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平原の危機

 洞窟の温泉で温まった次の日、僕とスノーは一緒に雪の絨毯を眺めてた。レベル5になって、子犬から中型犬に成長した体が、なんだか頼もしく感じる。


 「なぁ、ゼロ。お前、ほんと強くなったな」


 スノーが頭の上で羽をパタパタさせて言う。僕はしっぽをゆらっと振った。


 「スノーのおかげだよ。でも、この雪山だけでいいのかな?」


 「だな。レベル上げもいいけど、他の種族と出会うのも悪くねぇ。そろそろ山を降りてみるか?」


 スノーの提案に、僕は目を輝かせて頷いた。雪山でずっと暮らすより、外の世界を見てみたい。BL好きの記憶がチラッと頭をよぎるけど、それは心にしまっておこう。


 「よし、決まりだね。スノー、一緒に降りよう」


 「おうよ!」


 僕らは洞窟を出て、雪山を降り始めた。雪の斜面をスノウステップで軽やかに進み、冷たい風を切りながら下る。2日かけて、山のふもとにたどり着いた。そこはまだ雪の絨毯が残る平原で、遠くに緑の影が見える。


 「スノー、あれは何だろ?」


 鼻をくんくんすると、土と血の匂いが混じってた。視界の先に、ゴブリン2匹が唸ってる。その向こうに、高身長の人間の男性が立ってた。鋭い目つきと少し無精ひげの男前な顔、革のコートが風に揺れてる。左腕は肩から下がなく、包帯で隠すように巻かれてて、右手には錆びた斧を握ってる。でも、片足から血が滲んでて、膝をつきそうになりながら小さな女の子を背に守ってる。


 女の子は5歳くらいで、ボロボロの毛布を肩に巻いて震えてた。茶色の髪が乱れて顔に張り付き、大きな目が涙で濡れてる。「お兄ちゃん、怖いよ……」と小さな声で呟いて、男性のコートをぎゅっと掴んでる。男性は歯を食いしばり、斧を振ってゴブリンを牽制するけど、足が震えてて限界が近いみたいだ。


 「グルァッ!」


 ゴブリンが棍棒を振り上げた瞬間、僕は目を細めた。この男前、片腕でも諦めない姿に、BL好きの心がちょっと疼く。――いや、今は助ける時だ!


 「スノー、やばいよ!」


 「ゼロ、行くぜ!」


 僕とスノーは状況を理解して、ゴブリンの前に飛び出した。僕は『獣の本能』を唱え、全身が熱くなる。スノーが羽を広げて僕の頭から離れ、ゴブリンの目を狙う準備をしてる。男性と目が合った瞬間、彼の鋭い視線に心がドキッとした。

 ――いやいや、集中しろ、僕!

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