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6話 女同士の戦い

「さっきも確認したけど、魔法と攻撃スキルは無しで。準備はいい?カルラ!」


「あぁ、こっちはいつでも大丈夫だ!」


「二人ともいいな?よーい、始めっ!」



俺が始まりの合図を出すと、まずカルラが翼を開いて飛び出す。


そのままかなりのスピードで打ち合いになる。

いや、カルラの打撃をヘレンは弾き、受け流している。



「やるな…だが、それでは攻撃に転じる事は出来ないぞ!」


「ふふ…ただ流してる訳じゃないよ?」



そう言うとヘレンはカルラの腕を引き、側頭部に手を当て、ひっくり返す。



「…。やるな、ヘレン!」


「まだまだ行くよっ!」



カルラは飛び起きると、距離を取り、再度突っ込んでくる。ヘレンもそれに合わせるように駆けだす。


カルラの拳がヘレンに決まる。こちらにも振動が伝わってくる。終わったと思ったが、それで終わらなかった。



「ふふ…効くね。だからこれ、()()()()()()()()()()()()


「何…うおっ!?」



ヘレンの掌底から、同じ威力の攻撃が繰り出され、カルラが後ろに飛ばされる。



「ふぅ…」


「まさか自分の攻撃を喰らうとは…だが、そろそろ決着は近そうだ!」



◇◇◇



結果は、さっきの技が効いていたのか、ヘレンの負け。


しかし、お互い横になりながらも、やけにすっきりした顔だ。



「は〜負けた!良かった、良かった!」


「負けて良かったとは…面白い人だ」


「うん…これで改めてカルラの事を再認識出来たし。やっぱりいい子だってね!」


「そうか…なら、私はヘレンにちゃんと認められたという事で良いのかな」


「勿論だよ!ジェイド!」


「なんだ?」


「これから二人ともよろしくね!」


「あぁ…任せろ。これからも増えるかもしれないしな」


「…うん?それ、どういうこと?」



俺は龍やカルラから聞いた事をヘレンにも話す。



「お、おーい…?大丈夫か?」


「……大丈夫な訳無いでしょーが!何?つまりジェイドが死んじゃうか、奥さん増えるかどうかの2択って事でしょ!?何でもっと早く云わないの!私、毎回こんなの出来ないよ!!」


「いや、それはやらなきゃいい…」


「そういう問題じゃなぁーい!!」



その後俺とカルラは怒るヘレン(←当たり前)を慰めながら、宿に戻った。その日の夜、俺達は家族になった。



◇◇◇



「ふあ〜ぁ…夜遅くまで起きてたから眠いなぁ」


「ジェイド!これは…」


「ん、どうしたカルラ?」


「あ…そうか。ジェイドは他の七龍の長の魔力を知らないのか…」


「何か来てるのか?」


「…」



静かに頷くカルラ。直ぐに俺も、俺も2つの大きな魔力がこちらに近付いているのを感じた。



「でも、不思議と殺気は感じないな…」



俺達はその2つの魔力を街道にて迎え撃つ。



「おや、我等が来ていた事に気付きながら、微動だにせんとは。怠惰が故かね?」


「いや?ここに居たのはただの直感さ。あんた等は戦いに来たんじゃないって」


「そうか?お主とはまともな話が出来そうだ」


「じゃあ…」


「うむ。私は怠惰、お前との話し合いに来た」



それから俺達は、カフェにやって来た。

その場には俺とカルラとヘレン、憤怒の血族だというノヴァさん、その孫であり、護衛のレベッカが居た。


バルコニーの席に座ると、俺達は食べ物を頼む。



「すみません、このチョコレートケーキを1つ」


「私も同じものを」


「私はフルーツタルト!」


「お二人は?」


「私は大丈夫です」


「なら、私はこのガトーショコラというのを貰おうか」


「親方様!?…じゃあ、私はショートケーキで…」



ケーキを待つ間、先ほどの話を進める事にする。



「で…二人は何を?」


「うむ。先ほども言った通り、お主と話し合いに来た」


「具体的に言うと?」


「私個人としては、後に正式な場を設け、怠惰に傘下に下っても良いと考えている。しかし、一族の長としてはそうも行かぬのが現状。そこでだ。こちらはこのレベッカを代表として選出する。そちらは先日傘下に加わった暴食を代表とし、代理戦を行うというのは?」


「それで勝った方の傘下に入るって事か…これは殺しなどは無しだよな?」


「左様。謂わば、決闘という訳だな」


「カルラ、行けるか?」


「勿論だ。拒否する理由は無い」


「…だそうだ。で、いつやる?」


「双方準備が必要だろう。しかし、時間を多くかけて傲慢の奴に強襲などされても困る。2日後はいかがかな?」


「決まりだ。2日後の正午に、向こうの更地でやろう」



俺はノヴァさんと握手をし、その日は解散した。



「さて…今日と明日は特訓だな」


「あぁ。早速始めよう」



俺達は移動し、草原にやって来た。



「よし、行くぞカルラ!」


「来い、ジェイド!」



まず俺が接近し、打撃の連打に入る。カルラはそれを掌で受け止め、雷を付与させた蹴りを入れてくる。


蹴りを躱し、後ずさるが、風魔法を連射する。カルラも同じ魔法を放ち、相殺させる。

更にその煙に紛れ、雷の弾を打ってくる。



「まじかよ!危なっ!」


「叫んでる暇があるのかっ!?」



躱した先にカルラが待ち構えていた。俺は慌てて龍鱗(ドラゴンスケイル)を発動するも、間に合わず、吹き飛ばされる。



「いってぇ〜。やるな!」


「そう言う割には随分と余裕そうだが?」


「そんな事無い。今度はこっちから行くぜ!複合魔法-烟天-」



俺は火と風魔法の複合魔法を使い、炎の半球で俺達の辺りを覆う。



「まさかこんなものまで…やられたな」


「いや、俺も長くは持たない。短期決戦だ」


「受けて立つ。来い、ジェイド!」



◇◇◇



決闘当日。カルラとレベッカの二人が対峙している。

その傍らでは、俺とノヴァさんも一定の距離を保っている。



「我等も手合わせといこうか。怠惰よ」


「良いね。お手並み拝見と行きますか、憤怒さん」



俺は一気に近付き、蹴りを入れる。が―



「遅いっ!」



俺より遅く振り上げた脚で、俺より速く対抗してきた。

嘘だろっ!?



「これが暴食を降した力かね?」


「言ったろ、お手並み拝見って!」


「それもそうだな。では、今度は私の力も知ってもらおう」



ノヴァは筆を取り出すと、空中に何かを書き始める。すると突然、辺りに火が上がる。



「何だ、これっ!?」


「私の力だよ。さぁ、どう対応してくれるかな?」


「まじかよ…」



俺とノヴァさんが戦っているが、一先ずカルラ達の戦いに移ろう。



「…どうやら、お祖父様が力を発揮したようですね」


「面白い力を持つな…お前の祖父は」


「そんな便利なものではありませんよ。あれはお祖父様が時間をかけたから出来る事です」


「さぁ、私達も始めるとするか」


「良いですね。では、行きますっ!」



レベッカはクナイを数本ずつ構え、カルラに向かって放つ。

それが地面に突き刺さると、次々に爆発する。



「これは…なっ!」



カルラが避けた側の死角から、クナイが飛んできている。それを手の甲で弾くと、風魔法で応戦する。



「そんなもの効くかっ!雷魔法-雷槍-」



カルラは五指の先から雷の攻撃を加える。風魔法に耐える事に必死だったレベッカはそれをいくつも喰らってしまう。



「なかなかやりますね…ですが、やられっぱなしでは行きませんよ!土魔法-土流-」



辺りの地面が躍動し、まるで波のようにカルラに襲いかかる。



「ならば、水魔法-水流-」



水と土がぶつかり合う。辺りは泥だらけになり、足場が悪くなる。



「…?これは…」



途端、カルラが膝を付く。



「ようやく効いてきましたか。それは貴方が弾いたクナイに塗布していた麻痺毒です」


「な、なんだと…」


「不用意に素手で触るからですよ。あぁ、安心してください。それは弱いやつなので。後で解毒剤も渡します。負けを認めてくれれば」


「それは…出来ない!」



カルラが得意の風魔法を使おうとするも、上手く発動しない。



「魔力回路も乱すやつですからね、これ。効くのに少し時間かかるんですけど、効けば勝ったも同然です。ほら、あっちも見てくださいよ」


「…?ジェイド…何してるんだ!」



四つん這いになり、地面に這いつくばっている俺と、殆ど無傷のノヴァさん。



「良いから…そっちに集中してろ!」


「出来るか!なんでそんな事に…っ!」


「親方様。これはもう終わったも同然かと」


「まだだ、レベッカ。まだ二人とも負けを認めてはおらん。よく見ろ」



呼吸を整え、既に立ち上がっているカルラ。そんなの見せられちゃ、俺も応えない訳にはいかないよな…。



「…馬鹿な。あれを喰らっているのに立てるなんて…!」


「ノヴァさんよ…俺もまだやれるぜ!」


「良い。それでこそ戦いがいがあるというもの!」



顔を下ろしているカルラ。レベッカから表情は見えない。



「レベッカ…私の新しい技を受けてくれ…」


「なんですって?」


「まだ実戦で使った事が無いんだ。習得したばかりでな」


「そんな不安定な技を使うというのですか!」


「あぁ…私も不安だよ。だが、それを使えばこの麻痺毒を一時的にはどうにか出来る筈だ」


「良いでしょう…受けて立ちます!」



カルラは右手の平の上に左手を重ね、魔力を貯め始める。

やがて、左頬に三本の紫の線が浮かんでくる。



「おい、カルラ!大丈夫なのか?」


「大丈夫かどうかは問題じゃない!勝てるかどうかだ!」



カルラの腕に龍の鱗が現れ、手も龍のものと同じになる。背中の羽も以前のものより大きく、まさしく龍の翼だ。

瞳孔が開き、魔力も溢れ出している。



「はぁ、はぁ…何とかいけたか…」


「貴女、それは一体なんですか!?龍の民に変身能力など…」


「そんなものじゃない…これは-龍化-だ」


「なんだと!?」



カルラの言葉にノヴァさんが反応する。やっぱり他は出来ないのか。



「お祖父様、知っておられるのですか?」


「知っているも何も…龍化の取得は我等龍の民の悲願だ!」


「そんな…」


「行くぞ、レベッカっ!」


「は、速―」



カルラはレベッカの上半身を蹴り飛ばす。

かなり距離がある岩に激突し、ようやく止まった。



「つ、強すぎる…」



レベッカは岩にめり込んだまま、気絶してしまう。

しかしー



「もう終わりか?」



まだ攻撃を続けようとするカルラ。拙い、暴走している。



「まて、カルラ!もういい!相手は戦えない!」


「何を言う。相手の息の根を―」



ノヴァさんがカルラを気絶させる。気を失うと同時に、姿も元に戻った。



「あ、ありがとう…」


「何、寧ろ礼を言うのはこちらだ。あのままでは孫の命が危なかったやもしれん」



俺はカルラを、ノヴァさんはレベッカを背負い、取り敢えず街に戻る事にした。



◇◇◇



「さて、結果は結果だ。我等憤怒の龍の民、怠惰の傘下に加わろう」


「いや、あれは…納得出来るのか?」


「納得も何も、結果が全てだ。元より、傘下に入る事に不満など無かったのでな」


「そっか…じゃあ、宜しくお願いします」


「敬語など不要だ。そもそも、始めから使っていなかっただろう」


「あ〜…確かに。じゃあこのまま喋る事に」


「さて、これで我々が怠惰の傘下に入った事で、三竦み状態になった」


「今どんな状況?」


「まず、怠惰、暴食、憤怒で一組。傲慢、嫉妬で二組。そして強欲」



ノヴァさんの説明を聞き、俺は疑問があった。



「あの…1つ足りない気がするんだけど」


「うむ、最後が色欲。これが一番厄介なのだ。正直、色欲が制覇するか、色欲を取り込むかの二択だろう。それ程までにあれは別格だ」



ノヴァさんの話を聞いても、何も驚かなかった。

それ程までにあいつの強さは違ったからだ。



「…あぁ。前に一度会った事があると思う。赤髪の奴だろ?」


「対面済みか。なら、奴の恐ろしさが分かるだろう。この統一戦は、皆奴を恐れ、膠着状態にあった。しかし、暴食が色欲に言い寄られていた事と、お主が突然現れた事により、状況が変わった。何とか状況を変えようとした暴食はお主に敗北し、軍門に下った。そうだな?」


「あぁ。自分でも冷静で無かったと自覚している。が、そのおかげでジェイドの元に入れて良かったと、今は思う」


「色欲は何を考えているかよく分からぬから、警戒するだけ無駄だ。問題は強欲。奴は今、我等と傲慢の双方から接触を図っている」


「…俺それ知らないけど」


「私がお主達と会う前に接触している。奴もかなりお主に興味を示していた。が、お主に危機感を覚えている傲慢が自分の傘下に入れようと必死だ」


「…つまり強欲を仲間に入れた方が有利になるな」


「うむ、統一も進むからな。これからは我等憤怒と暴食がお前を支援する。色欲の奴にも気を付けながら、なんとしてでも強欲を仲間に加えるのだ。おそらく…強欲を加える中で傲慢、嫉妬とも戦う事になるだろう。実質、次が最後と言っても良いかもしれん」


「…でもなんでそんな強い奴が、他の奴を傘下に入れてないんだ?」


「…他の龍の民の事など眼中にないのだろう」


「なるほど…分かった」


「そういう事だ。さぁ、次の戦いに向けて準備をしよう」



◇◇◇



「怠惰ぁ…随分成長してるじゃねぇかよ?これはそろそろ、また会ってやってもいいかもなぁ…」



椅子から立ち上がり、肩を回すゼノ。周りの女達は再度怠惰の所へ向かう事に不満気な様子。



「ゼノ様、また奴の所へ行くのですか?」


「心配すんな。どういう結果だろうと、ここには必ず戻ってくるぜ。お前達の為にもな」


「…はい。お待ちしております」


「さぁ、今度は失望させないでくれよ?怠惰ぁ…」

お久しぶりです。最近複数話を一気に書いていたら、詰まりました。

前と同じミスをしてますね。少しずつ着実に書いていきます。

閲覧ありがとうございます。

感想、誤字脱字等の報告よければお願いします。

ブクマや下の評価いただけると幸いです。

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