表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンリミテッド・イメージング・ワールド 仮想冒険記  作者: くりぃむパン
チュートリアル
4/8

TASP004



 ゲームに入ったけどまだ説明とかそんなカンジ。



 現在俺達がいるのは旅立ちの町の酒場である。ここはこの町で最も大きい建物であり、最も人の出入りが多い場所でもある。

 その机の一角に俺達は陣取り、基本的な説明を聞いていた。


「―――――と、まぁ基本的なことはこんなとこだ。あとは、俺達が戦う上での連携、及び役割を決めよう。


「えーまだやんの?」


「安心しろ、そんなに複雑なことじゃない。

 俺たち三人の種族に合わせて役割を決めるだけだからな」


「へー」


「簡単そうなのはいいことだ」


「ま、シルフ2人とヒューマン1人じゃ、立てられる作戦もたかが知れるが」


「シルフ?」


「2人?」


 ふとシーナのほうを見る。


「ギンジ、シルフなの?」


「いいや、ヒューマンだが、シーナは?」


「私もヒューマン……」


「はぁ!?ヒューマンで金髪!?」


 シンがそう絶叫すると同時に、酒場全体の目が、こちらに向いたのが分かった。

 ナゼか、その眼は熱っぽい物、そして、妬みのような感情が混ざっているような気がした。


「あ、マズイ………」


「何がだ?」


「ちょっと二人とも来い!特にシーナッ!」


 そういった瞬間、俺とシーナの手をつかみ、酒場から逃げ出した。


 町を出そうな勢いで突っ走り、町の入口であろう門の隣の、街路樹の中に紛れ込んだ。


「ふぅ、まさかヒューマンで金髪になるとは、運がいいのか悪いのか」


「おい、シン、さっきからなんだ」


「ヒューマンって金髪が少ないの?」


 シーナが問うと、シンは首をすくめ、首を横に振った。


「少ないなんてもんじゃない、俺でも知っている中でも7,8人位しかいない」


「「7,8人!!?」」


 二人そろって絶叫すると、シンが口元に人差し指を立てるのを見て、慌てて押し黙る。


「こんなゲームじゃ、やってる数1万は下らんだろう」


「ああ、そうアカ数は1万6千と言われている」


「「1万6千………!」」


「だが、金髪はシルフならそれなりにいる。まぁ珍しい事に変わりは無いが」


「へぇ……因みにそれはどんくらい?」


「約千人って所だな」


「いや、少ねぇよ」


「そうか?」


 不服そうに首をかしげると、立ち上がった。


「さて、そろそろほとぼりも冷めたころだろう。フィールドに行くぞ」


「わかった」


「はいなー」


 分かりづらい人がいたかもしんないけど、上からシン、シーナ、ギンジですよ。




――――若葉草原――――



「ほー、仮想の剣とはいえ、結構重いもんなんだな」


「ああ、全ては電磁波がお前の脳に送り込んでるだけの情報だけだがな」


 二人ともひとしきり自分の武器を見つめたあと、草原の向こうを見つめた。


「シーナのバーサク虐殺はどういたしましょうか?」


「ほっとけ、触らぬ邪神になんとやらだ」


「誰が邪神だって!!?」


「「何も言っておりません」」


 シーナが暴力装置としてのリミッターを外し、無差別にモンスターを殺戮しているため、黄緑の槍使いと、銀髪の西洋剣使いは、何もすることが無いのだ。


 先ほど、でかい巨人のようなモンスターが出たときに、シンが出ようとしたが、圧倒的蛮力で、シーナが即座に蹂躙してしまった。


「しかし、まずいな……」


「ん?何が?」


 俺達は傍観し、シーナが敵を消し飛ばす、コレに何の問題があろうか?


「いや、シーナが爆走するせいで、俺らがマトモにレベル上げできん」


「あ………」


 思い当たり、ケータイ端末で地図を操作するときに、拡大するのと同じ要領でメニューを開く。

 そして、5つのタブの中から、上から4番目のプレイヤー関連のメニューを引っ張り出し、パーティメンバー全員のステータスが表記されたウィンドウを見て、俺は愕然とした。


「レ、レベル12!?俺はレベル3だぞ!?」


「このゲームは、プレイヤーが与えたダメージ値によって、経験地の割り振りが増減するからな、まぁ不思議じゃないか」


「でも理不尽な気が……」


 ステータスを見てみると、上から


 ギンジ Lv3


 シン Lv20


 シーナLv13


 俺達が話してる間に、また一つシーナはレベルを上げたらしい。


「じゃ、そろっとシーナを止めますか、そろそろモンスターのポップスピードが追いつかなくなる」


 なんかよく分からん単語が出たが、気にしない気にしない。


「だが、どうやってあの鬼神を止める気だ?」


 そう聞くと、心はニッと笑って振り返った。


「なーに、俺も伊達にこのゲームプレイしてるわけじゃないなからね」


 そう言うと、懐から青光りする鉄球を取り出すと、それを振りかぶり、狙いをつけると、思いっきりシーナに投げつけた。

 すると、鉄球があたった瞬間、シーナの体が、先ほどの鉄球と同じように、青く光り、突如消えた。


「アレはなんだ?」


「緊急移動用のループメタルだ。旅立ちの町の路地裏に設定しておいたから、しばらくは出てこれんだろ」


 すると、またもやモンスターが寄ってきた。


「さてと、ある程度戦闘も教えよう。まずは……」


 シンは背中に背負った槍を引き抜くと、水平に構えた。

 

「アーツについて教えよう、これはどちらかというと、見て、そしてやってみるほうが早い」


 すると、槍が黄色の光を帯び始めた、光はどんどん力強くなり、空気が軽く振動しだした。


「これがアーツだ、『ストレートスパーク!』」


 その瞬間、シンが目にも留まらぬスピードで突進し、とまったところは走ってきたモンスターの背後だった。

 モンスターの動きが止まり、直後、横に長い長方形の、緑に輝くデータ片となって、空に消えていった。


「ほーお、なかなかにすごいもんだな」


 本気でほめると、得意になったようで続ける。


「アーツはスキルを反復仕様で上達させることで、どんどん増えていく、当然強くもなってく」


「アーツって言うのはこれか?」


 メニューのうち、真ん中のスキル関連のウィンドウを出し、それをシンにも見えるように操作する。


「ああ、これこれ、って……はぁぁぁぁぁ!!!!!!?」


 そのウィンドウを見て、シンが絶叫する。


「な、何かあったのか?」


「ありえねぇ…何でスキルポイントが500もあんだよ、わけわかんねぇ………」


 その放心する様子は、驚きを完全に通り越した、と言った感じだった。


「スキルポイントって、ここの数字の事か?500って………」



「「ありえなくね?」」


 いまだ『うそだぁぁぁぁ……ありえねぇぇぇぇぇぇ……』というシンから、視線をずらすと、地平線の奥に、走ってくる人影が見えた瞬間、それが何かを察し、近くの木の裏に隠れる。

 そこから顔だけを少しだけ出して、覗いたそこには      ――――――――地獄があった。

 ※あまりに残酷なため、音声のみお送りします


「喰らえ『対牙蹴(ついがしゅう)!』」


「グオアッ!?」


「あんな路地裏に放り込むなーッ!」


「いや、あれじゃ他の人にもめいワックッ!!?」


「おかげでナンパされたろがーッ!!」


「ほほう、ずいぶんな物好きが痛い!!!?」


「おかげで3人も殴り倒しちゃったじゃないッ!!」


「いや、それは両方が悪痛いって!!!」


 しばらくすると静かになり、ゆーっくりと覗いたところ、シンは力尽き、HPバーはレッドゾーンでギリギリで止まっている。


「へー、パーティ組んでてもHPは減るんだ」


「あ、みーつけた」(キラーン)


(八ッッッッッ!!!?)


 ※地獄絵図(音声すら出せません)



――――5分後――――


「ハイ、もうこんなことしないと誓いますか?」


「「誓います」」


 見事シーナに捕捉され、脱出を試みたが、約二秒で捕まり、それから三秒でボコボコにされ、計五秒で秒殺された。


「あ」


「おい、シーナ」


「何?」


「「後ろ」」


 シーナが振り返ったそこには、巨大な熊の形のモンスターがいた。


「きゃッ!なにこれ!?」


「タイラントベアーだ!つかなんでこんな低レベルフィールドに!?」


「対応レベルは!?」


 一瞬口ごもった後、とんでもない事を口にした。


「……約25…」


「にッ!!?」


「25!!!?」


 ありえない、ここの最強モンスターは、少し前にシーナがミンチにした巨人型モンスターのはず。あれでも対応レベルは10弱程度なのだ。


「………しゃーねぇな」


「な、何か策でも?」


「まさか」


「じゃあ逃げるの?」


 なぜか人事のように聞くシーナ。が


「いや、それも無理だ、奴はあんなナリしてるが、衝撃波のようなブレスを使う。喰らえばシーナは一発でレッドゾーン行き、ギンジはあの世行きだ」


「そらこえぇ」


「だが、足掻くには足掻くさ」


「やっぱ策があるの?」


「鍵はギンジだ、コイツの馬鹿でかいスキル値をすべて剣スキルに割り振って、上級位剣技でこいつを足止め、できれば倒す」


「でも、ブレスをどうする?」


「あれの射程は半径5メートル弱だ、しかもそのあとにはかなり隙ができる」


「じゃあ、適当な距離で挑発して、ブレスを使った後に切ればいいんだな」


「シーナと俺で時間を稼ぐから、その間にスキルを割り振れ」


 作戦を決め終わった瞬間、熊が咆哮を轟かせ、突進してきた。


「いくぞッ!」


 同時にシンとシーナが迎え撃ち、俺はメニューを表示する。

 剣のスキルのウィンドウを開き、500と書かれた数字を、全てそこに割り振る。

 いくつものアーツを習得した表示が現れ、それらを一瞥し、最も強そうな物を選び、その名前を覚える。その瞬間。


「うおあぁ!!」


「きゃあッ!!」


 シンとシーナが奴のブレスで吹き飛ばされる。


「シン!シーナッ!」


「ギンジ、今だ!今のうちにお前の剣を叩き込め!!」


 熊に向き直り、剣を水平に構える。熊の術後の硬直状態が続くのは、そう長くないだろう、だが、先ほどの技のフレーズを何度も頭で繰り返し、俺は剣を構えて、じっと待った。


「おい、ギンジ!何やってる!」


「ちょっと黙ってろ」


 短いやり取りを終えた直後、熊が硬直状態から脱し、咆哮をあげ、猛然と突進してきた。

 だが、それこそ俺の望むところ。


「ソードアーツ……」


 そう呟くと同時に、熊が全体重を持って、俺にのしかかった。


「グオオォォァァ!!!」


『スターリア・レイ!!』


 瞬間、体が軽くなったような感覚を味わった後、視界が揺れた。

 正しく言うと、視界がぶれるほどのスピードで俺が熊の右斜め後ろに移動したためだ。


 そして、熊が苦しげに方向をあげるのを聞いた直後、また視界が揺れ、今度は左斜め前に移動する。再び咆哮、


 移動、


 咆哮、


 移動、


 咆哮、


 移動。


 そして、咆哮がだんだんと弱くなってきた時に、熊がもう一度、全身を強張らせ、衝撃波の体勢をとるが、俺を動かすシステムは、意に介する様子も無く飛び上がり、剣を逆手に構えた。


「ちょっ、ちょっと待て、俺はまだ死にたくないぞ!!?」


 だが、熊が今にも致死性の咆哮を上げようとしているのに、無慈悲なシステムは一向にとまる気配が無い。


「おーい、シン!これ止めてくれー!」

「ムリ」


 即答でした、しくしく。

 俺の行動もむなしく、俺の剣が熊の頭部を貫通すると同時に、熊の口から爆竹の十数倍と思しき爆音がとどろき、俺の意識は紙をちぎるかのように、簡単に切断された。 



――――旅立ちの町 酒場――――



「わかったか?アーツを発動するときはその内容をよくよく確かめないと、反撃の対策も立てられんのだからな」


「もっと早く言え」


 旅立ちの酒場の近くの、白い建物の中の棺桶のような箱から復活した俺は、アーツを使う際の注意点をいまさらレクチャーされていた。


「まぁそれはそれとして、ギンジ、お前レベルは上がってるか?」


「え?何で?」


「実はあの時、お前が吹っ飛ばされると同時に熊が死んでな、お前が熊が死ぬより長く生きてたら経験値はもらえたはずだし、その逆もまた叱り、ってやつだ」


 言われてウィンドウを開くと、レベルは3から8になっていた。


「おお、一気に上がったな」


「トーゼンだ、そもそも対応レベルが20以上離れた奴をたった一つのアーツで圧倒するなんざとんでもねぇ話だがなぁ」


「て、いうか、ゲームの中なのに、結構痛いものね」


 あ、そういや衝撃波食らった時も全身バラバラになるかと思ったしなぁ……


「まぁ、Iva(イヴァ)のパルスは結構高密度だからなぁ」


 またチンプンカンプンな単語が出てきたがひたすら無視。


「あ、そういや、まだ俺らチーム組んでなかったな」


「チームって…どう組むんだ?」


「簡単だ、自分のプロフィールカードを渡して、そこからチーム申請をすればいい」


「プロフィールカードはどう出すの?」


 いいながらメニューを展開する。


「まず、キャラクター関連からステータスウィンドウを開いて、カードって書いてあるタブをあけて、カード転写をやれば、プロカが出てくる」


 言い終わると同時に、シンはカードをこちらに渡してきた。

 言われた通りのボタンを押し、カードを2枚転写し、シンとシーナに渡す。



 シン シルフ


Lv24 槍術士


 Male(男性)


 HP1198\1198

 AP761\761


 STR 76

 DEX 51

 VIT 49

 AGI 70

 INT 40

 MND 21



 シーナ ヒューマン


Lv 18


 Female(女性)


 HP872\872

 AP617\617


 STR 100

 DEX 38

 VIT 40

 AGI 42

 INT 37

 MND 41



「ほーう、…………」

「ふむふむ…………」


「「なんだこりゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!??」」


「え?何?」


 いやいや、数分前の俺と同じ反応しようと無駄だ、俺ですらヤバさが分かるぞ。


「「いや100とかありえねぇし!!!」」


 再び合唱、が、知った様子も無くすっとぼけるシーナ。


「ここはあれか、バグに関する万国ビックリショーか」


「おい、この人外と一緒にするな」


「…あんたらバラバラにされたいの?」



―――――???――――――



 先ほどから酒場の一角に、ずいぶんやかましい声が聞こえてきている。

 そのうちの一人、銀髪の特にうざったるい奴は、確かアレ(・・)を投与した者のはず。

 情報によればその全てを何の変哲も無い剣スキルに割り振ってしまったと聞く。


「まー、どんだけ規格外なんだか」


「いつまでも遊んでんなよ、テメー」


 小さい同行者もだいぶと五月蝿い。


「うるさい、チビはチビでおとなしくしてろ」


「まぁ、あの娘も全てSTRに極振りしちゃったようだし?」


「どっちもどっちだ」


 笑いを含めながら呟く。


「で、あと何日だっけ?」


「確かあと一週間だ」


「へぇ…どうなるかね」


「どうなるって?」


「彼等、いつまで生き残れるかな。

 半年位?」


「さぁ、どうだか、以外にもクリアしちゃうかもね」


「ククッ、それはないだろ」


「あくまで未然形だろうが」


「ククク、あくまで、ね」


 うすら悪い笑みを浮かべる同行者を冷たい眼で見据え、ウィンドウを開き、一番下のログアウトのタブを出す。


「おいおい、もう落ちるのか」


「ま、下見はすんだしね」


 そういって、ためらわずにOKボタンを押す。


「また来いよー」


 その瞬間、強い光に包まれた。

 この世界に変化が訪れるまで、あと一週間。データの中で、終焉が動き始めた……




 シーナのバーサクっぷりが出ましたね、ギンジはチートですが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ