表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
川を下る。  作者: karon
5/6

さまよい迷い

 恵美はしばらく呆然と立ち尽くした。

 ずっとたどってきた小さな川、それはもう少し大きな流れに合流していた。

 川の両側は気が密集して生えている場所になっていた。

 川に沿って歩こうとすれば狭い場所に身体を突っ込みながら歩いていくしかない。

 木の根元は盛り上がった根がごつごつと盛り上がっていた。

 後ろを見ても随分と歩いてきてしまった。もう引き返すこともできない。

 川は水嵩が増していた。落ちたら溺れるかもしれないと思いつつ木の幹に抱き着きながらそろそろと歩いていく。

「行かなきゃ」

 恵美はうつろに呟く。

 自分はどこに向かっていたのかをいつの間にか恵美は見失っていた。

 とにかく川に沿って進み続ける。それ以外考えられないでいた。

 密集した木の隙間に身体を滑り込ませた。

「行かなきゃ」

 そろそろと恵美は歩き始めた。


「お兄ちゃん、何で川を下っちゃいけないの?」

 何とか電話がつながって雅弓は兄と電話をしていた。

「それはな、画像送るぞ」

 兄はメールに画像を添付して送ってきた。

 それは蛇行した川。

「山ってのは凸凹してるんだよ、下っていても途中で登ったりするところもあるし。だからまっすぐ下に伸びてるわけじゃない。まっすぐ降りていけばすぐでも川をたどったらものすごく遠回りになるかもしれないし。それにだ、川はどこに伸びているかわかったもんじゃない、もしかしたら森の奥まで続いているかもしれない」

「森の送って、熊が出るような?」

 最近は街中にも出るという熊。山に行かずとも住宅街でクマに出くわすことも珍しくないという。そんな熊は山や森の奥ならもっと出るだろう。

「恵美、熊に食べられてないよね」

 順子がこわばった顔で言った。

「多分、大丈夫なんじゃないかな」

 額に冷や汗を流しつつ雅弓はそう言う。

「大丈夫、だといいなあ」

 電話の向こうで兄がそう呟いていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ