強襲
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──強襲
俺たちが3階層の拠点に来てしばらくたった時だ。
施設内に警報が鳴り響いた。
「何事だ!?」
拠点にいた公社の情報部の指揮官が状況確認のために叫ぶ。
「襲撃です! 拠点に装甲車数台が突入しました!」
「何だと……。まさかブラックカイマンの連中か?」
指揮官が状況確認を急ぐ中、俺と湊はすぐさま武装して篠原とマオの守りにつく。
「指示をくれ。ここはあんたが指揮官だ」
「待て。今、無人警備システムを作動させている」
俺が指揮官に尋ねるのに指揮官はODINを操作しながらそう言う。
「クソ。かなり重武装の連中が殴り込んできている。こっちの部隊が武装を終えるまで時間を稼いでくれ。エントランスで防衛を!」
「了解だ。篠原、マオ。ここの連中に守ってもらうんだぞ」
俺は篠原とマオにそう言い、湊とともにエントランスに向かう。
「このタイミング、相手は狙っていたと思うか?」
「可能性としてはあり得るな」
湊の言葉に俺はそう返す。
俺たちが着た途端に拠点は襲撃された。これが完全な偶然とは考えづらい。敵は俺たちが到着したのを狙って攻撃を仕掛けてきたとみるべきかもしれなかった。
「撃て、撃て! ここを通らせるな!」
「回り込んでくるぞ! 側面にも火力を叩き込め!」
エントランスは既に戦場になっており、重武装の敵がエントランスを突破しようとして、公社の警備部隊と交戦している。
「応援に来たぞ。指示をくれ」
「助かる! 敵はエントランスに圧力をかけながらも、ここを迂回して施設内に侵入しようとしている! そっちの方を叩いてくれ!」
「了解だ」
俺たちはエントランスを迂回して突破しようとしている敵部隊の迎撃に。
「エントランスを襲っていた連中、装備も練度もなかなかだったな……」
「ああ。不味い相手になりそうだ」
湊が瞬時に状況を分析したのに俺もそう返す。
ここで爆発音が響く。
「佐世保。敵は壁を爆破して侵入してきている。数は1個分隊規模」
「そいつらが迂回突破を図っている連中だな。歓迎してやろう」
湊の生体電気センサーが目標を捉え、俺たちは急いで敵が侵入してる場所を目指す。湊は常に敵を捉え続け、ODIN経由でその情報を俺と共有している。
「いたぞ。接敵!」
爆破した壁から公社施設内に侵入を始めていた敵部隊と俺たちは交戦を開始。
湊は廊下に面する部屋に飛び込んでそこから射撃。俺はその援護を受けてぐいと前に出てサプレッサー付きのショットガンで敵を狙う。
「接敵、接敵!」
「敵は2名だけだ。排除して進むぞ」
襲撃者たちは全員が揃った装備をしており、明らかに単なるテロリストや犯罪組織の類ではなかった。それに連中の動きはかなり統率が取れており、無駄がなく、殺意に満ちている。
「それでもやれないことはない」
俺の機械化された四肢は相手より素早く動くことを可能にしている。俺は素早く相手に肉薄し、散弾を叩き込んだ。顔面に叩き込まれた散弾が襲撃者の頭部を弾き飛ばし、脳漿が飛び散る。
「クソ! こいつ、人間じゃないぞ!」
「エンハンサーか。火力で叩き潰せ!」
俺の動きから俺たちが人間ではないことに気づいた敵が手榴弾を一斉に投擲。
「不味い」
俺は遮蔽物に飛び込むが、やや遅く、手榴弾の爆発を浴びた。
だが──。
「片付いたな。先に──」
そう言っていた襲撃者の指揮官の頭が吹き飛ぶ。
「何が片付いたって?」
俺は生きていた。負傷すらしていない。手榴弾数発の爆発を浴びても、俺の肉体は全くの無傷であった。
「どういうことだ!?」
「クソッタレ! 公社の連中、どんな化け物を生み出しやがった!」
俺は再び敵に肉薄し、散弾を次々に浴びせていく。有効になるのは頭部への攻撃のみで、体のバイタルパートはしっかりとボディアーマーに守られていて効果がない。
「くたばりやがれ」
俺は敵との交戦を継続。
ひとり、またひとりと敵が倒れていく。
「撤退、撤退だ!」
流石に被害が大きすぎると判断したのか、敵は撤退を開始。
「追撃するか?」
「いや。その余裕はないだろう。深追いすべきではない」
湊が尋ねるのに俺はそう返す。
それから敵は完全に撤退し、俺たちは敵が去ったあとの公社施設を見回る。
「負傷が複数出ているが、死者はいない。死んだのは敵だけだ」
「オーケー。敵の正体は間違いなくブラックカイマンの連中か?」
「今、確認中だ」
襲撃者の死体を生体認証し、IDを照合する。
「ああ。やっぱりブラックカイマンの連中だ。連中が襲撃者の正体だ」
「捕虜はいないのか? 襲撃の理由が知りたい」
「あいにく捕虜はいない」
「クソ」
結局、ブラックカイマンの連中が何故襲撃を行ったかの理由は分からないまま、ブラックカイマンが襲撃を仕掛けたという事実だけが残った。
「このまま予定通り、ブラックカイマン相手に首狩りをやるのか? どう考えても敵は首狩りを警戒しているぞ」
「分かっている、湊。だが、やらないことには4階層に向かえない」
ブラックカイマンは公社側からの攻撃を警戒している。俺たちという応援が到着したと貂に襲撃されたことが、それを物語っている。
恐らく今回の首狩りは2階層で行ったメイズトロジー教会相手の首狩りより、ずっと危険なものになるだろう。
それでもやらなければ4階層には向かえないのだ。
「入念な準備が必要だ。それからここの警備の強化も」
「問題は山積みってわけか」
「ダンジョンってのはいつだってそうだろう」
クソッタレなダンジョンはいつだってトラブルと問題だらけ。平穏や順調な進行とは真逆の場所である。
それから俺たちは次の襲撃に警戒し、公社施設の警備を改善することに。
リモートタレットを増設し、ゲートを突破不可能なように強化し、破壊された無人警備システムを修理する。それからドローンによる周辺の警戒も強化し、人間によるパトロールの数も増やした。
今回の襲撃を受けて3階層には増援が派遣され、それらの警備要員も配置に着き、次はそう簡単に突破されないだろう環境が整えられた。
「これで大丈夫かね?」
「分からん。だが、できることはやっただろう」
「そうだな……」
「マオたちのことが心配か?」
湊が浮かない顔をしているのに俺はそう尋ねる。
「もちろん。ここが襲撃されて、マオや篠原が死ぬのは……あまり気分がよくない」
「ああ。俺もそうだ」
俺や湊は戦うすべを知り、戦うことで生きている。だから戦いの中で死ぬのは、ある意味では仕方のないことだ。
だが、篠原やマオはそうではない。やつらが戦いで死ぬのは理不尽だ。
「早急にブラックカイマンの首を刎ね飛ばすしかない」
俺は湊にそう言ったのだった。
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