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アサルト・ウィズ・ワルキューレ

……………………


 ──アサルト・ウィズ・ワルキューレ



 公社によるポータル襲撃作戦にゴーサインが出た。


「乗り込め、乗り込め!」


 俺たちは1秒も無駄にしないように大急ぎでパワード・リフト機に乗り込む。


『作戦開始、作戦開始』


 それからパワード・リフト機は一斉に飛び立ち、4階層に繋がるポータルを目指した。上空援護の無人攻撃ヘリが同伴し、パワード・リフト機は飛行していく。


『ドローンが敵防空網破壊(DEAD)を実施』


 先行していたドローンが対レーダーミサイルを放ったことが知らされる。これで敵の防空コンプレックスはある程度叩かれただろう。


『さあ、殴り込むぞ。全員準備しろ!』


 パワード・リフト機のパイロットがインカムに向けて叫び、俺たちは一斉にポータルを守るブラックカイマンの警備部隊の陣地の中に降下していった。


 敵は混乱しているのか、俺たちに対する攻撃は少なくその僅かな抵抗も無人攻撃ヘリが踏み躙っていく。


「降下だ。ダッチダウン!」


「行くぞ!」


 湊と俺は同時に降下。降下してすぐにブラックカイマンとの戦闘に突入する。


 敵の装甲車は既に無人攻撃ヘリによって撃破されて炎上しており、敵の混乱した歩兵が必死に抵抗を試みているところだった。


「湊。敵の位置をODINにアップロードしてくれ」


「了解だ。アップロード開始」


 湊が探知した敵の位置が全員が使用するODINを経由して共有される。


「いいぞ。これで敵は丸裸だ」


 遮蔽物に隠れている敵の位置も、湊は掴んでいる。これで俺たちは相手からの不意打ちを受けることなく戦える。


 俺たちが圧倒的に優位な状況でポータルの守りは瞬く間に崩れていく。


 俺はときおり熱光学迷彩を使いながら相手の死角に回り込み、ショットガンで敵を仕留めていく。あのドラゴンの血の効果と機械化した四肢ならば多少の無茶をしても、問題はない。


 敵を殺して、殺して、殺す。


 俺たちは暴れ回り、敵は混乱が続いていた。やはりここが襲撃を受けるなどとは思っていなかったようであり、備えていなかった敵は見事に統率を失っていた。俺たちはそれを追撃するようにしてさらに交戦を続ける。


 しかし、敵は降伏する様子がない。


 ダンジョンは無法地帯だからだ。ここにはいかなる戦時国際法も存在せず、捕虜になっても人道的な扱いは期待できない。それがブラックカイマンのコントラクターたちが降伏することを拒んでいる理由だ。


「敵は全滅するまで戦うつもりみたいだぞ」


「ああ。なら、皆殺しにするしかない」


 湊が言い、俺はそう返す。


 激しい交戦が続き、俺たちは確実にブラックカイマンを全滅に追い込んでいく。


 だが、間違いなくこんな襲撃ができるのは今回が最初で最後だ。敵は次からはがっちりと守りを固めてくるだろう。今回は敵が油断していたからこそ成功したのだ。


 しかし、それでも敵に与えた打撃は確かなものである。敵は1個中隊の戦力を喪失したのだ。これはそう簡単に回復できる損害ではない。


 そして、同時にこれによって敵は方針転換を強いられる。公社が狙うのはウィットロックだけではないと示された以上、ブラックカイマンは他の場所についても警備を厳重にせねばならなくなったのだ。


 敵の戦力は分散し、俺たちはよりウィットロックを狙いやすくなる。


 戦争においては常に攻撃して主導権を握れといわれるが、まさに俺たちが今やっているのはそういうことだ。俺たちは攻撃し続け、敵にこちらの動きに従うように強制しているのだから。


「クリア!」


「クリア!」


 そして、ついに公社のオペレーターたちが声を上げ、ブラックカイマンの警備戦力の全滅が報告された。ブラックカイマンのコントラクターたちは死体を晒しており、生き残ったものはひとりもいない。


「撤収だ。パワード・リフト機を要請する」


 俺はODIN経由で脱出のためのパワード・リフト機を要請し、本部(HQ)からの返事を待つ。


本部(HQ)、了解。そちらにパワード・リフト機が向かっている』


 すぐに本部(HQ)からの返事があり、パワード・リフト機の到着予定時刻(ETA)が通知された。


「さて、ブラックカイマンはこれからどう動くかね?」


「さてな。ただ連中はポータルの警備を強化する必要に駆られるはずだ。それは間違いない。そして、相手の戦力は有限である」


「ウィットロックを殺しやすくなるってわけか」


「ああ。今も公社はやつの首を狙っている」


 それからパワード・リフト機が到着し、俺たちはそれに乗り込むと公社の拠点へと帰還していった。今回の作戦はかなりの無茶だったのに犠牲者はゼロであったのが幸いだ。


「戻ったか、佐世保、湊」


「ああ。村瀬、何かあったのか?」


「情報部がウィットロックの最新の居場所を掴んだ。間違いないと言っている」


「ふむ……」


 どうにも妙だな。ポータルが襲われた直後にウィットロックの居場所が分かるとは。


「やめておこう。もっとやつを追い詰めてからの方がいい」


「そうか? まあ、それも選択肢のひとつだな」


 今や主導権は完全に俺たちが握っている。ブラックカイマンは守勢に立たされており、俺たちからの攻撃に応じるしかない状況だ。


 この優位さをすぐには捨てたくない。


「次はどこを狙う?」


「ポータルの警備を再開するために敵は戦力をよそから引き抜くはずだ。そこを襲撃する。情報部にその辺を調べておいてもらってくれ」


「了解だ。調べさせよう」


 俺たちはそう言って村瀬に別れを告げて、公社拠点内で装備を解く。


「やあやあ。諸君、暇になったかね?」


 と、ここで現れたのは篠原だ。やつがマオを連れて姿を見せた。


「まだ戦争は続いている。暇じゃない」


「だが、今はやることがないのだろう? ちょっとばかり調査を手伝ってはくれないかね? 早く3階層の生態系の調査が行いたいのだよ!」


「はあ。何を調べるんだ?」


 篠原が押し切る気満々なのに俺たちは肩を竦めて観念した。


「2階層のブラックマーケットのことは覚えているだろう? そこに出品されていた品の中におそらくは3階層で密漁されただろうクリーチャーがいた。それについて調べようと思うのだよ」


「どんなクリーチャーだ?」


「岩の巨人。ゴーレムだよ」


「ゴーレムか」


 ファンタジーな話は知らないが、ダンジョンにおけるゴーレムは岩などの無機物で構成されたクリーチャーだ。


 連中の縄張りを侵害しなければ襲ってくるようなことはなく、比較的大人しいクリーチャーだといえる。とは言えど、ダンジョン戦役の際には身勝手に縄張りを構築していったため、軍民問わず犠牲者が出ている。忌まわしい化け物だ。


「今さらゴーレムを調査するのか? 特に変わったものがあるクリーチャーではないだろう?」


「忘れたのかね、湊君。ダンジョンの環境は大きく変化しつつあるのだよ。それについて私は調査しているのだ!」


「そうだったな」


 篠原が主張するのに湊が頷く。


「それではいざ調査に出発といこうではないか!」


 かくして篠原の提案で俺たちは強引に環境調査に動員されたのだった。


……………………

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