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【書籍化、コミカライズ】王子様などいりません! ~脇役の金持ち悪女に転生していたので、今世では贅沢三昧に過ごします~   作者: 別所 燈


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え? なんでいるの?

 ローザはフィルバート共に夜会のホストに挨拶をすませると後は自由の身だ。


「では、ローザ。いい夜を、僕は父の代わりに紳士の交流があるから、お前は適当に切り上げて帰っていいぞ。今日はありがとう」


 フィルバートの言う紳士の交流とは商談である


「ええ、なんだか疲れましたわ。私は、今夜は淑女の交流なしで帰ります」


「驚いたな。お前、今日はバスボムを売りつけないのか?」


「お兄様、お言葉には、お気を付けくださいませ! 私は決して売りつけているわけではありません。皆さんが喜んでお買い求めになるだけです!」


 ローザが怒りの形相で眦を吊り上げると、フィルバートはそそくさと去っていった。


 クロイツァー家ならでは会話ではある。



 この夜会には王族が誰も参加していないと聞いているので、ローザに緊張感はない。


 適当に何かつまんで庭園でも散歩して帰ろうと思う。


 実はローザは夜会や茶会で、他家の庭園を見るのが好きだ。

 前世の記憶があるせいか、実に優雅な気持ちに浸れる。


 軽食コーナーで自ら焼き菓子を選んでいると声をかけられた。


「ローザ様、お久しぶりです」


 振り返ると、上等なドレスに身を包んだエレンが立っていた。


「まあ、エレン様。ごきげんよう」

 敵意はないとばかりに、ローザはにっこりと微笑んで返事をした。


(ああ、疲れるわ。この子も来ていたのね。なんで声をかけてくるのかしら? スルーしてくんない?)


「ローザ様、今日も素敵なドレスですわね」

「ありがとう。あなたもとても素敵よ」

 そこでローザは違和感を覚えた。

 いつのもエレンはもう少しおどおどしているのに、今日は堂々としている。


 そして、何よりドレスと宝飾品が目を引いた。


 いつもと違い、エレンの身に着けているものすべてが、オーダーメイドの一級品とわかる。


 ルビーの髪飾りは凝った細工がされていて、エレンのストロベリーブロンドの髪によく似合っている。


 以前父が、モロー家はクロイツァー家に借金があると言っていた。


(これは、殿下からのプレゼント? 随分とお金がかかっているわね。やっぱり、エレンに本気で惚れているのね)


 気にはなったが褒めるにとどめておいて、ローザは何も聞かないことにした。


 エレンとはとにかく関わり合いになりあいになりたくなかった。


「ローザ様、実は私バスボムの店に興味がありまして」

「まあ、そうですの?」


 いくら商売とはいえ、エレンに店まで来てもらいたくはない。


「ええ、飽きたら売ってくれませんか?」

「え?」


 ローザは、一瞬エレンが何を言っているのかわからなかった。


「店をです。ほら、ローザ様は趣味でお店やっているのでしょう? うらやましいですわ。だから、飽きたら売ってほしいのです」


 にっこり笑うエレンが信じられなかった。


「はあ? エレン様が何をおっしゃっているのか、さっぱりわかりませんわ?」


 するとエレンはローザの剣幕に怯えたような顔をする。


「ごめんなさい。私、貴族の生活に慣れなくて」


「それは貴族の生活云々ではなく、軽々しく言ってよいことではありませんわ」


 ローザからしてみれば手塩にかけて一から作った店であるし、売り上げは今後没落予定のクロイツァー家の生命線になるかもしれないのだ。


 確かにローザは商売を楽しんでいるが、何の苦労もないと思っているのだろうか。


 なによりも従業員には心を砕いているつもりだ。


 エレンが泣き出しそうな顔で後ずさりする。


 これではローザがいじめているようだ。


「どうしたんだ。モロー嬢?」


 そこへやって来たのはアレックスだった。

 ローザは驚きに目を見開く。


 今日は、王族は招待されていないと聞いていたのに、なぜ彼がこの場にいるのか不思議だった。

(え? なにお忍びできて、エレンと密会するってこと?)


「アレックス様」


 助けが来たとばかりに、エレンがアレックスに縋りつく。


 ところがアレックスがやんわりとその手を外した。

 ローザはその様子を唖然としてみた。

 

エレンは瞳を陰らせ「すみません。アレックス殿下」と言いかえた。


 ローザの怒りはすっと冷めてく。


(これから、くだらない茶番でも始まるのかしら? 絶対に挑発にはのらないからね) 


 ローザが臨戦態勢に入ったとその時、柔らかな男性の声が飛び込んできた。


「アレックス殿下、取り込み中かな?」

「叔父上、いらっしゃっていたんですね」

 驚いたようにアレックスが、イーサンを見る。


 叔父上とは言ってもイーサンはアレックスより、二歳上なだけだが。


「ああ、アレックス殿下はひょっとしてお忍びかな?」

 イーサンはアレックスを見て微笑んだ。


「まあそんなところです」

「ちょっとクロイツァー嬢を借りてもいいかな?」

「いえ、それがクロイツァー嬢とモロー嬢が揉めていたようなので」

 アレックスがイーサンにそう説明する。


 そこへ、すかさずエレンが震える声で訴える。


「違います。私がローザ様に失礼なことを言ってしまって、ローザ様のご機嫌を損ねてしまったんです」


(始まったよ、お約束が。前世もいたよね? 被害者ムーブする女子)


 ローザは心の中で突っ込んだ。

 

 可憐で愛らしいエレンを見ていると勝敗は明らかである。


(まさかヒロインなのに性格悪いとか?)


 ローザの中で、エレン性格悪い説が浮上してきた。


 それか、以前のローザの行いを根に持っているのか……。


(うん、根に持っている説が濃厚かも)


 どうやら身から出た錆のようだ。


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