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マーケット・テイクダウン

……………………


 ──マーケット・テイクダウン



 いよいよブラックマーケットを強襲するときが訪れた。


 俺と湊の他に動員された戦力は1個小隊。


「よろしく頼むぞ、ブギーマン」


「ブギーマンはやめろ」


 1個小隊30名の公社部隊は全員が報復防止のためのバラクラバを身に着け、揃えられた装備をしている。


「さて、作戦だ。俺たちはこの地点にあるブラックマーケットを強襲する」


 俺たちはこれまでの作戦で確認されていたブラックマーケットの位置を確認。


「情報部によればブラックマーケットの通信が活発になっているのは19時以降。よってその時間帯に俺たちはブラックマーケットに突入する」


「敵の警備の規模は?」


「不明だ。ただ防空コンプレックスなどは確認されていない」


「情報不足か……」


 誰もが懸念する情報不足。


 これが今後の展開に悪影響を及ぼすということは確定はしていないが、起こりえることは必ず起きるともいう。警戒する必要はあるだろう。


「俺たちは屋上から突入。上空援護として無人攻撃ヘリ2機が当たる。さらに公社が緊急即応部隊(QRF)を待機させているから、万が一の場合は連中に来てもらう」


「了解だ」


「では、時間までに準備をすませろ」


 俺たちは武装や他の装備を整えて、公社の拠点にあるヘリポートに集まる。ヘリポートにはパワード・リフト機が3機と無人攻撃ヘリ2機が待機していた。


「派手にかまして、太平洋保安公司が出張ってくる前に片付けよう」


「オーケー。ブラックマーケットをぶっ潰すぞ」


 俺たちはパワード・リフト機に乗り込み、それからブラックマーケットを目指す。パワード・リフト機は僅かなエンジン音のみを響かせて、真っすぐブラックマーケットのある大井のテリトリーに進んだ。


「見えてきたぞ」


 俺は巨大な倉庫を視認した。あの中にブラックマーケットがある。


「無人攻撃ヘリが前に出る。屋上をぶち破るぞ」


 それからパワード・リフト機の上空援護についている無人攻撃ヘリ2機が前方に出て、ロケット弾を倉庫の屋上に向けて叩き込んだ。倉庫の屋上が爆発し、そこに大穴が開かれるのが分かった。


「さあ、突入だ!」


 俺たちを乗せたパワード・リフト機はその穴の上に向けて飛行し、俺たちはその穴の中に向けてファストロープ降下で素早く降下する。


 ここで俺たちは初めて倉庫内を見ることになった。


 倉庫内にはいくつもの檻があり、その中にクリーチャーたちが収容されている。そして、その檻の周りには武装した警備員たち。そんな光景がこの巨大な倉庫の中にいくつもいるのだった。


「武装した警備員を最優先で排除」


「了解」


 敵にしてみれば突然突入してきた俺たちは、一斉に武装警備員に向けて発砲。銃弾が次々に敵の警備員を撃ち抜き、血の海に沈める。


「て、敵襲だ!」


「応戦しろ!」


 ワンテンポずれて敵が応戦の構えを見せた。遮蔽物に飛び込み、装備している拳銃や自動小銃を発砲する。


「敵がお出迎えモードだ」


「叩きのめせ」


 俺はぐいと前に出て武装警備員たちを狙う。


 遮蔽物に隠れていた武装警備員に向けて手榴弾を投擲し、遮蔽物ごと粉砕。湊もわずかに遮蔽物から身を乗り出した連中を撃ち抜いて行く。


 幸いなことにここに子供兵はいない。いるのはちゃんとした大人の兵士だ。ここを警備する計画を立てた人間は、そこまで道を踏み外していないのだろう。


 そんな警備責任者に感謝しながらも俺たちは警備の制圧を継続。


「た、助けてくれ!」


「撃つな、撃つな!」


 そう口々に叫ぶのはブラックマーケットにやってきた客の方であり、突然乱入してきた俺たちに命乞いをしている。


「両手を頭の上に載せて、地面に伏せていろ!」


 俺たちは客に向けてそう叫び、客は指示に従う。


「武装警備員の数が減ってきた」


「殲滅するまで油断するな」


 俺たちは確実に警備を制圧しつつあり、ブラックマーケットを制圧しつつあった。


 しかし、物事はそう簡単にはいかない。


「クソ。不味いぞ。連中、クリーチャーの檻を開けやがった」


 ブラックマーケットの誰が判断したかは不明だが、獰猛なクリーチャーが収められていた檻が次々に開き、檻の中からクリーチャーが飛び出してくる。


「各自、自分を襲ってくる連中を最優先で排除しろ!」


 俺はそう命令を下す。こんな混戦状態では自衛が最優先事項となる。


 俺たちは自分を狙ってくるクリーチャーや武装警備員を最優先で排除し、この混戦の中での自衛を図る。


 幸いなことにクリーチャーはしつけられているわけでもなく、俺たちだけを襲わずに客や武装警備員も襲撃していた。生きたままクリーチャーに食われる人間の悲鳴が響き、場が一層混乱する。


「佐世保。クソ不味いのが1体、存在している」


「何だ、湊?」


「ドラゴンだ」


 湊がそういう視線の先には巨大な檻に収容されたドラゴンの姿が。


「マジかよ。こいつは最悪だぞ、クソッタレ!」


 俺と湊が視線を向ける中、ドラゴンが檻から解き放たれた。


「俺があいつを最優先で排除する。湊、援護してくれ」


「任せろ!」


 俺は解き放たれたドラゴンに向けて進み、湊が後方から俺を援護。


 ドラゴンは以前相手をした巨大なものではなく、どちらかと言えば小型のそれ。緑色の鱗をしており、俺たちの方を威嚇するように羽を広げながら雄たけびを上げていた。


 俺たちは一応太平洋保安公司と交戦することも考えて、AT4携行対戦車ロケットを持ってきている。俺は可能な限りドラゴンに肉薄して、これを叩き込むつもりだ。


 それにある意味では俺は状況を楽観していた。ブラックマーケットで捕獲できて、これまで飼育できていたクリーチャーならば、前に大戦争を繰り広げたようなドラゴンがいるはずもないのだ。


 ドラゴンは雄たけびとともに炎を口の中に渦巻かせて、火炎放射を放つ。ブラックマーケットの他のクリーチャーが焼かれ、ブラックマーケットの客も巻き込まれるが、俺は素早くそれを躱した。


 しかし、炎の熱気だけは間近に感じられる距離だ。


「喰らいやがれ」


 俺は可能な限り近接し、ドラゴンに向けてAT4を発射。ドラゴンの顔面に叩き込まれた携行対戦車ロケット弾はドラゴンの頭を吹き飛ばし、致命傷を与えた。


「オーケー。片付いた」


「流石に慣れたものだな」


 デフレクターシールドが存在しないならばただの獣だ。獣は殺せる。


「ここはほぼ制圧した。次だ」


「ああ。写真を取っておけ。取引されているクリーチャーと客、武装警備員の写真だ」


「了解」


 俺たちはブラックマーケットの実情を把握しておくために、ブラックマーケット内の写真を取っていく。特に客の写真はここで聴取する暇がない以上、ここでしっかりと把握しておかなければならない。


「次は奥の方だな。警戒して進め」


「了解」


 俺たちはブラックマーケットが開かれている倉庫の奥の方に向けて進む。


 そこには──。


「これは……」


 そこにある檻の中にいたのは、マオと同じクリーチャーだった。


……………………

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