夜の公園にて
いつもよりちょっと短いです。すいません。
「そうは言ってもなぁ」
ならば、前世ではなく現世のこと。転生してからについて語ろうかと考えるが、
「…………特に今と変わらないかなぁ」
というのが事実。
「今と一緒でマジュ師匠とラキ師匠の二人に魔法や剣術の指導を受けてたくらい。ダンジョンに潜るようになったのも、ナイルに会うほんの少し前だし。ああいや、一度だけ二年前に潜ったんだけど、その時、痛い目を見て懲りたんだ。あの時に比べたら大分強くなったつもりだから、今はこうして潜り直したけど」
「そうなのね。あんたも弱い時期があったんだ」
どこか嬉しそうにナイルが顔をほころばせる。
「なんかあんたは最初から強いイメージがあるもの。それこそ赤ちゃんの時から」
「そんな訳ないじゃん」
僕は笑って否定する。
「赤ん坊の時は精々、魔法をほんの少し使えるくらいだったよ。それでも母からは天才だって思われてたみたいだけど」
「そういえばあたしも、赤ちゃんのころ、ちょっとだけ魔法を使った事があるんだって。それを見て、パパがあたしの事を天才だと褒めちぎってたみたい。どこの家も子供が赤ちゃんの時は親バカになっちゃうみたいね」
「そうだろうね。親は子供の可能性を信じちゃうから。ちなみにナイルは何の魔法を使ってたの?」
「うーん」ナイルは思い出すように人差し指を頬に当て、視線を上に向け、
「あたしは光の魔法ね。夜にちかちか光るものがあるから、あたしには光るものがあるって気付いたんだって」
「へぇ」
どこかの構文みたいな台詞だけど、一応は違う意味だから間違ってないか。
A=Aじゃなくて。
「あんたは何を使ってたの?」
「僕の最初は水の魔法だったかな。指先から水滴を垂らしてたよ」
「そうなんだ。初めてなのにびしょびしょに濡らしたんだ」
「一応は桶使ってたから、濡らしてはないよ」
てか、それだと変な意味に聞こえるから。
「へぇ? それって誰が桶を用意したの?」
「そりゃぁ…………………………誰だろうね? 母じゃないかな?」
あっぶねぇ。
自分で用意したとか言ったら、変な目で見られるところだったよ。
むしろ当時の両親は変に思わなかったんだろうか。
…………思ってても、賢い子だという事で片付けられたのかも。
あの二人なら多少の違和感も愛情で流してしまいそうだ。
「…………」
それからも僕達は適当に話をしながら夕食を取った。
◆
高級レストランを出た後、そのまま家に帰るかと思ったが、少しだけ寄り道がしたいとナイルが言ったので、近くの公園に寄る事にした。
夜の公園は人気がなく、静寂に満ちていた。
空気が冷たいが、これは気温だけのせいではないだろう。
日差しの暖かさもそうだが、やはり人が居ないと熱がなくなってしまう。
他人が放つ熱量を無意識ながらに感じ取ってるのではないかと思う。
なんて、勝手な思い込みだけど。
それだと人はいないけど熱い場所はどうなるんだって話で。
これは単に僕がセンチメンタルな気分になってるからだろう。
しかもそれも、さっき両親の愛情についての想いから、僕って転生だからあの二人の子供の偽物じゃないか、とかそんな風なこと考えてしまったせいだ。
切り替えよう。
そもそも今日は、ゴルドフの件で気持ちが沈んでいたから、ナイルに慰めてもらって沈んでいた気持ちを引き上げてもらったのだ。
それなのに僕が変なことを考えて、自分で自分の気持ちを沈ませてたら何の意味もない。
頑張って、気持ちを明るくさせていよう。
誰も僕が落ち込む事を望んじゃいない。
僕が明るくなったって、誰も責めはしないのだ。
「ねぇ」僕はナイルに言う。「今日は一日楽しかったよ。ありがとう」
「う……うんっ」
とナイルは妙な反応を示す。
顔を赤らめ、大きく目を見開いたかと思ったら、すぐに俯いてしまう反応。何か気に障った事でもしてしまったかと思うが、それとも何か違う。
息遣いが荒い。
ナチュラルに腕を組んできてるし、時折、足をもじもじさせている。
トイレかとも思ったが、レストランを出る前にトイレに行ってたので、おそらく違う。
その年で頻尿はないだろう。
なら何だ。
「どうしたの? 気分悪いの? さっきのご飯が口に合わなかった?」
「……違う……そうじゃ……そうじゃないの……」
なら何だ。
「何かしてほしい事はある?」
心配なのでそう尋ねてみると、
「こっち来て……」
そう言ってナイルがこちらの腕を引く。
彼女の向かう先は、公園内の、道から外れた木々の中。
ただでさえ人気のない夜の公園だったが、道外れの、こんな発情したカップルが密かに交尾してそうなところに連れ込んで、何をするつもりなのか。
しかも顔を真っ赤に、呼吸も荒くして、足ももじもじさせて、一体何をするつもりなのだろう。
何をさせるつもりなのだろう。
ただでさえ露出の多いドレスを着てるのに、なんかはだけてきてるし。
両肩出て、乳房が零れそうになってて、しかも何故かスカートをちょいちょいたくし上げて、太ももどころかお尻が見え隠れしてるけど、一体何をするつもりだろう。
何がしたいのだろう。
「…………ねぇ、もう我慢できないの……」
そう言って、ナイルの態度がいよいよおかしくなる。
人気のない暗がりの中、ナイルが木に手を当てこちらに尻を突き出すような態勢を取る。
その態勢でスカートをまくり上げ、尻をまる出しにする。
思い切りパンツが見えてしまう。
しかもそのパンツ、全体的に紐型で、妙に面積が小さく、更には暗いのに生地が透けている。
紐で小さいのにスケスケだ。
完全にそういうのが目的の下着であるのは一目瞭然。
「さっきトイレで着替えてきたの……。普段はこんな過激なの履かないんだからね……」
「そうなんだ……」
僕の芳しくない反応にナイルは、
「…………こんなはしたない女でごめん…………でも…………もう我慢できないの…………」
「…………」
「来て…………お願い…………っ」




