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ポータルの向こう側

……………………


 ──ポータルの向こう側



 俺たちがマオが通過したらしいポータルを発見したという報告は、すぐさま公社に上げられた。


 それからポータルの調査が行われることになり、無人地上車両(UGV)を含めた調査のための資材がヘリで運ばれてきた。


「これが新しく発見されたポータルか」


 現場にやってきた村瀬が興味深そうにポータルを眺める。


「ああ。マオはここを通って仮想から来た。問題はこのポータルがどこに繋がっているかだ。それを調べなければ」


「そうだな。調査の準備はできている」


 それから村瀬が指揮を執り、各種調査機材を搭載した無人地上車両(UGV)がポータルに向けて進んでいく。


 無人地上車両(UGV)はポータルの向こう側に消え、情報が送られてくる。


「オーケー。ポータルの向こう側が何階層かは分かった。2階層だ」


 無人地上車両(UGV)は2階層で公社が流している電波を受信していた。


「位置は?」


「今、特定している。待て」


 それから電波を利用した三角測量で無人地上車両(UGV)の位置を把握する。


「出たぞ。この地点だ」


「ここは……。大井の縄張りじゃないか?」


 無人地上車両(UGV)がいたのは、大井が保有を宣言している場所だった。無人地上車両(UGV)はそこで電波を受信している。


「しかし、ここには大井の何があったっけ?」


「分からん。連中の施設があるということぐらいしか」


「ふむ」


 湊は村瀬の言葉に首を傾げる。


「このポータルを抜けて、いきなり向こう側に行くのは無謀そうだ。既にあるポータルを利用して、そこからこのポータルが繋がっている位置を目指そう。どうだ?」


「悪くないアイディアだな、佐世保。そうしよう」


 俺の提案に村瀬と湊が同意する。


『諸君! 予定通り2階層の調査も同時に進めようではないか! どうせ2階層に行くのだし、手間は省けるだろう?』


「分かった、分かった、篠原。そうしよう」


 篠原がスパイダーから主張するのに俺たちは頷く。


「では、すぐに準備だ。まずは2階層にある公社の拠点に向かい、そこで調査準備を整えたら新しく発見されたポータルの出入り口の確認と、篠原に依頼された2階層の調査を行うぞ」


「ああ。了解だ、佐世保」


 俺は湊にそう言い、湊も頷いた。


 2階層にも公社は拠点を持っており、そこが調査拠点となるだろう。


「では、公社に戻ろう」


 俺たちは一度公社に戻り、そこで準備を整えることにした。


「2階層に向かうなら拠点への物資輸送の護衛(エスコート)を頼めるか? 2階層にそろそろ物資を送らなきゃならんからな」


 村瀬は準備をしている俺たちにそう求める。


「ああ。構わないぞ」


「お安い御用だ」


 俺と湊はそれを快諾。


「それと理事会から早く6階層の有無を確認しろと催促されている。秋葉理事長からも要請が出ているところだ」


「まずは2階層だ。5階層に行くだけでもリスクがあるのだから、確実にダンジョンの変化を見極めておきたい」


「分かっている。理事会にもそう伝えておいた」


 ダンジョンが変化している状態で無為無策に6階層を目指すのは、大量の死人が出るのを許容するようなものである。


「ところで、2階層にもマオを連れていくのか?」


 ここで湊が俺にそう尋ねる。


「まだ決めていない。篠原から何か提案があるとは思うが」


「そうか。まあ、マオ絡みは篠原が管理している任務ではあるしな」


 篠原はマオが6階層から来たと考えている。その根拠はこれまでのクリーチャーの中にコミュニケーションを図る友好的な種族がいなかったからだ。


 それが当たりかどうかはまだ分からない。だが、マオの存在は今も6階層が生まれたことをうかがわせている。


「よし。準備完了だ」


「公社の補給車両が出るのに合わせて出発だ」


 篠原からは特にマオを連れていくようにとの指示もなく、俺と湊は準備した装甲車で公社の補給車両を待った。


 それから暫くして大型トラック4両ほどの車列(コンボイ)が現れ、戦闘車両の運転席の男が俺たちに手を振る。


「あんたらが護衛(エスコート)か? よろしく頼む」


「ああ。こっちはいつでもいいぞ」


「なら、早速で悪いが出発だ」


 車列(コンボイ)を指揮する男にそう言われて俺たちは出発することに。


 俺たちの装甲車は先頭に立って移動し、それから補給車両が続く。


 1階層を西に向かって進み続けると、2階層に繋がるポータルがある。


 2階層に続くポータルは、マオが潜ったものより大規模だ。ダンジョンの入り口ほどはある大きさで、大型航空機も通過可能。既に企業によって鉄道路線と舗装された道路が整備されており、そこを企業の車両が行き来している。


「さあ、2階層へ進出だ」


 湊がそう言い、俺たちはポータルを潜る。


 ポータルを潜った先は、満天の星空が輝く場所だった。


 気温がむっとする暑さになり、木々も1階層とはことなり南方のものに似たものが生い茂っている。そんな場所に俺たちは出た。


「いつ来ても不快指数が高いな、ここは」


「文句は言えん」


 湿気と高温が装甲車の中にいても伝わるぐらいの2階層を俺たちは道なりに走る。


 道なりに走って数時間ほどで公社の2階における拠点に到着した。


 公社の拠点はやはり厳重に防護された施設であり、ここでは地対空ミサイル(SAM)すらも配備されていた。


 俺たちが公社の拠点に近づくと、すぐにドローンが俺たちを確認しに来た。


 ドローンのスキャナーがID認証を行い、俺たちが無事に友軍だと識別されると拠点のゲートがゆっくりと開いていった。


 そして俺たちの車両が公社拠点に入り、補給物資を乗せた車両が続く。


「よう! 補給が届くのを楽しみにしてたぜ」


 2階層の拠点にいる公社の職員がそう言ってトラックから物資を降ろし始める。


「で、あんたらはどうしたんだ、佐世保、湊?」


「2階層の偵察だ。聞いていると思うが、1階層にはドラゴンが出た」


「ああ。あの件か。状況を説明しよう。来てくれ」


 俺たちは2階層の拠点を指揮する職員から説明を受けることに。


「現在、2階層では俺たち公社、企業、そしてカルトとの間で小規模な戦闘が断続的に続ている。戦闘地域になっているのは、この赤いエリアだ」


「ふむ。カルトってのは?」


 指揮官の言葉に湊が尋ねる。


「カルトはカルトだ。ダンジョンを崇拝している連中。前にいただろう。『ダンジョンは神が与えた楽園になる場所だ』って主張しているいかれた連中だ」


「ああ。あの連中か。そいつら、ダンジョンで山ほど死人を出してから撤退したんじゃなかったのか?」


「いや。残った連中がカルテルなどの犯罪組織と協力して武器を手に入れて武装し、今や2階層における最大規模の武装勢力になっている」


「そいつはまた」


「このカルトをどうにかしないと2階層を偵察するのは困難だろう。それに最近では企業の連中も公社を攻撃してきている」


「企業が攻撃してくることに心当たりは?」


「ない。だが、連中は公社に見られると不味いものを扱っている感じではある。地図のこの地点にはドローンすらも立ち入れないほど、厳重な警備が敷かれていた」


 そう言って指揮官が指さすのは、1階層で俺たちが見つけたポータルの出口がある場所であった。


……………………

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