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Another world/Another HEARTs  作者: sakuya-konoha
2つの世界で
3/11

2話 REMEMBER and BRAEK OUT

今回物語が動きます。では、どうぞ

ディランに呼び出され、ラルクスが向かったのは、このアートレッド家の中でも、特に異様な部屋だった。 


 選定室。通称、栄光の間。

 

 その名の通り、選定の儀を行う場所。しかし、どの家にもこの部屋があるとは限らない。

 栄光の間と言われる通りに、この部屋があることは、その家の権力、あるいは国への貢献度を表す。  それは、この部屋の中央にある石のためだった。

 その名を 「帝騎石」 または、 「帝妃石」 と言われ、この海洋国、いや、世界でも希少とされる鉱石である。その色は、魔力の満ちるところ、あるいは魔力を流すことで多彩に変化し、内から不思議と人を引きつける輝きを宿していた。

 かつて、この石の価値が見いだされる前の時代の時でさえこの石をめぐり戦争が起きたと言われている。

 しかし、この石の価値が見いだされてからは、国同士の友好の証としてや、功を建てた者たちへの、褒美として使わされている。その秘密は石の能力である、一定空間における、魔法の純粋化にあった。 

 本来、自然には、沢山の属性の魔力が満ちている。日がさすところには、「火属性」が、

水気の多い場所には、「水属性」が、光あるところに、「光属性」が、と言った感じに、

魔力は複数の属性で混ざって自然に存在するのである。

 しかし、「帝騎石」がそこにあると状況が変わるのだ。「帝騎石」は一定空間において、混ざっている魔力に反応し、一種類ずつに分けていく。つまり、局所的に一つの属性のみが強い空間が出来るのだ。そして「帝騎石」はその空間の魔力を吸収し、大きくなっていく。

 よって、「帝騎石」の周囲には魔力的に空白の空間が生まれるのだ。

 むろん、それも万能ではなく、分解・吸収のプロセスに一定の時を必要とするので、戦闘には向かない。いや、むしろ携帯するだけで魔力がなくなる=足手まといが完成する。

 よって、この石の用途は、選定の儀に限られているのだ。

 選定の儀を行う上で、測定に誤りがないようにするため、魔力の属性が無い空間を作るのは理想的である。それをこの石は自動的に作る。また、分解には時が必要だが、

一度使ったアダムの葉を再度使用できるようにするのだ。 よって、その希少価値とも相まって、「帝騎石」がある、栄光の間がある家はそろって素晴らしい騎士や魔法姫を輩出しているのだ。


 (うわ、すごい空気だな~。ぼくは初めてこの間に入るからかもしれないけど、あまり長くは

 居たくないところだな・・・)


 ラルクスも入った瞬間に顔をしかめた。・・・遠めから見ると、その顔は少女そのものだったが。

 ラルクスは少したじろいだものの、父の待つ奥へとすすんだ。

 

 (流石にこの子でも緊張はするか・・・)


 ディランは、こわばった息子の顔を見て内心そう考える。自分が選定の儀を受けたときも、同じようにこわ張っていたであろうからである。

 ・・・実際は、こわ張るですむ程ディランは落ち着いていなかったが、そのことは奇麗に忘れていた。

だれしも嫌な記憶は、忘れたいものなのだから・・・

 

 「お父様、参りました。」 


 落ち着いた声でラルクスは言った。朝の訓練の時とは違い、白を基調とした儀礼服をきてそう言う彼は、とてもかっこよく見え、ディランによりいっそうの期待感を持たせた。


 (流石だ、もうこの緊張から抜け出すとは・・・やはりこの子は、天才だ。絶対に世界一の騎士に

 私がしてみせる。)


 ディランからラルクスを見ると、確かに素晴らしく見えた。

 しかし、実際の彼の心境は、

 (もう、開き直っちゃえ(笑))

というものだたった。なんともかみ合わない親子である。


 「それではラルクス、始めるぞ。」


 「はい、お父様。」


ディランはラルクスに声をかけ、「アダムの葉」を渡す。

 小さく、薄いながらも、ラルクスにはずっしりと重く感じられた。


 「いいか、その「アダムの葉」に、魔力をしっかりと流しこむのだ。

  なに、心配することはない。いつものようにやればいいだけだ。」


 「はい。」 


 そういってラルクスは葉に魔力を流し始める。

 ラルクスは、武芸の天才であるとともに、魔力のあつかいにも、特別長けていた。

 長女のリア、母のウェルティスも、魔力のあつかいに長けており、相当な練度である。

 しかし、ラルクスもセンスは2人に匹敵するほどであった。 

 

 自分の身から、葉へと流れ出す魔力。その流れに、意識をただただ向ける。イメージしたのは、川。雄大な川が流れこむイメージだ。そして、川は、流れていく内に段々と大地へ浸透していき、大地をうるおす。ラルクスがただその作業に精を出していく内に、葉に変化が現れはじめた。


 (やった。黒くなってきている・・・僕はこれで騎士になれるんだ。お父様と、同じような・・・)


 しかし、ディランはただただ驚いていた。


 (早い。色が変わるまでが、早すぎる。いくらウェルティスの子と言っても・・・やはり、

 この子は天才だ。)


 ディランは改めて自分の子を誇りに思った。


 (あと、少しで真っ黒に染まる・・・あと、少しで僕は騎士になるためのスタートに立てるんだ。)


 ラルクスは心の中で喜ぶ。しかし、その時変化が現れはじめた。自分の体に。


 (あっ、熱い。からだが・・・燃えるみたいだ。・・・特に・・・その・・・あの辺りが・・・

 どうしよう、後少しなのに、魔力を流すのをとめるわけには・・・)


 ラルクスは、歯を食いしばって体の暑さに耐える。だが、溶けるようなその熱さに、だんだんと

余ゆうが無くなってきた。


 「どうした?体がいたいのか?」


 ディランも歯を食いしばり、汗を流しながら魔力を流す息子の変化に気づいた。しかし、神聖な儀式の途中。やめるか?とは、口がさけてもいえないのである。ましてや期待をかけている分尚更・・・


 「い・・・いいえ。やりきれますぅ。」


 「あ、・・・ああ。」


 ディランはここで更に何かがおかしいと気づく。今のラルクスの声は、少し高かったように聞こえたのだ。

そのうえ、ラルクスの背たけが少し縮んだように思えた。


 (気のせいか。・・・へ?)


 そう思った矢先、今度は葉に変化が現れはじめた。

 黒くなっていた部分が、段々と色を失い、透明へとなってきている。ディランにとっても、初めてのことであり、あまりのことにこえがでない。なぜなら、普段金色の「アダムの葉」が透明になるなど、ありえないことだったからだ。それは、この世界において、初のできごとである。しかし、この時最も変化をしていたのは、ラルクスの心の中だった。


 (っっっっっっっっっっっっあああああああああああああああああああああ。

 この記憶は・・・だれのだよ?さくやってだれだよ?なんでこんなにこの人の記憶はああああ)


 頭の中をかけめぐる記憶の奔流。それはまだ小さな少年にはたえがたいこと。ましてや、人から人として扱われていない記憶など耐えられるはずもなかった。

 そして、唐突に、少年いや、少女はすべてを理解した。


 (わたしは、ラルクス=フィア=アートレッドじゃない・・・千崎 咲夜だ。

 なんで、私こんな所にいるの?・・・そっか、お月様が私の願いを聞いてくれたんだっけ?

 それでこんなところに・・・)


 咲夜は目の前の男性を見上げる。ディランお父さん。心の中で、彼とならしっかりとした親子になれる。

 そんな不思議な確信が心の中にあった。


 (だったら、すぐに選定の儀なんてクリアしなくちゃ。ってえ・・・?なんで透明になってるの?

 は、早く黒にしないと・・・)


 そう思い、魔力の密度を上げる咲夜。しかし、それは透明に染め上げることを早めただけであった。


 (だ、ダメ・・・とうめいになんて・・・ならないで。お願い)


 しかし、そのとき葉が透明に染まりきり、選定の儀の終了となった。

 ディランと咲夜ラルクスの間に流れる沈黙。それは、向こうでの最期の日の父に打たれたときのことを咲夜に思い出させる。咲夜は不安で心が押しつぶされそうになった。


 「・・・ついてきなさい。」


 ようやく言葉を口にしたディランの声を聞き、咲夜は震え上がった。





 2人はその後、ディランの書斎に行った。

 一生とも思える沈黙の後、ディランは咲夜に告げる。


「本当はこんな事は言いたくなかったよ・・・ラルクスこの家から出て行きなさい。」


 ディランが言ったのは、たったそれだけだった。




  **


 夕方、街に出ていたフィリアたちは帰ってきた。


 「ただいま~。 お父様、ねぇ、ラルクスはしっかりと選定の儀をぬけられた~?

 私のためにも頑張るって行ってたから、多分だいじょうぶだろうけど~。」


 となりから、激しい殺気が立ち上る。


 「・・・フィリアには後でしっかりとお話聞かなきゃな~。」


 「ひっ、おおおお、おねえちゃん???」


 このブラコン姉妹は基本的に息があう。しかし、ブラコンという性質まで似たのは、互いにとって良くないことであった。よって、停戦協定に近いものが結ばれていたのだが、今のフィリアの発言は、10歳の少女の我慢を容易く越えたようだった。そうなると、年齢と、持ち前の性格でフィリアに勝ち目はない。そのうえ、フィリアがしていることをすべて知っているリアには、勝てないどころか、勝負にもならなかった。

 だが、2人は父の様子がいつもとちがうことに気づく。とても苦しいと言うような、何ともいえない顔。その顔を見たら、いつまでも普段のように争ってなどいられなかった。不安になった2人は、母の方を向く。

 しかし、そこにはいままで見たこともないほど怒った・・・いや殺気だった顔の母が居た。その目からは、涙が今にもあふれそうになっており、2人はただ黙ることしかできない。


 「あいさつもさせてくれなかったのですね。」


 ぞっとするほど冷たい声が響く。


 「ああ。悲しむとおもった。」


 「あなたは・・・なぜ、すべて自分一人で決めて・・・」


 「すまない。」


 パンッ


 それは、母が父に平手打ちをした音だった。父のほほからは、一筋の血が流れる。

 流石に自分たちだけ知らないのは嫌だと、フィリアはついに父に尋ねる。


 「あの・・・お父様?何があったのですか?私たちにも話してください。」


 ディランはそこで観念したように語りだした。


 「まず、2人には言っておこう。・・・ラルクスは私の子供ではない。あの子は、私がこの領の中の森 で、

 拾った拾い子だ。だが、私たちはどうしても男の子が欲しかった。この家を継がせるためのね。

 だから、私たちはあの子も愛情を持って育ててきた。そんな中で、ラルクスはしっかりと成長し、

 私はあの子に期待を抱いた。・・・だけどやはり彼は捨て子元来魔法が使えないんだろう・・・

 あのこは、選定の儀に失敗したんだ。」


 「え?え?ど・・・どういうこと」


 ぼう然とする2人。何もいえない。いや、頭が何かを言うことを、理解してしまうことをやめていた。

 だが、そんな彼女たちにさらに追いうちがかけられる。


 「だから、彼を捨てたんだ。家から追い出した。」


 「「え?」」


 重なる声。どちらも、もう何も考えられない。ショックが大きすぎたのだ。


 「いっ、やあ~~」

 「・・・もう・・・やだ・・・やだよっ、もうあえないのっ?」


 そして声をそろえて叫ぶ

 「「父さんのバカ。」」




 1人部屋に残ったディランはつぶやく、


 「オレだって・・・ホントは嫌なんだよ・・・」



  その夜。アートレッド家は文字通り分裂した。

  そしてその後、アートレッド家は大きく変わっていく。

  長女は家出をし、大陸へわたった。

  父は騎士としてさらに名をはせていき、国の将となった。

  母は居なくなった子を思い、教会で祈る日々を送るようになった。

  そして次女は、数年後シリウス魔法学院へと入学を果たした。


 そして、ついにこの日止まっていた世界の歯車が動き出したのである。



END /2話 REMEMBER and BRAKE OUT


う~んと、やっぱりむりやり感が強かったかな?とおもいます。

次の話で、この小説のプロローグともいえるとこが終わりです。

あと、予想だと次の話はこの話より暗めです。・・・そう言うのきらいな方はごめんなさいです。

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