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鉱山

……………………


 ──鉱山



 俺たちはブラックカイマンが保有する鉱山の攻撃に向けて動いている。


「確認されている地対空ミサイル(SAM)サイトはこの4か所だ」


 俺は湊と作戦について確認する。


「それから地対空ミサイル(SAM)と連動している防空レーダー。これを潰せば高高度からのドローンによる爆撃は問題ないとは分かった。よって俺たちはまず防空レーダーを潰しにかかる」


 鉱山に設置されている防空システムは短距離のものばかりで、有視界で照準するものが多い。それゆえに防空レーダーさえ機能不全に陥れれば、敵は高高度から侵入するドローンを捕捉できないわけだ。


「防空レーダーは2ヶ所。この小高い山の上だ。俺たちは、そのふたつのレーダーを破壊する。可能な限り速やかに」


 俺はそこで湊の方を見た。


「やれると思うか?」


「問題ない。やってやろうぜ」


「オーケー。仕事にかかろう」


 作戦にタイムリミットはないが、時間が経てば経つほどブラックカイマンが先のポータル襲撃から立ち直る時間を与えることになる。可能な限り連続して連中に打撃を与えなければ意味がなくなる。


 それから俺たちはパワード・リフト機に乗り込み、ブラックカイマンの鉱山へ。


『そろそろ到着だぜ、ブギーマン』


 パワード・リフト機のパイロットがそう言い、俺たちを乗せたパワード・リフト機は敵の防空レーダーに探知されないぎりぎりの地点に降下した。


 パワード・リフト機の降下に合わせて地面に降り立った俺たちは、敵の警備に警戒しながら鉱山の方を目指す。


 今回は俺と湊だけの少人数での作戦だ。敵に気づかれてハチの巣をつつく騒ぎになってしまうと命が危うい。慎重にいかなくては。


 こういうときに重要なのは人の通れるようなっている道は避けることだ。人の通れる道は相手も把握している。それゆえに地雷やドローンが配備されている可能性が高い。


 俺たちは道なき道を選んで進み、敵による探知を可能な限り避けていく。文字通り崖っぷちを進んで、敵の予想しているルートを徹底的に避けるのだ。


 それには体力が必要だが、俺たちはこういうときのために鍛えている。


「鉱山が見えてきたぞ」


 戦闘を進む斥候(ポイントマン)を務める湊がそう言い、俺たちはついに鉱山が見える位置まで進出した。


「あれが鉱山か。情報通りのデカさだな」


「ああ。こいつをぶっつしてブラックカイマンの連中に打撃を与える」


 俺たちは鉱山を視認したのちに暗くなってから防空レーダーの排除に向けて動いた。


 湊が先頭で索敵を行いながら鉱山施設の中を防空レーダーに向けて進む。防空レーダーは事前に情報部が調べた通りに位置に存在していた。


 しかしながら、当然そこには警備も存在する。武装したブラックカイマンのコントラクターたちが、防空レーダーの周りに立っていた。


「連中、油断しているな?」


 しかし、襲撃など起きるはずもないと思っているのか、コントラクターたちは酒を飲み、タバコを吸い、油断しきっていた。


「じゃあ、さくっと片付けてしまおう」


「オーケーだ」


 俺たちは熱光学迷彩を使用しながら警備の背後に回り込む。


「!?」


 それから警備の喉を裂き、腎臓や肝臓をめった刺しにして一瞬で失血死させる。ナイフは静かに相手を殺せるいい手段だ。


 鮮血の生温かい感触を感じながら警備を音もなく片付けると、それから俺たちは防空レーダーに爆薬を設置する。今は爆破しない。ここで爆発が起きれば敵が一気に警戒を高めてしまう。


 俺たちは無線信管を刺した爆薬を設置だけして、次の防空レーダーに向かった。


「しかし、連中どういう販路でレアメタルをさばいているんだろうな?」


「ダンジョン内の鉱物は紛争資源扱いされていない。販路はいくらでもあるだろう」


「だけど、これまで傭兵稼業をやっていた連中がいきなりレアメタルの販路を手に入れられるとは思えんが」


 湊はそう疑問を呈する。


「確かにな。だが、それについて考えてもしょうがない。俺たちは直接この鉱山を叩くことを決定したんだ。相手の販路を妨害して、資金源を断つというのは今は選択肢に入っていない」


「そうだな。無駄なおしゃべりだった」


 湊は軽く肩をすくめて、それからまた黙って先頭を進む。


「そろそろ次の防空レーダーだ」


 俺たちは最後の防空レーダーに接近。


 こちらの警備はさっきの警備より真っ当に任務を果たしている。タバコは吸っているが、酒を飲んでいる雰囲気はない。だが、それでも警備に穴があるのは明白だ。


「静かに片付けるぞ。ここを片付けたらさっさと逃げる」


「あいよ」


 俺たちは再びナイフを手に敵に接近する。熱光学迷彩も起動し、完全に姿を隠した俺と湊は警備の背後に回り込み、その喉を掻き切る。


 悲鳴は上げさせない。手で口を押えて悲鳴を封じ、失血死した警備をゆっくりと地面に下す。それから残りの敵も始末していった。


「爆薬セット」


「爆薬セット完了」


 それからすぐさま俺たちは爆薬を仕掛けて防空レーダーから可能な限り離れる。


本部(HQ)、防空レーダーの爆破準備が整った」


本部(HQ)、了解。ドローンが待機している』


 防空レーダーの爆破と同時に爆撃は実行されることになっていた。すでにドローンは周辺空域上空で待機しており、俺たちが爆破するのを待つばかりだ。


「湊。爆破しろ」


「了解。吹っ飛ばすぞ」


 カチカチと2回トリガーを引くと、防空レーダーがふたつとも吹き飛んだ。赤い炎が立ち上り、遠くからでも確実に防空レーダーが破壊されたのが分かる。


本部(HQ)、防空レーダーを爆破した」


『爆撃を実行する。爆撃評価を実施せよ』


 すぐにドローンが飛来し、航空爆弾を投下して飛び去った。爆弾は鉱山採掘に使われていた巨大重機を完全に破壊し、重機はがらがらと音を立てて崩れていった。


本部(HQ)、重機は完全に破壊された。爆撃の効果は大」


『ご苦労だった、ハングドマン・ワン。撤退せよ』


 それから俺たちは相手に見つからないように姿を隠して撤退を開始。


「湊。敵の動きはどうだ?」


「こっちには来ていないな。静かなもんだ」


 敵は大混乱の様子であり、追っ手が俺たちに向けて放たれることもなかった。


「じゃあ、さっさとずらかるか」


 俺たちは混乱したままの敵を放置し、パワード・リフト機との合流地点を目指す。


「これでウィットロックの求心力は落ちるのかね」


「おそらくは。ブラックカイマンの連中は忠誠心があってウィットロックに従っているわけじゃない。金のためにウィットロックに従っているだけ。つまりは金の切れ目が縁の切れ目だ」


「だといいんだが」


 湊はまだこの作戦の意味を疑っているようだった。俺としては鉱山に打撃を与えて、ブラックカイマンの収入源のひとつを失わせれば、それだけで意味はあると思うのだが。


「どうしてそう疑っているんだ?」


「金が手に入ったならこんなクソみたいなダンジョンにいつまでもとどまる必要はないだろう? なのに連中は出ていく気配はない。ここにしか居場所がないみたいに」


「ふむ。それを言うと俺たちだってここにとどまっている理由は大したものじゃないぞ。このクソの山にいるのは仕事だからってことだけだからな」


「違いない」


 案外、人間というのはどうしようもない理由で行動するのかもしれない。


……………………

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