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第三話 観測の残滓


違和感は、最初からそこにあった。


夜天久遠は歩きながら、ふと足を止めた。

見慣れたはずの廊下。そのはずなのに――どこか“短い”。


さっき通った距離と、感覚が合わない。


「……またかよ」


小さく呟く。最近、この妙な感覚が増えていた。


既視感ではない。

懐かしさでもない。


もっとはっきりしている。


“終わったことがある”感覚。


指先で壁に触れる。冷たい。確かに現実だ。

だがその瞬間、頭の奥にノイズが走る。


――ザッ


『観測を継承しろ』


反射的に顔を上げる。

周囲の生徒たちは、何も聞こえていないように談笑している。


「……なんなんだよ、それ……」


教室に入ると、時計は12時07分を指していた。

席に座り、無意識にスマホを見る。


12時09分。


「……は?」


表示を見直す。変わらない。

もう一度、教室の時計を見る。


やはり12時07分。


そのとき、不意に誰かが立ち上がった。


「今……変じゃなかった?」


教室の空気が、一瞬だけ張り詰める。


「何が?」


「いや……なんか、止まった気がして」


誰も答えない。

だが、否定もできない。


久遠は確信する。


――ズレている。


この世界は、ほんのわずかに“噛み合っていない”。


放課後、気づけば足は旧校舎へ向いていた。

理由はわからない。ただ、そこに“何かある”気がした。


使われていないはずの資料室。

だが扉は、静かに開いていた。


中に入ると、埃の匂いの中に不自然な光があった。


古い端末。

電源は入っている。


久遠はゆっくりと近づき、画面を覗き込む。


そこに表示されていたのは、ログだった。



《観測ログ:No.078》

対象:夜天久遠

結果:失敗

終端到達:未達成

原因:観測耐性不足



「……は……?」


喉が乾く。


“自分の名前”が、そこにあった。


震える指でスクロールする。



《観測ログ:No.079》

対象:夜天久遠

状態:進行中



その下に、赤い警告文。



《警告》

本観測は継承プロトコルにより管理されています。

観測主体の自我保持率:32%



「……なんだよ、それ……」


その瞬間、画面が激しく乱れた。


ノイズが走る。


砂嵐の中に、声が混じる。



『……まだ、そこか……』

『……遅い……』



息が詰まる

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