TASP008
さて、またもや更新が遅れました。すいません。
前書きはとっとと終わらせますが、あとがきのほうに、ちょいとばかし報告があります。
サウスグランド
ここに、二人…+αの冒険者がいた。
「暑い…熱い…あつい…」
「………………………………」
「………………………………」
ローブをかぶった二人のプレイヤーが歩いている、そこは、一面を黒い砂で埋め尽くした、サウスグランド屈指の砂漠。カオス・デザート。
「おい!いくらなんでもここ暑すぎだろ!」
「もー!じゃーかーしいわ!アホ!
暑い暑いゆうたらなおさらあつなるやろが!」
「んなこと言ったって暑いもんは暑いいんだよ!」
「だーもううるっせーよ!二人まとめて切り殺すぞドルァ!」
その後取っ組み合って10分後……
「……あつい……」
「もう……黙れ……」
「ころ…すぞ……てめ……」
ローブの下に、深緑の衣身を纏い、背中に槍を携えているプレイヤー。
ローブの下に、漆黒の戦闘服を着込み、四角い箱の中に得物を携えている。
「何処まで歩くんだよーゲームのクセに暑すぎだろー製作者自重しろ」
「お前はそのゲームのキャラクターだがな」
そして、もう一人の同行者は、プレイヤー、人間ですらない、人工頭脳。
CPUにより動くマスコットキャラのような存在、愛称サム((愛称じゃねぇ!!!))(心の声)
文字通り侍のような風貌に、背中と腰に携えたそれぞれ長さの違う刀。
同行する二人の腰ほどまでの背丈しかなく、頭が大きく、二頭半身程度しかない。
「おーい、サム、マップ開いてくれー」
「またかー?」
不満そうな声の後、軽やかなシステム音を立て、約600メートル四方分のマップが出現した。
「おお!マップの端っこにオアシスの反応があるぞ!」
「「何!!!?」」
言うが早いか、先ほどまでのだらけきった態度が嘘のように走り出した
「「「ウオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!」」」
――――――――――――――そのころ、北の大陸――――――――――――――
首都、タートルスネーク。
広場には、二人の冒険者がいて、一人は倒れていた。
「ほーら、いつまで倒れてんの?もう十分休憩したでしょ」
「ま、まさか、ホントに一日で首都までいくハメになるとは思わなかった………」
「なに?あの時冗談言ってるとでも思ってたの?」
頭の中で「当たり前だボケ」と連呼したが、言ったところで殺されるだけだし、まったくメリットも無いのでやめた。
てゆーか、何でお前は全然疲れてねーんだよ。エンカウントから逃げるためにここまでほぼ全部の道のりを突っ走ってきたのになんで?
俺か?俺がおかしいのか?俺が貧弱なのがダメなのか?
「………まぁいいわ、じゃあ、とりあえず解散しましょう」
「集合はどうする?」
アスカは少しあたりを見回した後、街の中央に見える大きな亀の石像を示した。
「あそこで、夜になったら集合にしましょ」
「りょーかいした」
解散したはいいが、どこにいくアテもないので、どうしようかなーと考えて、先日剣で痛い目にあったことを思い出し、武器屋に向かう事にした。
この時、ここが広大な街であるということを忘れて、二時間ほど街中をさまよい歩く事になったのは後の話である。
―――――――――――――――――――――――――――――
ギンジと解散した後、私は事前に調べた情報から、この街の情報の集まる施設、『インフォメーション・TS』へと向かった。
ここには、運営側(今となっては妙な奴からの情報であろうが)や、プレイヤーの攻略掲示板などを集めた端末があるのだ。
流石に、こういう場所ともなると、多くのプレイヤーが集まっている。が、端末に空きはまだあったので、そこに陣取り、目的を果たすため、パネルに手を伸ばす。
(まずは………)
そして、あの人の消息をつかむため、パソコンの検索エンジンに酷似した端末にワードを打ち込む作業は、夜まで続いた。
――――――――――――砂漠――――――――――――――――
「おい………オアシスどした?………」
「ど…どうやら……マップ蜃気楼………らしい」
「マップ上に………存在しない………土地がでるっていう………」
言った瞬間、槍使いが激昂する。
「あ゛あ゛!?あんだそりゃぁ!?俺達は存在しないオアシスを求めて今日一日歩き回ったってことかよ!」
「正確には20時間と……48分だがな」
「てゆーか、もう夜だから暑いより寒い!」
しかし、三人で揉めていると、少し離れたところで、エンカウントが発生した。
どんなモンスターが出たかって?それは覚えてない。だって…………
「だいたいテメェが蜃気楼かどうかもわからねーのが悪いんだ!」
「責任丸投げって子供かテメェは!そもそもテメェも見てたろうが!」
「グオオオオオォォォォォォォォォォ!!!」
モンスター(二度言うが本当に覚えてない)が走り出した(と、思う)
「もーじゃーかーしいわクソボケ共が!水飲めなくて一番腹立っとんのはワイやぞ!」
「るっせーんだよ!じゃあ自分の血でも飲んでろこのエセ関西人が!」
「グオオオオオオォオォォォォォォォォォ!!!!!」(無視された事により怒り8割増し)
「「「るっせーんだよこのイヌ科が!!!!!!!!!!!!!!」」」
「キャウーン………」
モンスターを一撃?で沈めたにもかかわらず、目にも入らないとでも言うかのごとく、話し合いは続いた。
「大体お前がだな………」
三人同時にそれぞれの武器で思いっきりぶっ叩いた。(今思い出したけど犬型のモンスターだった)
その後も、彼等の無益で愚かな争いは、夜が明けるまで続いた…………
-――――――――――ウエスト・グランド、首都はずれの洞窟―――――――――――
「ふぇっくち!!」
洞窟内に、可愛らしいくしゃみが響き、それに十数人のプレイヤーが反応した。
「「「「「「「だいじょうぶっすか!?姐さん!!?」」」」」」」」
「もーいちいちうるさい!そんなにリアクションとらなくてもいいって言ってるでしょ!」
「いやー、だって姐さんですし」
「何かあったら大変ですしー」
「あ、寒いですか?俺のコート貸しましょうか?」
「べつにいいわよ、特に寒いわけでもないし」
そもそも、ここは洞窟で、少し外よりは涼しいとはいえ、ここはウエスト・グランドの中でも、最も南に位置する安全地帯なのだ。
(そろそろ動くべきかしら………?流石に人任せは嫌だし…………)
「この空気にも飽きたし」
「え?何か言いましたか?姐さん」
「なんでもない」
正直言って、一言一句に反応されるのはウザイ。こんな生活が、早4日も経っている。
事の発端は、4日前、金が不足し、狩りの時間も無かったので、安全地帯の洞窟で過ごそうと思ったら、この集団がおり、ワイワイガヤガヤ五月蝿かったので、全員ぶっ飛ばしたところ、ある理由から、『姐さん』と慕うようになったのだ。
「さて…そろそろ街に出ようかしらね……」
「「「「「「「「「何!!!?」」」」」」」」」」
「姐さーん!出て行かないでくださいよー!」
「姐さんがいなくなったら、俺達は他勢力に潰されちまいますよー!」
そう、これが私を慕う最大で唯一の理由だ。
こいつらは他に似たような集団が6つほどおり、それらと勢力争いしているらしい。
そこで、私の悪魔的蛮力(大変不本意なイメージであるが)を盾に、他の勢力を遠ざけているわけである。
「いや、でも私、そろそろ人探し始めたいし」
「そうですか………」
「いや、いつまでも姐さんに守ってもらってちゃ、男が廃るってもんです!」
「どうぞ、姐さんは自分の目的を果たしてください!」
「あら そ、じゃ、がんばってねー」
正直生返事で、全くその気も無い言葉を残して、洞窟を後にした。
出てすぐに、「敵襲ー!」だの、「六勢力全てが攻めてきたああぁぁぁぁ!!?」などと聞こえてきたが、気にしない、気にしない。
―――――――――――――再びノース・グランド。首都タートル・スネーク―――――――――――――――――
「……ううう……ゲームのクセにさびぃな………」
日が沈んでから、この街で最も目立つ亀の石像の前に待ち続けて、もう一時間は経ったと思う。
さっきから、知り合いと思しきプレイヤーが集まっては、暖かそうな酒場に入っていくのを見ると……
「なんで俺がこんなことをせにゃならんのだ…………」
と、思う。切実に。
もう凍り付いて、築地の冷凍マグロ達と一緒に競売にかけられてもおかしくない勢いで寒い。
対氷属性用の装備をしているのにもかかわらず、その隙間から冷気が忍び込んでくる。
「あああああああああ!!!!!!もう寒さ通り越して痛えええええぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」と、叫びたい衝動に駆られるが、先に言った通り、ここはこの街で最も目立つ石像の目の前であり、こんなところで叫べば、百歩譲って孤独でイカれた奴と思われるか、下手すると、精神異常者と思われてもおかしくないので自粛する。(まぁ、どっちもあんま変わらんケド)
「うううううぅぅぅぅぅぅぅ……………あれ?あれアスカじゃね?」
広場のかなり端っこのほうに、もう見慣れた特徴的なロングヘアーが見えた。
「おーーい!なにしてんだーー!?」
声をかけると、一度探す仕草を見せ、こちらに気づくと、手を上げて答えた。
「こんな端っこにいたのかよー凍え死ぬとこだったぞオイ」
冗談を言ったのだが、なにやら果てしなくブルーで、気まずい沈黙がまちかまえていた。
(えーと……俺は果たして地雷でも踏んでしまったのでございましょうか?)
あまり心当たりも無いが、この反応はそうとしか思えない。確実にヤバイ、と俺の本能が告げるが、幼馴染二人としか話をあまりしなかったせいか、打開策も思い浮かばない。
「………………ねぇ」
「は、はい?」
「………………おなかすいた」
「…………俺は払わんぞ」
「おなかすいた」
「…………払いたくても金がn」
「おなかすいた」
「わかった!お前昼食ってないだろ!?だかr」
「おなかすいた」
結果、押し切り負けとなってしまい、すでにある出費を抱えている俺なのに、今後数日を安いゲロマズ料理で過ごすか、もう一度ここら一帯の悪魔的ステータスを誇るモンスター相手にフィールドを駆け回るかという究極の選択を考える暇もなく、最寄のレストランへと直行させられた俺であった。
(謎の説明口調)
「あああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー
大出費だ畜生めーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「もぐもぐもぐもぐ」
「ただでさえカネが無えってのにーーーーーーーーーーーー」
「むぐむぐむぐむぐ」
「テメェに言ってんだ!聞いてんのかこの暴食娘!」
「むぐぐ?」
「むぐぐ?」ぢゃねーよ!こちとらカネがねぇっつったろうが!」
「………………もぐもぐもぐもぐ」
そんなことは意に介さぬ風に、再び食事に戻りだした。
「DA☆KA☆RA!くうなっつってんだろーがあああぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「もぐもぐもぐもぐ」
「すいませーん、わたしが悪うごぜぇやしたよぅーどーかゆるしてええぇぇええぇぇ…………」
後半涙声で訴えるが、全く聞いていない様子で、もはや5ケタに達するであろう程の値段のメシを淡々と平らげて行き、結局、その暴食が止まったのは、俺の財布が断末魔を上げる暇もなく絶命した後だった。
「はー、満足満足」
「あうううううぅぅぅぅぅぅぅぅ…………………」
「………あれ?武器替えたの?」
「そーだよ!だからカネがねーっつてんだろーがもっと早く気づけッ!!!!」
「………それはどうも、ご馳走様です」
「サラッと受け流して俺が払う風に書き換えてるんじゃぁねえええぇぇぇぇぇ!!!」
「でもそれって、見た目から察するに私が取ってあげたコウモリの爪から強化した武器じゃないの?」
(ギク)
そう、これはアスカの言うとおり、あの洞窟で出会ったコウモリの爪を主素材として強化した武器、『テール・クロウ』で、あーる。
柄から剣の半分ほどまでを鉱石と、コウモリの皮(これは低級品で代用した)で作られ、真ん中から先端までは、爪の沿った内側の部分が刃になっており、その大きさからも、それがアスカからもらった物である事は明白である。
「で、でも、これはアスカが俺が助けたお礼として俺にくれたものじゃなかったかな?」
「そうね、じゃあ一割位は払ってあげるわ」
「たった一割!?」
「不満があるなら零割払ってあげるわ」
「難しい漢字使ってごまかしてるつもりだろーが、要は払わねーっつてんのか?」
「……しょうがないわね、じゃあ、マイナス一割」
「私が悪ぅごぜぇやしたようぅぅぅ、ゆるしてええええぇぇぇぇぇ」
「…………………………………」
ギンジの泣き声で、首都、トータルスネークの二人の夜は更けていく………
to be continued!
さて、ギンジ君が貧乏になりました(ザマー味噌漬けカレー定食ー♪)
で!前書きで示した報告ですが、もともと更新が遅かったのですが、諸事情により、一年ほど活動を停止しなければならない可能性が出てきました。
故に、ご愛読くださっている読者様には誠に勝手ですが、更新が一年ほど停止する恐れがありますので、傲慢な願いですが、一年後、思い出したら、もう一度、「アンリミテッド・イメージングワールド 仮想冒険記」を、覗いて見て下さい。