↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

[AI小説] ナード vs 筋肉大戦 in 日本

作者: へむあやと
掲載日:2026/10/10

夜の冷気と、ディスプレイの発熱。


東京・秋葉原の一角にある雑居ビルの地下室で、高坂(こうさか) 蓮(れん)はエナジードリンクの空き缶を乱雑に机の脇へ押しのけた。


画面に浮かび上がるのは、日本全土を網羅するリアルタイムの都市インフラデータ、防犯カメラネットワーク、そして自作の自動追尾AI「アラクネ」の制御UI。


「筋肉で世界が獲れると思ったら大間違いだ。脳みその重みが違うんだよ」


画面の向こう、スマートフォンのスピーカーから野太い笑い声が響く。


「理屈はいいからサノスみたいに腕を振ってみろよ、オタクくん。俺の『大胸筋』と『広背筋』が、お前のちっぽけなプログラムを噛み砕く音を聞かせてやる」


男の名は、陣内(じんない) 豪(ごう)。

元特殊部隊にして、国内最大の民間軍事・フィットネス組織『ヴァルハラ・ボディ』を率いる男だ。


二人の宣戦布告とともに、日本全土を舞台にした【何でもありの極限戦争】の火蓋が切って落とされた。


---


### 第一局:首都高速の追撃戦(東京〜神奈川)


陣内はまず、暴力の基本である「物理的な圧倒」を突きつけてきた。


真夜中の首都高速。ナード側の安全圏と思われる拠点を割り出した陣内の部隊は、防弾仕様にカスタムされた黒のメガSUV「ナイト・メア」を走らせる。


「おい蓮、お前がどこに隠れていようが関係ない。秋葉原の電波塔ごと踏み潰してやる」


豪快に笑いながらアクセルを踏み込む陣内。手元には軍用フルオート・ショットガン。助手席の部下はタクティカルナイフを構え、いつでも跳び移る準備を整えている。


だが、画面の前の蓮は冷ややかに笑った。


「原始人め。車は走るコンピュータだ」


蓮がエンターキーを叩いた瞬間、首都高速の交通管理システム(VICS)と信号制御システムがハイジャックされる。


陣内の前方の信号機が一斉に赤へと変わり、自動制御された無人の大型トラック数台が車線を塞ぐように急ブレーキをかけた。さらに、蓮は周辺のテスラ車や最新の自動運転モビリティ数十台の制御を乗っ取り、陣内のSUVを取り囲むように隊列を組ませる。


「チッ、小細工を……!」


陣内は迷わずショットガンの引き金を引いた。防弾ガラスを突き破る散弾が、目前の無人EVのタイヤを撃ち抜く。車体が火花を散らして横転するが、陣内はアクセルを緩めず、力任せにハンドルを切り直して横転した車両を吹き飛ばした。


「パワーが足りねぇんだよ、ハッカー!」


「だと思ったよ。だから『毒』を混ぜた」


陣内のSUVのエアコンファンが、突如として異音を立てた。

蓮が車載のスマートエア・リフレッシャーの通信プロトコルを書き換え、事前に仕込んでおいた特殊な「神経麻痺性ガス」のエアゾール缶を車内で強制噴射させたのだ。


「ぐっ……毒気か……! 全員、息を止めろ! フィルターマスクを装着!」


極限まで鍛え上げられた陣内の心肺機能と反応速度が、常人なら即死する濃度のガスに耐える。陣内は素手でドアノブを破壊し、走行中の車内からルーフの上へと這い出た。


---


### 第二局:ドローン群vs近接格闘(箱根・山岳地帯)


舞台は箱根の峠道へ移る。


車を捨てた陣内に対し、蓮はドローン兵器の群れ(スウォーム)を解き放った。


空を埋め尽くすのは、高精度の自爆型小型ドローン「バズ」。各機にはプラスチック爆薬と、猛毒のテトロドトキシンを塗布した超小型の鋼鉄製フリシェット(針)が搭載されている。


*ブーンという蜂のような羽音が、暗闇の山林に響き渡る。*


「検出完了。ターゲットの心拍数180、体温38.5度。バイオセンサー、ロックオン」


蓮のコマンド一発で、数十機のドローンが一斉に音速に近いスピードで陣内へ急降下した。


「甘い!」


陣内は咆哮した。暗視ゴーグル越しにドローンの軌道を見切ると、腰のホルダーから2本の大ぶりなサバイバルナイフを抜き放つ。


*キーーーーッ!*


鋼鉄とカーボンが激突する高金属音が夜の森にこだまする。


陣内の異常な反応速度と、鍛え上げられた背筋・上腕三頭筋が描く旋風。飛び交うドローンが、次々とナイフの刃によって真っ二つに叩き落とされていく。自爆の爆風をも、極厚の防弾ケブラーベストと規格外の体幹バランスで受け流す。


「ハックだの毒だの、すべては筋肉という『絶対的物質』の前に平伏すんだよ!」


陣内は一瞬の隙を突いて地表を蹴ると、木々の間に隠されていた蓮の中継アンテナ塔へ跳躍。太ももの四頭筋が破裂せんばかりに収縮し、一撃で鉄骨の塔を蹴り折った。


秋葉原の蓮のモニターが一瞬、暗転する。


「……フッ、やっぱり筋肉馬鹿はこれだから扱いやすい」


蓮の不敵な笑みが、モニターのノイズの中に浮かんでいた。


---


### 終局:秋葉原・決戦(デジタルと肉体の交差点)


壊されたアンテナは罠(デコイ)だった。

蓮が真の狙いとして仕仕掛けた「逆トラップ」により、陣内は秋葉原の地下にあるメインサーバー室へと誘い込まれる。


重圧な鉄扉を蹴り破り、陣内が足を踏み入れる。


部屋の中央には、無数のコードに繋がれたキーボードを叩くナード、高坂 蓮が座っていた。


「追い詰めたぞ、ハッカー。これで終わりだ」


陣内がナイフを構え、一歩を踏み出した瞬間——


*ガチコン!*


床の荷重センサーが作動した。

蓮が仕掛けていたのは、部屋全体を巨大な「電磁パルス(EMP)&超高電圧ショック罠」に変えるギミックだった。


部屋の照明が吹き飛び、陣内の身につけていた暗視ゴーグルや軍用通信機器が火花を散らして焼き切れる。同時に、床から数万ボルトの電流が陣内の足元を襲った。


「ウオオオオオアアアアッッ!」


凄まじい放電。普通の人間なら即座に心停止する電流。

だが、陣内は全身の筋肉を極限まで硬直させ、自らの意思で収縮をコントロールすることで、電流による心不全を物理的に押し留めた。


「な……!? 人間の抵抗値じゃない……!」


蓮の顔から余裕が消える。


電流の暴風の中を、鬼のような形相の陣内が一歩、また一歩と歩を進めてくる。高圧電流に焼け焦げる皮膚の匂い。しかし、その眼光は殺意に満ちていた。


「脳みそがどれだけ賢かろうがな……目の前の『死』を拳で叩き潰すのが……筋肉だぁぁぁッ!」


陣内の巨拳が、空間を切り裂いて蓮の顔面へと迫る。


蓮の思考速度が極限まで加速する。

(物理的なパンチの到達まで、あと0.3秒。回避は不可能。だが——)


蓮はポケットの中の小型スイッチを、コンマ1秒の差で押し込んだ。


*ドスッ!*


陣内の拳が蓮の鼻先数ミリで止まった。


陣内の胸元に、天井の自動防衛ターレットから発射された「筋弛緩剤と超強力鎮静剤」の超大型注射麻酔針が、深々と刺さっていた。


筋肉が弛緩し、膨大なパワーが体内から急速に抜けていく。陣内の巨体が、膝から崩れ落ちた。


「……が……は……」


陣内は床に伏しながらも、なおも蓮を睨みつける。


「言っただろ……筋肉は強い。でも、その筋肉を動かしているのは『神経伝達物質』という化学反応だ。化学を制する者が、生物を制する」


蓮は鼻から垂れた冷や汗を拭い、眼鏡の位置を直すと、ダウンした陣内を見下ろした。


「勝者、ナード。……次はプロテインの配合でもハッキングしてあげようか?」


倒れた陣内は、全身の力を失いながらも、最後にニヤリと不敵に笑った。


「……面白い……次は……重機(パワー)を持ってきてやる……」


日本全土を巻き込んだ「ナードvs筋肉」の第一次世界大戦は、知能の勝利で幕を閉じた。しかし、男たちの「何でもあり」の戦争は、まだ始まったばかりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。