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その背後にある者

 そのお互いが見えない、暗い世界で二人は言葉を交わしていた。

 喋る蜘蛛、カンダタと大きく、慈愛に満ちた声の男性の声である。

 「死んでしまうとは、やり直しですかね」

 カンダタは独り言をつぶやいた。もう一人はカンダタの独り言に答えるように口を開いた 。

 「彼は一度世界に触れている。記憶も性格も代わり始めている」

 「そうですかね。記憶は繋がっていますが、クズっぷりは変わっていないですよ」

 「わたしには、彼の変化が見えますよ」

 「もともと、あんな奴で良かったんですかね。私だって人のことをいえた義理じゃないですが、あの男程ではなかったですよ。8回前は、幼女誘拐ですよ」

 「そうですね。あのときは私も信じられなかったですからね」

 そう言うと、闇の中で静かに笑った。だがそれは、カンダタの蜘蛛の能力には丸分かりだった。



 同じタイミングで別の薄暗い部屋に三人の人間が集まっていた。

 三人に序列が有るのか、一人の青年の男性を挟むように、体格の良い中年の男性が右側、背の高い女性が左側に立っていた。

 「強過ぎる毒が失敗の基とは皮肉なことですね」

 中央の青年が可笑しそうに笑った。

 中年の笑顔もなく口を開いた。

 「それでどうするのですか」

 青年は笑顔のまま中年の男に視線向け、口を開いた。

 「強過ぎなら、毒性を弱めれば良いんですよ。タイプαをタイプβするだけです」

 それまで静かにしていたそれまで沈黙を守っていた女性が口を開いた。

 他の二人とは違い、容姿に華やかさがありそれだけで人を引きつけるものがある。

 「分かりました。早速、菌の調整に入ります」

 そう言うと女性は部屋を出て行った。部屋を出る一瞬現れたのは、桂の同棲相手の香であった。

 中年の男は薄暗い部屋でも分かるように顔をしかめた。

 「尊師よ相手があのお方とは言え、タケルや桂に任せて宜しいのでしょうか?やはり尊師自らが救済に出られては」

 尊師と呼ばれた青年癖のある笑いを見せると。

 「あのお方のこともあるが、主人公は最後に登場するものだよ」

 そう言うと、尊師も部屋を後にした。

残された中年の男の表情は、二人が出て行ったのでよりはっきりしているので、苦虫をつぶしたのがはっきり見て取れた。

 「なぜだ、私と私の部隊に任せていただければ、このような手間をかけなくても済んだはずなのに」

 そう言うと、部屋を後にした。


 誰も居なくなった部屋にどこからともなく気配が現れた。カンダタと一緒にいて、三人があのお方と呼んでいた男である。

 「彼には、私が聞いていたこともバレていましたね」

 そう言うと、気配も消え、誰もいなくなった。


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