ズルっと一歩
雪の絨毯を踏みながら、私はスノーと一緒に歩いてた。狩猟って、お肉を取ること。頭では分かってるけど、あんよが少し震える。風が冷たくて、鼻をくんくんしても“雪の葉”の匂いしか感じない。
「ゼロ、雪山には隠れてる生き物がいるぜ。『野生の勘』で探してみ」
スノーの声に頷いて、深呼吸。『野生の勘』を唱えると、全身がほんのり熱くなり、鼻がピクピク動く。雪の匂いに混じって、かすかに湿った生き物の気配がした。
視界の端で、雪の盛りあがりの近くに半透明な影がチラッと動く。雪トカゲだ! 体が雪に溶け込んでて、尻尾だけがキラッと光ってる。
「スノー、あれだ……!」
声が小さくなる。心臓がドキドキして、しっぽがピンと上がったまま固まる。
「よし、ゼロ。ゆっくり近づけ。慌てると見失うぞ」
スノーが頭の上で羽を静かに動かす。私は息を整えて、雪をそっと踏みしめた。トカゲは動きが遅いけど、じわじわ雪に潜ろうとしてる。もう少しだ。
一歩、また一歩。マズルを低くして、飛びかかる瞬間――
ズルッ!
雪に足を取られて転がっちゃった。顔を上げると、雪トカゲはスッと雪に潜って消えてた。しっぽだけがチラッと見えて、すぐに何もなくなった。
「うぅ……逃げられちゃった」
雪に顔を埋めたまま、しょんぼり呟く。しっぽがぺたんと下がって、寒さが急に染みてきた。
「おいおい、ゼロ。初めてにしては上出来だぜ」
スノーが頭から飛び降りて、私のマズルの前で羽をパタパタさせる。ちょっと笑ってるみたい。
「でも、私、失敗しちゃって……お肉、取れなかったよ」
鼻をくすんと鳴らすと、スノーが私の額に小さな手をぽんと置いた。
「なぁ、ゼロ。雪トカゲは雪に隠れるのが得意なんだ。俺だって最初は捕まえられなかったぜ。次はもっとうまくやれるさ。一緒に練習しよう」
「……スノーも失敗したことあるの?」
「当たり前だ! 神の使いだって完璧じゃないって」
スノーが胸を張って笑う。私は顔を上げて、しっぽが少しだけ動き出した。スノーの小さな手が冷たい額を温めてくれて、なんだか心までぽかぽかしてきた。
「うん、次は捕まえるよ。一緒にね」
「おうよ! 次はお肉ゲットだな」
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