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ビジネストーク

……………………


 ──ビジネストーク



 ブラックカイマンに対する破壊工作の成果が見えてきた。


 そう、村瀬から連絡があり、俺と湊はやつに会いに向かう。


「ブラックカイマンへの打撃の成果が見えてきたんだな?」


「ああ。ウィットロックは求心力を失いつつある」


 村瀬はそう言ってODIN経由で情報を共有する。


「これはブラックカイマンの部隊の中で、ウィットロックの指揮下から離れた部隊だ。連中はダンジョンから撤退したり、大井といった企業の下に入ったりとウィットロックから離れつつある」


「内部分裂か。もうこれだけで俺たちの目的は果たせたようなものじゃないか?」


 村瀬の言葉に湊がそう指摘。


 確かに俺たちの仕事は別にウィットロックを殺すことじゃない。ブラックカイマンを無力化することだ。その目的はすでに果たせつつあるように思えた。


「いいや。分裂はしたが、ブラックカイマンは今も脅威だ。ウィットロック暗殺は既定路線だと思ってくれ」


「了解。いつ殺す?」


 俺はそう村瀬に尋ねた。ブラックカイマンの警備は今度こそ軽微なものだろう。殺すならばウィットロックが求心力を取り戻す前にだ。


「分かっていると思うが、可能な限り早くだ。すでにこちらでも準備を進めている。情報部はウィットロックの居場所やスケジュールを掴もうとしている」


「その結果次第、ってわけか」


「そうなる。前回は失敗した。次も失敗すればいよいよウィットロックは本格的に身をひそめるだろう。そうなると暗殺は困難になる」


 湊が呟くように言い、村瀬はそう言った。


「分かった。では、情報部からの報告を待つとしよう」


 そうして俺たちは情報部がウィットロックについての確実な情報を掴むのも待つ。


 それから待機すること数日。ODINに通知が来た。


「湊。情報部がウィットロックの居場所を掴んだ。それで村瀬から呼び出しだ」


「オーケー」


 俺たちは村瀬に呼び出されて、ブリーフィングルームへ。


「来たか、佐世保、湊。いよいよウィットロックの首を刎ねるぞ」


 村瀬はブリーフィングルームに来た俺たちにそう切り出す。


「ウィットロックは現在、ポータルと鉱山で受けた打撃から回復するために外部との交渉を行っている。民間軍事会社(PMSC)として仕事を受けて、資金不足を解決しようってつもりらしい」


「相手は?」


「大井から麻薬カルテルまで様々だ。だが、まだどことも商談はまとまっていない」


 湊が尋ね、村瀬がそう答える。


「俺たちが襲撃するのはその交渉の場か?」


「その通りだ。俺たちは交渉相手に偽装し、商談場所に赴いてウィットロックを殺す」


 なるほど。これまでの作戦よりはるかに確実そうな代物だ。


「交渉相手に偽装するってのについて詳しく教えてくれ」


「ああ。公社が抱えているペーパーカンパニーのひとつであるナイト・ファスト・ロジスティクスとしてブラックカイマンに警備の契約を持ちかけている」


 公社はいくつかのペーパーカンパニーを有している。潜入捜査のためであったり、日本政府とのつながりをごまかすためであったりが目的のものだ。


 ナイト・ファスト・ロジスティクスもそのひとつだ。


「取引場所にはまだ面が割れていない公社の職員を向かわせる。お前たちはそれを警備するスタッフとして同行してくれ。そして、ゴーサインが出たら取引場所に姿を見せたウィットロックを殺る」


「一応完璧そうな作戦に思えるが、問題は本当にないのか?」


「うちとナイト・ファスト・ロジスティクスの繋がりはばれていない。相手側からの先制攻撃はないだろう。ただし、商談が行われる場所によっては撤退や緊急即応部隊(QRF)の投入が難しくなる」


「あたしたちが鉄砲玉になっちまう可能性もあるわけか」


 村瀬の答えに湊は渋い顔をしていた。


「こっちは取引を持ち掛ける側だ。なるべくこっちに有利な場所にウィットロックどもを誘い出してくれ」


「ああ。努力する。公社もお前たちみたいな優秀な職員を失いたくはないからな」


 俺がそう求めるのに村瀬はしっかりと頷いた。


「それでは商談場所が決まるまでは待機してくれ。すぐに決まるだろうからそこまで待つ必要はないぞ」


 村瀬がそう言った通り、商談場所が決定したのは2日後だった。商談場所は同じ3階層にあるかつて大井が利用していた施設のあとだ。


 それから俺たちはナイト・ファスト・ロジスティクスのメンバーと合流し、商談場所に向かうことになった。


「ナイト・ファスト・ロジスティクスの田中です。どうぞよろしく」


 ナイト・ファスト・ロジスティクスから派遣された人間はいかにも会社員という感じの人間で軍人には見えない。だが、よく観察すればところどころに軍人としての空気を感じることができた。


「あんた、元軍人か?」


「ええ。ですが、その話はよしましょう。私は今はただの運送会社の社員です。それだけですから」


「分かった」


 下手に俺たちが田中の正体を知ってぼろを出すことをこいつは恐れたのだろう。プロと思われていないのは心外だが、プロとしては無駄なおしゃべりはするべきではないので仕方がない。


「では、作戦の確認を」


 田中が装備しているODIN経由でブリーフィングを行う。


「我々はウィットロックが姿を見せたら、まずは公社本部に報告。ゴーサインが出たらすぐさまウィットロックを殺ります」


 田中はそう短く告げる。シンプルだが、確実な手段だ。


「脱出は?」


「公社がパワード・リフト機と空中援護を待機させています。それが我々を回収し、離脱させるでしょう」


「オーケー」


 湊は脱出手段がちゃんと確保されていることに満足した様子。


「で、いつ始める?」


「これからすぐにです」


 田中が言うように作戦はすぐに始まった。


 俺たちは身分を特定されない装備で田中の護衛につき、田中とともに軍用四輪駆動車でブラックカイマンとの商談場所へと向かう。


「ブラックカイマンの連中がいる」


「規模は?」


「1個分隊ってところ」


「それならどうにかなりそうだ」


 1個分隊8~12名ならば俺と湊でどうにかできるだろう。最悪、公社の増援が到着するまで時間を稼げばいいだけだ。


「止まれ」


 商談場所である大井の放棄した施設に近づくとブラックカイマンのコントラクターが俺たちの乗った軍用四輪駆動車を止める。


「ナイト・ファスト・ロジスティクスの連中か?」


「そうです。ウィットロックさんと商談を行いに来ました」


「分かった。車はあそこに止めろ」


 田中が言うのにブラックカイマンのコントラクターはそう指示した。


 俺たちは車を指定された場所に止め、田中を護衛して車を降りる。


「おい。その武器は何だ?」


 そこで俺たちが武装していることに気づき、ブラックカイマンのコントラクターが睨むように俺たちを見てくる。


「あたしたちは護衛だ。警備はあんたらに任せておけば安心なんて言わせないぞ」


「ふん。馬鹿なことはするなよ」


 湊がそう言い返すとブラックカイマンのコントラクターはしぶしぶと武装を認めた。


 俺たちはそれから田中とともに放棄された施設内にある事務所のような場所の入った。古ぼけている建物だが、中はある程度掃除されており、田中が案内されたソファーに座り、俺たちはその後ろで警備に当たった。


「司令官はもうすぐ来る」


 ブラックカイマンのコントラクターはそう言い、俺たちはウィットロックの到着を待つ。やつがこの場に姿を現さなければそれだけ作戦は失敗だ。


 しかし、俺たちの心配をよそにウィットロックは姿を見せた。


「ナイト・ファスト・ロジスティクスの人間だな。私がブラックカイマンの司令官であるウィットロックだ」


 現れた男はそう名乗った。


……………………

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