り神の島として奉っているのである。
「・・・なるほど、私はこんなにも有名人になっていたとは・・・とはいえ、私は国を助けたのではな いのに・・・人間とはやはり理解しがたい生き物ですね。だいたい、勝手に奉ってて・・・私本人の意 向は無視ですよ?それに戦闘を盗み見するなんて許せません。層は思いませんか?サクヤ。」
「・・・そうだね・・・わたしだったら、洗たくもできないドジッ娘なんて、奉らないわ。第一、本人 が自分のパートナーなんだから。」
わたしは、軽く苦笑を浮かべつつ、アルフィにそう答える。迷惑だ、不服だ、と言う割に彼女が喜んでいるのは、その口元を見ればわかる。やっぱり、何年も一緒にいれば、これくらいの変化なんて、普通分かるものよね!・・・それにアルフィは、何年も姿を変えていないのだから・・・
そう思案にふけるわたしは今、アルフィと、シリウスの首都のモルサリウス島の南西の島、学園島グラディウスに、来ていた。ここグラディウスはに来たのは、学園に通う為だ。
わたしは、アートレッドを、追い出されてから、アルフィ・・・アフロディテと、2人で暮らしていた。そこでの暮らしはとても楽しく、夢のような日々だった。だけど、わたしには、やりたいことがある。それは、騎士になること。そして、わたしを捨てたお父様に、もう一度家族の一員として、認めてもらうことだ。 たぶん、この話を聞いた人は、なぜって思うと思う。自分を捨てた人にまた認めてもらうなんて変だ、とか、普通は自分のことを捨てたやつなんて許さないだろ、とか思うと思う。
でも、わたしはアルフィと一緒に数年生きてきて、愛されることの幸せを知った気がする。
だから、あの人たちと楽しく過ごした日々に戻りたい。今は、そう心から思うのだ。
ついでに、アルフィも異端と呼ばれた自分の存在証明をしたいらしいし、わたしたちはまず騎士になろうと思ったのだ。 ・・・・・・・・・女性と言うのを隠して。
「それにしても、サクヤの男装姿は、本当に貴公子のようですね。・・・・・・ハーレムが簡単に作れ そうです。ま、本妻は私ですけど。」
そんなことを言うアルフィ。わたしにハーレムなんか出来る分けないでしょうと、心の中でつぶやく。わたしなんて美人でも、イケメンでもないのだから・・・。
「さ、バカなコントはここまでにして、お宿を取りに行こうか?」
「そうね」
***
私たちが取った宿は、「竜の腰掛け」という、チャーミングとアルフィが言っている宿だった。
ガラン
そんな音を立ててあくドア。そんな涼やかな音が、心地良い。また、ドアを開けたところにある沢山のドラゴンのぬいぐるみたち・・・。
「アルフィ、決めた。ここにしよう?いいよね?はい決定。」
「ふふっ、やっぱり女の子ね、ぬいぐるみに反応するなんて・・・」
女の子の、「子」を強調して言われたので、少し、イラッとするけど、今はおいておく。
そんなやりとりをしていると、奥から出てきたお姉さん(たぶん、看板むすめというのだろう)が
私たちを見てこういった。
「あら、いらっしゃい。えーと、女の子2人で良いかな?もし、そっちの銀髪の子が男の子だったら、
お引き取り願いたいのだけど・・・ここは、男子禁制だからね。」
男子禁制と言ったところで、一瞬目を細めるお姉さん。うん、あれだ、この人は怖い人だ。
そう心の中でメモを取っておく。でもまあ、私は女だから被害は受けないだろうけど。
「あっすみません。今は服の持ち合わせの関係で、こうなってしまっただけです。わたしは、
歴とした女ですから安心してください。」
「・・・そうみたいね。それにそっちのけがあるわけでもなさそうだし・・・ふふっ、歓迎するわ。
ようこそ、女の子だけの宿、「竜の腰掛け」に。私は、ミソノ。この店の女主人をしているわ。
えーと、あなたたちは?」
「はい、わたしはサクヤ=アーク。こっちの子が、アフロディテ=アークです。」
わたしたちは、女の姿で2人で居るときにいつも姉妹と言うことにしていた。
「そう・・・サクヤちゃんと、アフロちゃん・・・うーんと」
「私はアルフィと呼んでいただけるとうれしいですね」
「そう・・・じゃあアルフィちゃんね。えーと、二泊で良いかな?」
わたしは内心かなり驚く。だって、元々二泊するつもりできたからだ。
「ふふふっ、何でって思ってるのね?簡単な事よ。だって、あなたたちは、入学試験を受けに来たんで しょう。
だったら、二泊がちょうどいいもの。」
「すごい。」
ミソノさんは、とてもすごい人なんだろうと心の中で考える。だって、人と違うから。ミソノさんはた ぶん冒険者をしていたに違いない。長年鍛えている勘がそっと私にそう告げた。
「それじゃあ、2人とも205号室ね。それじゃあ。」
「ありがとうございます」
私はそう言って入り口を後にした。
十分後
「・・・サクヤ、そろそろひくわ。」
わたしは部屋にあった沢山のぬいぐるみに抱きつき、幸せの絶頂にいた。
「今日は、もうどこにも行かないんだし、いいでしょう?それに、森にはこんなにかわいいの
居なかったんだもん。」
かわいいは正義だもん!やっぱり、女の子の宿は、こうでなくちゃ!
結局、わたしはその日、10年ぶりに見たぬいぐるみに、ずっと抱きついていたのだった。
***
次の日。
今日は、朝から晴れわたっていて絶好の試験日和だ。向こうの時は、大雨だったから、なおさら素晴らしく感じる。こころなしか、試験も簡単になる気がするのだ。
今、わたしは男装をして、1人で歩いている。さらしをきつくしすぎたから、少し苦しいけどこの男装は意外と様になっているのではないかと思う。銀の髪に、今着ている白系のふくは、よくマッチするのだ。
あとついでに、アルフィはどうしているかというと、わたしの肩に、最小サイズになって座っている。
なんだか小鳥みたいでほおずりしたくなるのはひみつだけど・・・
「えーっと・・・筆記試験は第1館か・・・ま、ゆっくりいくかな。」
(今の女っぽかったよ。)
そう言う心に流れて来る言葉は、無視して会場へと向かう。
会場の第1館は、遠目に見てもとても大きい。学園はすごいな・・・
会場に着くと、上級生のお兄さんが、わたしを部屋に案内してくれた。ただ、お兄さんがアルフィを見て、
「とかげか・・・」
と言ったときには、アルフィがこの人に攻撃をしそうになり、わたしはとてもひやひやした。だって、
アルフィは加減をしないし・・・
そんなこんなで試験の席に着く。周りをざっと見わたすと、どの人も身なりが良かった。
(やっぱり、貴族は多いですね。人間は遺伝で魔法の属性が決まりますから・・・)
(そうだね、でも、中にはなんにんかふつうの人もいるよ。)
(まあ、どっちにしても、サクヤが受かればいいだけですし・・・気楽に生きましょう。)
(・・・話フッタのそっちでしょ・・・)
「ふう。やっとおわった~。」
筆記が終わると同時に気がぬけた。問題が簡単すぎたから、一問も間違えられないと思ったら、これは
結構神経を削る。やっぱりなれないものだと心の中で思った。
どこかで昼を食べよう、と思った矢先、声がかかる。
「ねえ、その・・・私たちと一緒にご飯食べない?」
ふりかえると3人の女の子たちが居いた。
「え?ぼく?・・・べつに、いいけど。」
わたしがこう答えると、女の子たちは、
「やった。」「さすがティアね。」「幸せ。」といっている。どうしたんだろう?
ま、それはおいといて三人のことを観察してみる。
一人目は、わたしに話しかけてきた子から。
そのこは、背がすらっと高く、出るところは出ていて、引っこむところは引っこんでいてとても良いスタイルだ。顔も、まつげが長くてくちびるがふっくらしていてとてもかわいい。わたしもこんなにかわいかったらなーなんて思う。すごく思う。
二人目は、すぐ後ろで、ちょこまかとしている子。
この子は一人目のこと反対で見事にまな板。ぞくに言うロリ。後ろに二つにしばったツインテールの
金髪や、笑うと顔にできるえくぼなんかが、更にそれを強く感じさせる。うん、この子はたぶん三人の
中の妹役だね。
三人目は、とてもとても奇麗な子。かけている眼鏡や、その少し冷ための顔立ちが奇麗にあわさって
女王様と呼びたくなる。
ってゆーか、なんでこんなに奇麗な子たちがわたしに話しかけてくるの?
男装しないといけないわたしへの嫌みかっっっ!!!
「自己紹介をまずしたほうがいいよね?わたしからするよ。
わたしは、ティア=メルト=アーディナル。アーディナル家の長女です。あ、でも貴族とかそういうの
あまり気にしないでね。わたし、そう言うのきらいだからさ。ついでに、使える属性は、水と嵐よ。」
「じゃあ次はわたしだね♪♪
わたしは、メアリー=オルコット=ゼネルっていうの。ゼネル家の次女だよ。使える属性は火と土と 氷。いがいとできるでしょ~~」
「では、わたしも。
わたしは、シャルロット=ビスカ=シリウス。属性は、光。一応、この国の姫。」
三人の自己紹介を聞き、わたしは思った。
「・・・有名人だけなんだね。すごいメンバーだ・・・。」
そう、今目の前にいる三人は、すごい身分の人たち。
アーディナルと、ぜネルは、アートレッドと変わらないし、・・・それにシャルロットは王族じゃん!!!
というか、わたしはこの三人と昔会ったことが確実にある。。アートレッドの長男としてだったけど。
でも、やっぱり久しぶりにあえてうれしい。・・・本当のことを言えたら、なおさらだけど・・・
(わー・・・もうかかったんだ・・・えものが。)
バカなことを言うだれかさんはさておき、わたしはこう続けた。
「えっと、ぼくはサクヤ=アーク。よろしくね。」
こうして、昼の休憩は驚きと共に過ぎていった。
***
食後、わたしは1人で魔法の試験会場へ行く。
さっき3人とした話によると、彼女たちは魔法試験はパスらしい。もともと実績のある家に生まれると、そうなるらしいのだ。逆にわたしは頑張らなくてはいけない。肉体強化魔法は得意だけど、ゆえにあまり練習はしていない。あの森の中でも、特に習ったのは属性魔装だ。だから、少し試験に不安が残ってしまうのは、仕方がないことだと思う。ま、最悪、体術試験でカバーすればいいし。
そんなことを考えつつ、会場の中に入った。魔法試験の会場の中は、何個かの列ができていて、どうやらそれに並んでいくみたいだ・・・不思議な試験だな~。
さっそく、と思って並んでいると、案外順番は早く来た。
「次、入りなさい。」
おおっ、何か昔の面接みたいだな・・・
「はい。」
そうして中にはいると、筋肉もりもりのおじさんと、イケメンなお兄さんが居た。・・・おじさんは完全に引き立て役だ。容姿的にね。
「いまから貴様にしてもらうことは一つだ。」
おじさんが、すごく怖い顔でそう言う。うん、犯罪者みたいだ。
「はい、しっかりとやります。」
「うむ、よろしい。では、お題は、この建築にも使われているレンガを割ることだ。手本をやるから見 てろ。」
うん、100%かわら割のまねだよね。
そんな風に思っていると、イケメンのお兄さんが20個くらい重ねた物に、上から思いっきり殴る。すると、レンガは一番下まで奇麗に割れた。うん、すごい。
「もちろん、この試験には、肉体強化を使っても良い。じゃあ、やってみろ。」
「はい。」
お兄さんが用意してくれたレンガの前にたつ。意識を右手に集中・・・
【ブースト】
心の中でそう叫ぶと同時にわたしは右手をふり下ろした。
ズガンッッッッ
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
うわ、やっちゃった・・・まさかこんなに軟らかいレンガだったなんて思わなかった。手が床を貫通しちゃったよ。
「ゴホンッ。上出来だ。次の試験の所に行きなさい。」
「・・・はい。」
気まずい空気は、晴れなかった。
***
気を取り直して、わたしは最後の体術試験に臨む。
わたしはもともとあっちでも剣術をやっていた上にこっちでは小さいころからずっとやっていたということから、この体術試験は、稼ぎどころだ。アルフィと森にいたころも、よくおおきなくまさんと戦ってたし。
試験の形式はとても簡単で、上級生と戦うらしい。相手もそれなりに強いので、毎年上級生に勝てるのは2~3人。
そんな中で勝ったら、とても合格に近づくだろうな・・・
「では次、始め。」
今戦い始めたのは、わたしの一個前の人。顔はちょっと冷たいけどイケメンだった。でも、そんなことよりも気になることがある。それは、頭の黒い髪の間から出る・・・「ねこみみ」だ。・・・めっちゃさわりたい!!!もう、なんか、ずるい。イケメン×ねこみみ って犯則だ。反則じゃなくて。
しかし実際に戦いを見てると、相当強いのが分かる。
相手の上級生は槍使い。長いリーチと、素早い刺突で確実に相手にダメージをあたえていくタイプ。だから、普通は大きくおされることはない。なのに、ねこみみの彼は上級生を圧倒していた。
「すごい・・・。」
その剣技は、まるで舞のよう。相手の攻撃をひらりひらりとかわして、相手がつかれを見せた瞬間に強い一撃を入れる。
ちょうのように舞、蜂のように刺す。それを完ぺきにしたような剣だった。
「勝者イクト=グレンタール。」
最後にねこみみ君(イクトというらしい。)が、相手にけりを入れて試合終了。周りからは少しの歓声があがった。戻ってくるときに目があったので微笑みかけると、軽く返してくれた。やはり、イケメンは少し違うな~。
「次、サクヤ=アーク。」
「はい」
よし、今度はわたしの番だ。え~っと、相手はハンマー使いか・・・武器がやられる前にさっさとやろうっと。
そう決め、わたしは久しぶりに本気を出そうと目をつぶった。
「では、始め。」
わたしは合図と共に前へかけ出す。目をつぶりながら。そして、間合いにはいると同時にたたきつけられたハンマーをかわし・・・
”千崎流 心月 改”
抜刀術をつかって、上級生のおなかに一太刀いれた。”心月”は、向こうでわたしが得意だった技だ。相手のふところにもぐりこんで、強烈な一撃を入れる技。昔は鎧通しと言われていて、かなり恐れられていたという。その強さの秘密は、貫通力にあり、それゆえ鎧を越えて相手に傷をあたえるので、その名が付いたらしい。今は刀がないからそこまで強くないけど、どうやら上級生を気絶させる力はあったよだ。
「・・・勝者サクヤ=アーク」
間があったのは気になったけど、別にきにしない。
これで入学試験はすべて終わりだ。あとは、神のみぞ知る!!!だね。
そしてわたしは会場を出て、走り出す。
なぜならわたしは早く宿に行かなくてはならないのだ。
「ぬいぐるみがわたしを待ってる。!!!」
だれにも聞こえないくらい小さくわたしは叫び、足早に学園を後にした。
今回、サクヤの戦闘はとても短くしました。その理由は簡単。すぐ後に、もっと燃える戦いがあるからです。そのときをお楽しみに!!
読んでくださり、ありがとうございました。