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魔王の器  作者: 北崎世道
89/91

提案

誤字報告ありがとうございました

 リリスさんを預けた後、僕が真っ先に向かったのは彼女が管理している教会兼孤児院だった。あそこは彼女以外に大人はいない。クソガキ七割、普通のガキ三割、その他が二割。子供はいつでも一二〇%。その状況で彼女が不在になるのはまずい。非常にまずい。おじさんの頭頂部くらいまずい。なので誰か他の大人を頼る必要がある。もしくは信用できる子供を。


 飛行魔法で移動してすぐに到着する。目的地の教会兼孤児院には子供たちが遊んでいる。今はお昼過ぎ。彼等に空腹の気配はない。昼食は食べたようだ。だが、ここで疑問。昼食時リリスさんはお城で暴れていた。ならば誰か、ここで遊んでいる子供達以外の誰かが、昼食を用意した事になる。…………まぁ、子供だけでも昼食ぐらいは用意できそうだけども。


 ただ、僕の中では期待と言うべきか予感というべきか。今、孤児院の庭で遊んでいる無邪気な子供以外の誰かが、昼食を用意したと思っている。予想している第三者。まぁ、彼女もそこらのガキとは変わらないといえば変わらないのが、しっかりしているし、頭もよさそうだし。なにより────強い。


 見た目はただの子供だが、ただの子供ではない事ははっきりしている。頭脳が大人かは知らんが、態度は一人前だった。おそらくリリスさんはお城に向かう前に、彼女に子供たちを見るよう頼んでいたのだろう。そいつに頼んだから、たった一人の大人であるにも関わらず、僕の面会の為に外出する事ができたのだ。


「あ」 


「いた」


 孤児院の炊事場で、見覚えのある少女が皿洗いをしていた。予想通りの少女。


「…………えっと、ユウだっけ?」


「うろ覚えじゃないの。アルカ・フェイン。上司の小言じゃなくて美少女の名前なんだから、男ならきちんと脳髄に刻み付けておきなさいよ」


 リリスさんの友達であるしっかりした女の子。ユウ。ここの子供達とほとんど変わらない年齢、おそらく十歳ぐらいだけど、それでも留守番を頼めるくらいには信用できる少女だ。


「リリスは?」


 ユウは僕を見るなり、友人であるシスターリリスを訊ねた。


「ここにはいない。暫く帰ってこれないから、それを伝えに来た」


「誘拐は犯人の情報を隠さないと成り立たないわよ。ああいや、本人が望んでそうだから誘拐じゃないのか。ただのお持ち帰りになるのね」


「いや、そうじゃなくて」


 つうかこんなコだっけか?


 ひとまず僕はこれまでの事情を説明した。


 ユウは僕のやや拙い説明でもすぐに理解してくれた。僕の倍くらいしか生きてないのに、やはり知力が高い。女の子はませてるからかな。


「ここに戻って来れない理由も、病院に連れていけない理由も解ったわ。でもあのコが城内の憲兵相手に好き勝手暴れるくらい強いのは納得できないわ。だからといって貴方が嘘を吐いてると疑ってる訳じゃないんだけど」


「まぁ、そりゃそうだよね」 


 さすがにこの前性交した事や、先祖返りのサキュバスクイーン能力で僕の魔力と繋がりができた事は説明できないので、リリスさんが憲兵相手に暴れた事には納得がいかないようだった。しかしそれでも僕の話を嘘だと一蹴しないのは流石だと思った。普通の人間なら嘘だと一蹴するだけだろう。


「あのコが強くなった原因に心当たりある?」


「…………」


「あるのね」


 判断が速い。いや、速いのは理解か。


 どれだけ賢くてもメスガキ判定から免れないような年齢の少女は、考えるように下唇を僅かに突き出し、それから「それで? 貴方が求めてるのは何?」と尋ねてきた。


「ここの子供たちの世話を看ていてほしい。って、同年代の子供に頼むのもなんだけど」


「別にいいわよ。どうせ今日明日にでも他のとこのシスターがやって来る手筈になってるから」とユウはあっさりと言った。「実をいうと、数日前に既にあのコが呼んでたみたい。おそらく貴方が捕まったと知る前から」


「え? なんで?」


「心当たりはあるんじゃないの?」とユウが半目でこちらを見る。「どうもあのコが心変わりするような何か、それもあのコが孤児院以外に住むところを変えようとするような何かが起きたみたいよ。私的には原因は貴方にあると思ってるんだけど? アルカ・フェイン?」


「この前の交尾が原因じゃろうな」とアウルアラが他人事のように言う。お前のせいだろうに。


「一度寝ただけですぐに彼女面して、住居を探すとはなかなか気が早いの。そのくせ重い。お主もクソ面倒な女に手を出したもんじゃな」


 手を出したのはお前じゃねぇか、アウルアラ。 


「ま、お主もアレが原因でアパートを借りたし、似た者同士でお似合いじゃな。ま、お主は他の女を連れ込んだが」


「…………あぁぁ」


 僕が声を上げると、またしてもユウは半目でこちらを見つめ、小さくため息を吐いた。


「…………きちんと状況が整うまで避妊はきちんとしておきなさいよ」


 完全に見透かされていた。


 十歳児の観察眼じゃないだろ。


 僕が絶句していると、ユウは話は終わりと言わんばかりにこちらに背を向け、


「とりあえずここは大丈夫だから、あんたは自分がすべきことをしなさい。面倒ごとはさっさと片付けて、あのコを幸せにする事だけを考えなさい。リリスはとてもいいコなのよ。あのコは幸せにならなくちゃいけないコなの」


 今更だけど、リリスさんは十代後半、たぶん二十代にはいってないくらいの年齢であり、十歳近く下の子供から『あのコ』呼びされてるのはなんとも変な感じだ。まぁ、ユウの精神年齢が実年齢を遥かに超越しちゃってるし、リリスさんも年上面するタイプじゃないから、そういうのもあるのだろう。ユウとは違ってリリスさんはどんな年上でも敬いそうだけれども。


 閑話休題。


 僕はユウのやや重め言葉に、曖昧に頷いた。


 確かにリリスさんはいい人で、幸せにならなくちゃいけないと思う。僕が幸せにしてやる、くらいの気概やら覚悟はぶっちゃけまだ持ち合わせてないけど、それでも不幸になる要素はなるべく早めに削ぎ落としときたいとは思う。


 今の僕の面倒ごとは僕だけで片付けておこうと、改めて思った。


「それじゃここは頼むね。あと、一応リリスさんが今いるのは────、」


 そう言ってアパートの場所を伝えておく。


「僕の名前を言えばたぶん大丈夫…………の筈。あ、いや、僕、名乗ったっけかなぁ? まぁ、ユウならたぶんどうとでもなると思う」


 僕がこの場を去ろうとすると、不意に扉が開く音が聞こえた。そこには僕がここの孤児院に連れてきた奴隷の女の子、ネアが立っていた。不安そうな目でこちらを見ている。


「ご主人様、どこかに行かれるんですか?」


「…………そうだね。心配はいらないから、皆と仲良くね」


 僕はそう言ってネアの頭を優しく撫で、そして部屋を出る。


 ネアが「待ってください」と引き留めようとしたが、僕は手を上げるだけで流して、孤児院を出た。


 今度ネアに会う時はかなり成長してるのかもなぁ、と思った。



 ◆



 孤児院を出てから、次は家に寄ろうかと考えたが、やめた。今、家に帰ると、面倒が起きそうだし、なにより僕の覚悟が鈍りそうな気がしたからだ。


 なのでそのまま僕は真っすぐ監獄へと戻った。


 結局、リリスさんをアパートに預けて、孤児院に顔を出して確認しただけで、時間にして一時間と経ってない。とんぼ返りだ。


 監獄はお城の地下にあるので、まずはお城の方に戻ったという感じなのだけど、お城のところはたくさんの人がうじゃうじゃいた。野次馬と憲兵が半々。憲兵は壊れたお城の復興に手を出してるのかと思いきや、意外にも野次馬に「散れぇっ! このクソどもがっ!」と叫んで、ガードマンしている人の方が多かった。それだけ野次馬の存在が邪魔だという事か。元の世界でもそういう状況は多かった気がする。野次馬以外に報道目的のマスコミなどもいたから、むしろ元の世界の方が酷かったかも。


 破壊されたお城の方はというと、意外と大した事がなかった。中から見た時は、それこそ世界の終焉でも迎えたかのような燦燦たる有り様だったが、外からだと野次馬が集まってなければ気付かない程度の損壊だった。野次馬がいて、それを飛行魔法で空からみてようやく気付くレベル。おそらくそこにいる野次馬達の大半にはお城の損壊は見えてないだろう。何が起きたかさえ分かってない人だっている筈。だから野次馬ガードマンの方が多いのだろうか。 


 状況を確認しながら僕は目的の憲兵を探す。空から目視で探してみたけど、ごちゃごちゃしていて全然見つからない。これならウォーリーの方が簡単そうだ。暫くしてから探知魔法を使えばいい事に気付き、使ってみると簡単に見つかった。てか、見えるとこにはいなかった。城の奥の方にいた。隊長格の大ボスさん。名前は知らないけど、風格あるのと話が通じそうなのは判る。その人の元に飛行魔法で向かおうとすると、「き、貴様っ!」憲兵の一人に見つかった。まぁ、これだけたくさんごちゃごちゃいたら、誰か一人には見つかるのは当然だった。城の中に入ろうとしてたので、高度もそれなりだったし。


 見つかってからは急いで大ボスさんのもとに向かった。速度を上げたら、簡単に憲兵たちは振り切れた。元旦の神社みたいくごちゃごちゃしていたら、いくら足が速くとも追い切れないだろう。


 すぃーっと、空を飛んで、城の奥、よく分からんところに到着する。壊れているからよく分からない部屋なのか、それとも壊れてなくてもよく分からん部屋なのかは分からない。おそらくはお城関係者も存在意義を訝しんでる部屋なのだろう。王族の住むお城って大体そんな感じだと思う。


 とりあえず元は豪華な装飾品が適度に置かれてた部屋。今は装飾品の半数以上が床に散乱していて、壁も一部が破壊されている。その部屋に目当ての大ボスさんがいたので、着陸して話し掛ける。


「どもっす」


「き、貴様…………っ!」


 剣を向けられた。まぁ、警戒されるのは想定内。両手を上げて敵対意志のない事を示す。


「何のつもりだ?」


「そりゃまぁ……これだけお城を壊してしまったら、何かしら罰は受けないといけないかなぁって思って」


「貴様が壊した訳じゃないだろう」


「いいや。あれは僕が壊したようなもんだから。罪は償うよ。あまりに罪が重かったら逃げるけど」


 僕の返答に大ボスさんが呆れたような態度を示した。


「一体なんなんだ、貴様は…………?」


「ぶっちゃけ何も考えてないから、あんまり深く考えこまない方がいいよ。ただ自分に正直なだけ」


 あとは、力尽くでどうとでもなると分かってるから、こんな風に何度も出戻りしているだけ。巻き込まれる憲兵たちには迷惑かもしれないけど、先に迷惑を掛けてきたのは憲兵側だから、文句は言わせない。無実の僕を捕まえて、そのまま放置してきたそっちが悪い。


 もはや半ば嫌がらせのつもりで何度も出戻りしている感じだ。


 親切心もあるにはあるけど。


「とりあえず、壊したところの修復は手伝おうかなって。一応これでも土魔法とか得意だから、お城の壁とか修復できると思うし」


「いらん。というかここら辺りの壁は魔法煉瓦で建てられてるから、自動で直る」


「自動で? マジ? え、すごっ」


 ここにきて元の世界の建築技術を遥かに超えてるのがでてきた。


 一応、全体的には異世界あるあるな中世ヨーロッパな世界観で、科学技術も魔法が混ざってるおかげで、元の世界に迫るモノもあるにはあるくらいだったけど。それでも超えてるのは初めて見た気がする。それもかなり超越したやつ。


 ああいや、ダンジョン関係で転移魔法陣があるから初めてではないか。でも、それを抜きにしたら初めてだと思う。ただまぁダンジョン関係は、この世界にとっては失われたオーバーテクノロジー的なやつで、この世界の技術と呼べない代物だから除外するとして。


 この世界の技術と呼べるものでは初めてだと思う。


 なんか、すげぇ驚いた。今まで下に見てた奴が、実は全然上の奴だったみたいな感じ。


 …………という事は、僕はこれまでこの世界を下に見てたって事になるのか。そんなつもりはなかったけど。


 ……いや、こんな舐め腐った感じで何度も脱獄出戻りを繰り返しているのだから、下に見てたってのは否定できないか。意識的には見下してなかったけど、無意識的には完全に見下していた。だから気に入らない奴は容赦なくボコボコにしてきたし、たまたま見つけた困ってる女の子とかも後先考えず雑に助けたりしてきたのだ。


 少し考え方を改めないといけないかもしれない。


 僕はもう完全にこの世界の住人なのだし。


「自動で直るといっても、大量の魔力を消費するけどな」と大ボスさんが言った。


 そう言われて、僕は魔法煉瓦とやらの話をしている際中だったのを思い出した。


「それなら僕の魔力を使う? 魔力量には結構自信があるんだ」と僕は言った。


「まぁ、そうだろうな」と大ボスさん。「だが、貴様のような危険人物を魔力貯蔵庫まで連れて行く事はできない。一応、城内の重要な部屋だからな。その代わりに────ほい」


 と言って大ボスさんがいきなり石を放り投げる。


 僕はそれを受け取る。パキン。「あ」壊れた。


「その石は魔力を溜める為の石で、魔力を籠める事で、最大百人分の魔力を溜め込む事ができるんだが…………って、待て。貴様、なぜ壊した」


「ご、ごめん。でも何もしてないのに壊れたんだもん。受け取ったらいきなりパキンって」


「…………」


 すごいしかめっ面で大ボスさんが睨む。僕としてはかなり居た堪れない。確かにこのタイミングで受け取ったモノを壊すのは空気が読めないとは思うが、だとしても本当に何もしてないのだ。我ながら面倒なパソコン初心者の常套句みたいだと思うが、それでも本当に何もしてないのだから仕方ない。


「どうして魔石を壊したんだ。一体何が目的で…………いや待て。貴様、どうやって魔石を壊したんだ?」


「だからどうしてって言われても、勝手に壊れたんだから仕方ないじゃん」


「違う。『どうして』ではなく『どうやって』だ。何をやって壊したんだ?」


「…………?」


 大ボスさんの言ってる意味が分からず、僕は首を傾げ、戸惑う。


 まるで意味が分からない。


「質問を変えよう。貴様、魔力は今、どれだけ余ってる? 今のでどれだけ魔力が減った?」


「魔力? 減った? いや別に減っては…………あ、いや。言われてみれば少し減ったかも? たぶん。ちょっとだけだけど」


 言ってから僕はこれが、俺なんかやっちゃいましたか、系の発言だと察した。


 ああ、そういう系ね。僕の魔力が凄すぎて、無意識レベルの魔力放出でさえ百人分の魔力を超えてしまった感じのやつ。異世界チートもここまでくれば、凄さや優越感、全能感よりも滑稽さが目立つ。


「オッケー。分かった。それじゃとりあえずその魔力貯蔵庫とやらに連れてってもらえる? もう色々手続きとか面倒だから。たぶん魔力貯蔵庫に行って、僕の魔力をちょっとやるだけで魔力貯蔵庫の魔力が満タンになるだろうから」


「何をふざけた事を言っている。こちらは貴様の妄言に付き合ってる暇などない」と憤っている大ボスさんを無視して、僕は目的地の方角も解らぬまま適当に彼の横を潜り抜けようとする。


 ────が、


「ん? おおおっ?」


 阻まれた。


 勢いのない腕力のみのラリアットみたいな感じで、僕の進行を阻害する。


 こちらが態勢を崩したところで、頭を掴まれた。分かりやすいアイアンクロー。


 そのまま片手で持ち上げられる。


「いだいいだいいだいっ!」 


 痛みのあまり思わず抵抗するが、効果は見られない。


 平然と僕のこめかみを掴み続けている。


 今回、潜り抜けようとする際、どうせ取り押さえられるのは目に見えていたので、僕は力尽くで行ってやろうと企んでいたのだが、あえなく撃沈してしまった。


 どうしてなのか。これまでの大ボスさんとは明らかに違う。僕の一撃で簡単に倒せる筈の大ボスさんが、どうしてこうも強いのか。


「どうやらこれまでは手加減されとったみたいじゃな」とアウルアラが現状をいち早く見抜く。


「これまでお主と相対しとった時は、お主をやっつけるつもりではなく、お主を捕まえるつもりだったのじゃろう。…………無傷で。だから否応なしに手加減する状態となり、お主が簡単に倒せたのじゃ。相性が良かっただけじゃなかったみたいじゃな。そもそもの心構えが違うから、これまでは一蹴できたのじゃ。今のこいつが本来の姿と見た方がよいぞ」


「これまでは本気じゃなかったって事……?」


「そういうつもりはなかったが、結果的にはそうなるな」


 僕の呟きに大ボスさんが応える。


「貴様をできるだけ無傷で捕まえようとするのはもう諦めた。これからは対等な存在として扱わせてもらう」


 どうやらアウルアラの推測は当たってたようだ。これまで余裕だと思ってた相手が実は力を隠していたとか、ちょっと悲しい展開。イキってた過去の自分が恥ずかしくなるやつである。


「は、放してください。てい、抵抗はしませんので……」 


「無理やり魔力貯蔵庫に行こうとしないな?」


「は、はい……っ」


 僕が泣きながら懇願すると、意外にも大ボスさんはあっさり放してくれた。


「い、いだかった……っ」


 僕は涙を流しながらその場で蹲る。我ながら情けないったらありゃしない。興奮してきたというアウルアラの呟きにも今は反応しきれない。


「悪かったな。子供を痛めつける趣味はないが、貴様レベルになると手加減できない故にこうなってしまう。すまん」


「こ、こちらこそずいまぜんでじた……」


 僕が泣きながら謝ると、大ボスさんが気まずそうな顔をして、こちらから視線を逸らした。


「さて、これからどうしようか。正直、これ以上貴様をここに勾留していたら、こちらが損害を被ってしまうから、あまり置いておきたくないんだが。しかし、上は貴様を殺人犯として見ている以上、このまま放置する訳にもいかない」


「で、でも僕は殺してないし……」


「じゃから、今はお主の意見は、今は関係ないという事じゃろう。察しの悪い奴じゃな」見るに見かねたといった様子でアウルアラが口を挟む。といっても、その声が聞こえるのは僕だけだけど。


「ぼ、僕にどうしろと?」


「…………」


 大ボスさんが同情するような目でこちらを見る。


「お主はもうここに来るべきじゃなかったという事じゃろう。手に負えんと目で言っておるわ」


 そんな事、今更言われても……。


「いくら正直でも、馬鹿は罪って事じゃな」


 そんな事言われても……。


「正直な意見とかこつけてただの誹謗中傷をする馬鹿も罪じゃよ」


 そんな事言われて…………いや、それとは一緒にしないで。


 さすがに。


「すまぬ」


 閑話休題。


 ひとしきり話し終えたところで、これからどうするべきか、僕も大ボスさんも判らないといった様子で途方に暮れていると、どこか遠くから足音が近づいて来た。


 僕がキョロキョロ見渡してその足音がどこの方角から来ているかを耳をすませながら探していると、大ボスさんも遅れて辺りをキョロキョロと肉食獣みたいな顔つきでありながら草食動物みたいな挙動で探し始めた。


 足音はどんどん大きくなってきていた。ようやくはっきりと方角が分かり、僕が来ていた方を凝視するとそこには見覚えのありそうななさそうな、一目見たら次の瞬間にすぐ忘れてしまいそうな地味で微妙な奴が歩いて来ていた。男か女かさえも不透明。


 そいつは、初めこそ憲兵かと思ったが違った。服装が鎧ではなく、一般人が着ているような服装だった。


「副隊長……」と大ボスさんがやや驚きの色を混ぜた声で呟き、やっぱり憲兵で合ってたと僕は内心密かに驚いていた。


 地味だし、服も一般人の服装だったから、こんな場所と状況でありながらも完全に一般人だと思い込んでしまっていたのだ。


「やぁ、どうも遅くなりました」とそいつは言った。その声で僕は、今回のきっかけとなった奴だと思い出した。


 僕が街を歩いているところに声を掛けてきた休暇中の憲兵だ。覇気もオーラも威厳もなかったから、単なる一般兵かと思ったが違ったようだ。


「アルカ君ですね。今回はぼく達の色々な不手際に巻き込んでしまって本当にすみません。できればこっちもスッキリ解決したかったんですけど、どうにも上との連絡に行き違いが起きてしまって、いやホント大変申し訳ありません」


 謝罪でありながらどこか空気のように軽い口調で話す副隊長は、一瞬だけ口端を歪め、それから何事もなかったかのように言った。


「────それで、アルカ君には一つ提案があります。今回の件を全て解決させる良い案です。それは今回の事件、ブーザマ及びジャントルの殺害を行った犯人をアルカ君が見つけ、アルカ君が捕まえるんです」




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