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【書籍化、コミカライズ】王子様などいりません! ~脇役の金持ち悪女に転生していたので、今世では贅沢三昧に過ごします~   作者: 別所 燈


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ローザはどうしても隠し財産が欲しい!

 デートには最高の日より、吹き抜ける風は強すぎず、さわやかだ。


 ローザとイーサンは午前中、植物園をそぞろ歩いた。


 温室へ行くと南国の色鮮やかな植物がたくさんあり、子供のころより物を知っている分、ずっと楽しめた。


 今思うと小さなころは華やかなドレスや綺麗な花にしか興味がなかった気がする。


 前世を思い出したローザは好奇心でいっぱいだった。


 その後は植物園の中にある大きな池に向かいボートに乗った。


 ボートに乗る時は少し怖かったが、イーサンがしっかりとエスコートしてくれた。


 水の上をすべるようにボートは進んでいく。


「イーサン様はボートを漕ぐのが上手なのですね」

「学生時代にボート競技に参加したことがある」


「そういば、兄も言っていました」

 ローザはそのころはアレックスに夢中だったので、ちっとも興味がなかった。


「水の上って気持ちがいいのですね」

 池の周りには葉が生い茂り、水辺に花も咲いている。遠くに見える遊歩道には人々がゆったりと歩いていた。


 なにより、パシャリとなる水音と、水を含んだ風が心地いい。

「また来るかい?」

 ローザは結構この場所が気に入っていた。


「こうやってのんびりするのもいいですね。最近では家も外も忙しくて」

「家の方は使用人の件かい?」

 イーサンの言葉にローザは頷く。


「はい、人を育てるのって大変ですね」

「君は店でもやっていたではないか?」


「従業員を育てるのとはなんとなく違います。使用人は一緒に暮らしているので、もっと生活に密着しているというか」


「まあ、今度は店に妨害が入らないよう気をつけるといい」

 イーサンの忠告にローザは焦りを感じる。


「やめてくださいよ! イーサン様が言うと当たるから怖いんですよ!」

 露骨に嫌な顔をするローザを見て、イーサンが笑った。


「君なら、何があっても大丈夫だよ」

 なんだか失礼な物言いにも聞こえたが、ローザは聞き流すことにした。


「そうだわ。今日イーサン様にプレゼントがあるんです」

「私に?」


「はい、ぜひ」

 そういって、ローザはポーチの中から小さな四角い箱を取り出す。彼がオールを横に置いたので、ローザは箱を手渡した。


「開けてもいいかい?」

「もちろんです。気に入っていただけるとよいのですが」

 ローザとしては、最高級の物を用意している。


「これは、ずいぶんと洒落たカフスだね」

「はい、閣下の瞳と髪の色に合わせてみました」


 プラチナの台に紫水晶がはめ込まれている。王都一の宝飾店でオーダーした一点ものだ。


「ありがとう。気を使わせてしまったみたいだね」

 イーサンは少しばかり驚いたような表情を浮かべている。


「そんなことはありません。貰ってばかりではよくないですから」

「君は本当に変わっているな」

 イーサンがあきれ半分の笑みを漏らす。


「ん? 微妙ですが、誉め言葉として受け取っておきますね」


「もちろん誉め言葉だ。本当にローザは不思議な女性だね」


 イーサンはカフスをたいそう気に入ってくれたようで、この世のものとは思えないほど綺麗な笑みを見せた。


 ローザはその美しさにくらっとして危うく池に落ちそうになる。


「ローザ、どうした? 大丈夫か?」

「はい! 何でもないです!」

 ローザはよろめいた自分に喝を入れる。


「それで、ですね。イーサン様にご相談がありまして」

「その様子だと、色っぽい話ではないな」

 イーサンが軽く眉根を寄せた。


「ご安心をイーサン様の美貌に見惚れることはあっても、懸想することはございません」

 ローザが真剣な面持ちで答えると、なぜかイーサンに大爆笑された。


 しかし、だからと言ってローザは気分を害している場合ではない。

 これから大切な話をしなければならないのだから。


「イーサン様、実は大事なお願いがあるのです」


「秒で断りたい、気分だな」


 イーサンが無表情でつれないことを言うが、それで諦めるローザではなない。


「もちろん、対価はお支払いいたします」

「もしかして、さっきのカフスかな」


「違います。あれはいつもドレスや宝飾品をいただいているお礼です」


「君がそこらへんの線引きがきっちりしている人だというのはわかったよ。それで相談とは?」


 イーサンはのんびりとボートを漕いでいて、ローザを警戒している様子はない。


「私、今金の延べ棒を集めております」

「は?」

 意表をつかれたかのように、イーサンが目を見開いた。


「それをこの間ご紹介いただいた南の島にお預けしたいと思いまして」


「君、その話本気で考えていたの?」


「もちろんです! クロイツァー家の使用人が大量にやめた件もありますし、世の中油断も隙もありません。いかにクロイツァー家といえども内部に敵がいたら、とんでもないことになります」


「まあ、そうだな。古参の使用人たちが辞めたとなれば不安はあるだろう」


 イーサンの同意を得たりと言わんばかりに、ローザは早口でまくし立てる。


「そうなんです。それで、どうしても王国の手の届かないところに財産をためておきたいんです。父は別として、兄も母もいかにも貴族という感じなので、家が没落したらどうなってしまうことやら。とりあえず、他国に避難できるようにしておきたいのです」


 ローザは揺れるボートの中で前のめりに力説した。


 




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