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氷の槍と風の爪

 ゴブリンの気配が近づく。雪の塚の向こうから、低い唸り声とドスドスした足音が響いてきた。私は息を呑んで、スノーの小さな手にすがる。


 「ゼロ、準備しろ。俺が援護するから」


 スノーが私の額から離れ、羽を広げて雪の塚の上へ飛ぶ。風が冷たくて、しっぽが下がったまま動かない。鼻をくんくんすると、土と腐った匂いが強くなった。雪の向こうに緑の影がはっきり見える。

 ボロ布をまとったゴブリンが、棍棒を手にこっちを睨んでる。


 「グルァッ!」


 ゴブリンが唸って、棍棒を振り上げた。私はビクッと震えて、あんよが後ずさりそうになる。でも、スノーの声が鋭く響いた。


 「ゼロ、『アイススピア』だ! MPは2発分しかない、慎重に!」


 スノーがゴブリンの頭上を飛び回り


 「ブリザードクロウ!」


 と叫ぶ。冷たい風と爪のような突風がゴブリンの目を切りつけた。ゴブリンが顔を押さえてよろける。私は目を閉じて『アイススピア』を唱える。MPが50減り、目の前に氷の槍が浮かんだ。震えるあんよを踏ん張って放つ

 ――ズドン! 雪に刺さって外れた。


 「うぅ、やっちゃった……!」

 「ゼロ、慌てるな! 俺が動きを止める!」


 スノーが再び「ブリザードクロウ」を放ち、凍える突風がゴブリンの足元を襲う。ゴブリンが膝をつき、棍棒を振り回す隙ができた。

 私は息を整えて、最後のMP50で『アイススピア』を唱える。氷の槍がゴブリンの胸に刺さり、緑の血が飛び散った。


  「グルォォ……」


 ゴブリンが雪に倒れ、動かなくなった。私は息が上がって、あんよがガクガクしてる。MPがゼロになって、頭がクラクラする。


 「スノー、終わった……?」


 スノーが私の頭に戻り、羽で額をそっと撫でてくれた。


 「終わったよ、ゼロ。俺のMP200程度あったが、結構使っちまった。よくやったな」


 スノーの声が少し疲れてる。私は鼻をくすんと鳴らし、スノーに顔を寄せた。


 「スノーのブリザードクロウ、すごかったよ……」

 「お前だって、最後の槍が決めたんだぜ」

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