TASP002
はい、どうも、残念ながら今回でもまだゲームには入りません。
あ、入るのは次回ですから皆さん逃げないでェーーー!!!
「んで、そろそろ話を聞かせてくれい」
東京都心にそびえ立つ大豪邸で、至福の食事を存分に堪能し、原始的欲求を満たした俺は、早速本日こいつの家に呼び出された理由を問うことにした。
「うん、理由はね、君らVRMMOって知ってる?」
「ごちそーさん」
「じゃあ帰ろっか」
まためんどくさそうな単語が出てきた瞬間帰宅を決意すると、信司がいきなり立ち上がり、引き止めた。
「おいおいおい!ナニ帰ろうとしてんだそして野沢ッ!なんで帰りの支度手伝ってんの!?」
後ろのほうを見やると、野沢さんがシャッターから俺のバイク(ありがたいことに食事中に給油してくれた)を出して、スタンバイしていた。どこかイタズラっ気に眼が光っているような気がした。
「お前から奇妙な英単語出るときは決まっていいことねーんだよ
ほら、なんだっけ?メタリングレーザとかいった奴のときは俺のケータイ見事ぶっ壊してくれたじゃねーか」
「メンタルサーチングレーザー!何新機械開発してくれてんの?メタリングって鉄をレーザーとして打ち出すってことか?怖ええな!つーかそれもう機械じゃなくて兵器だろがッ!!!」
猛烈な勢いでまくし立てた後、少し平静を取り戻した口調でもう一度口を開いた。
「あれは前に妙な精神影響型ウイルスが蔓延したときに、お前の精神に異常が無いか調べただけだろ。
それにケータイに至っては替えの機種の優先権をあげたろが、それと割引券も」
「ご高説は伺ったが、で何の実験台に使う気か教えてくれるかな」
「だからそんなんじゃない!なんでそんな疑うんだ……」
「「そりゃ日々の行いということで」」
「……息ぴったりかよ」
「まぁいいから教えろよ、もう三回言ったぞ」
「じゃあこっちも二度聞くが、VRMMOを知って……いや、興味あるか?」
眼を向けて野沢さんに聞くと意外な返答が帰ってきた。
「このごろ信司様がやっておられるVRMMOのRPGゲームです」
「VRMMO……RPG……」
信司からも出てきた単語を、口の中で反芻する。どこか不思議なフレーズだったが、英語は苦手……どころではなく、もはや全教科中で天敵という言葉が相応しい教科だった。
「……何の略称なんだろうな?」
「「さぁ?」」
「残念ながら、私も存じておりません」
ナゼか、俺の周りには英語が苦手な奴が多いのだ、幼馴染二人は純粋にバカ。
野沢さんは昔よく知っていたらしいのだが、昔運転手を務めていたときに、交通事故で記憶喪失で、一部の記憶を喪失してしまい、その後どの職にも就けないでいた所を、信司の父親、二ノ宮 政碁朗に雇われ、今に至っている……話が逸れたが、彼が英語を知らないのはそのためである。
「まーいっか、んで、それが何?」
「いや、このゲーム、やってみないか?」
「「さようなら」」
「……何で?何で何かにつけて帰ろうとしたがるの?」
「だってゲームだろ?つーことは当然金もかかるわけだろ?」
「ソフト代とか、ハード代とかバカになんないでしょう?」
「ふっふっふっふ、それは心配ないんだなーと」
「信司様のご友人方が、このゲームをハードごと売るとおっしゃったので、信司様が、それをひきとったのです」
「それが何個?」
「偶然二個」
ふざけんなよ、何かの因果演算が悪戯してるとしか思えん。
「そう嫌そうな顔をするな、やってみると結構面白いぞ」
「嘘はつくなよ」
俺がそう言うと、信司は肩をすくめ、片目を閉じて言った。
「この前にお前等に嘘ついて受けた痛みはまだ忘れんよ」
そう、ちょっと前にこいつが、サプライズで世界が滅ぶという大規模なハッタリをかまし、ネタバラシで高らかに笑ったとき、椎名が空中回し蹴りを食らわせ、病院送りにしたことは、まだ記憶に新しい。
「あれは規模と事例が特殊だったからなぁ」
「だからって顔面回し蹴りは無いだろう、マジに死ぬかと思ったぞ」
「もういい、昔話をするとそれこそキリが無い」
「どんなゲームなの?」
「よくあるRPGだ、いろんな洞窟や迷宮なんかのダンジョンを探索して、最終的には強大な力を持つ魔王を倒すという王道RPGだな。
基本的に今は魔王のとこにはいけないが、どんどんUDが進行して、マップ、敵キャラ、町、果てには武器まで増えていくタイプのゲームだ」
「そうは言ってもなぁ……」
「ゲーム自体やったことないし……」
「それなら俺がレクチャーするさ」
「「気に食わん」」
「なんなの?お前等として俺はなんなの?」
「「金ズル」」
完全に意気消沈し、崩れ落ちる信司、ナゼか野沢さんまでもがサムズアップをしている。
取り敢えず笑顔で返しておいた。
「なんと言いますか、息ぴったりですね」
「どうも」
「どーもどーも」
「……格闘技とか剣術も存在するゲームなんだがな……」
ボソッと呟いたその一言に椎名は誰よりも早く反応した。
「ぜひ教えてくれる?」
「ふっ、よろこんで」(キラーン)
(釣りやがった………!)
そう、格闘、剣技といった言葉で、この暴力装置は簡単に操作する事ができるのだ。
完全に復活した信司が、渾身のどや顔を見せ付けてくる。正直このときは殺意が湧いた。
ハラワタ煮えくり返るほどの怒り(しかし敗北感が大半を占める)を感じつつ、半眼で信司を睨みつけたが、すぐに諦めた。
あの暴力装置が手元にある以上、逆らっても返り討ちにあうだけだ。戦闘訓練は多少しているが、奴には全く勝てる気がしない。
中学のころ、路地裏で高校生4人に絡まれたときに、全員を返り討ちにした伝説は、容易に思い出す事ができる。信司一人なら負ける気はしないのだが。
「じゃあ、俺も教えてもらおうかぁ……」(殺)
「お、おう、どんとこい……」
眼で信司に重圧を与え続ける。
「では、早速行き先の位置情報を、銀二様のバイクにお送りします」
「銀二でいいって言ってるのになぁ……」
「半分私の趣味です、ご理解ください」
(((いい趣味してるわぁ………)))
総員、野沢さんに甚だ失礼な感想を抱きながら、ガレージへ向かった。
今回書いてて感じたことがあります……
椎名ちゃんコエエ(汗)