プロローグ ニートのとある一日
「んんっ…ん…」
意識がつよくなっていく、でも体はそれに相反するかのようにだるくなっていく。ここで体に従えば、いつものように二度目の眠りにつくだろう。
しかし…
今日は前々から待ち望んでいた新作ゲームの発売日。
俺は物欲はあまりないが、欲しいものは絶対に発売日当日、現地に自分の足で赴き手に入れると決めている。
「んーーーーー!」
俺は意識を最大限覚醒させて、唸りながら重い上半身を起こした。
そしていつものように階段を下りてリビングに向かう。
目を覚ましたらとりあえずリビングにいって水を飲む。
これがいつもの朝ルーティンだ。
まあ、大体みんなそうだろうが…
ドアを開けると、妹がいつものように白いソファーに寝転がって、夜中に写しておいたアニメを見ている。
「おっはーー今日は早いね」
妹は俺に気付くと、どうでもよさそうに挨拶をする。
アニメに夢中すぎて顔が俺の方向に一切向いてない。
「おっはーー今日は予定があるからな」
俺は妹の挨拶を真似ながら、テレビ後ろの壁上側に掛かっている時計を見る。
十三時三十五分。
この時間帯で早起きですなんて、今必死に授業をうけている学生に言ったら引っ叩かれるだろうな。
そんなことを思いながら俺はコップに水を入れる。
「一人映画?一人カラオケ?」
「一人を強調しすぎだぞ。新作ゲームを買いに行くんだよ。」
「一人ショッピングね。」
「うるせー 、大体、平日のこんな時間に一緒に遊んでくれるような奴なんてろくでもねーだろ。」
「確かに…ね」
「おい、こっちを見て言うな」
お前もだからなと思いつつ、俺は顔を洗いに行く。
顔を洗って歯を磨いた後、久しぶりに洗面台で髪を洗う。
家にずっといると、夜はしっかり風呂に入って洗うが、朝に髪を洗って整えるなど決してしない。
なんならたまに歯も磨かない。朝に歯を磨かないやつなんて、嫌う人はとことん嫌うだろうな。
まあけど、妹はしっかり学校に行っていた時と同じくらい早く起きて、シャワーに入り、新しい服に着替えている。
俺は毎回心の中で「いや、そのまま学校に行けよ!」と、一人でつっこんでいる。
そこまで準備したのに家に引き籠もるなんてもったいないと思う。
まあでも女は男より潔癖気質でそういうのは許せないんだろうな。知らんけど。
俺は自分の部屋に行き、服を着替えてまたリビングに戻りドアを開け、行ってくると言う。
「兄ちゃん、気を付けて行ってきてね。アイス買ってきてね。」
一瞬返事をしようとしたが、俺は最後の一言を聞いて無視することにした。
ドアを開けて外に出ると、メラメラ燃えた太陽の日差しが初夏を感じさせる。
「え…」
俺は無意識のうちに体が家の方向に向いていた。
体はもう帰りたいらしい…
これは末期だなと思いながらも、ゲームのことを考えて、俺は再び振り向いて通りに出る。
俺は太陽に火照られ、汗だくだくになりながらもなんとか目的地に着いた。
まるで日差しが俺に試練を与えているように感じた。
太陽は普段日に当たらないやつが嫌いなのだろう。
まあ俺もお前が嫌いだがな。
俺はショッピングセンターに入り、俺から見て三階西端にあるカセット売り場に行って新作ゲームを買った。
よし、さっさと帰るか…………
俺は一階真反対にある食品売り場でアイスを買って店を出ることにした。
結局、兄というのは妹の喜ぶ顔が見たいのだ。
めちゃくちゃ生意気だが、あいつのことは可愛いとは思っている。
もちろん、神に誓って変な意味は一つも込めていない。
帰る頃には少し日が暮れていた。
俺はスマホを取り出し時刻を確認した。
十六時四十分。
もうそろそろ奴らが現れそうだな。
俺がそう思った瞬間に、前方からチャリンコに乗った学生二人組が喋り合いながら向かってきた。
そう、高校の下校時間だ。
少し歩くと、コンビニには学生数人組が何かを食べながら楽しそうに話している。
他にも、一緒にゲームをしながら歩いている奴や、音楽を聞いている奴、参考書を開いている奴なんかもいる。
学校に通えば、これも全部青春という括りに入り、価値のあるものになるんだろうな…
この時間の学生に鉢合わせると、俺はいつも虚無感に陥らされる。
俺も学校に行けば、友達とかできて、ああやって、楽しそうに……
俺は諦めていることを考えてしまい、気分が悪くなった。
俺は家に着きドアを開け、靴を脱いでリビングに入った。
すると妹が頬を膨らませて、怒気を露わにしていた。
「遅い!!結構前からゲームの準備してあげてたんだよ!!早くカセット入れてよね!」
リビングに入るとすぐに、俺は妹に叱られた。
妹もゲーム好きなので、表情には出さなかったが相当楽しみにしていたのだろう。
でも今の俺にとってそれは、とても元気づけてくれるものだった。
「おう!任せろ妹よ!」
「え、なんか元気すぎてキモイんですけど…」
妹は俺を冷たい目で見ていた。
だけど俺はこいつに、想像以上に救われていたんだ。
俺にはお前がいてくれるから、これでも結構楽しいんだぜ。
「ありがとな…」
俺は小さい声でつぶやいた。
「え?なんて?」
妹はこっちを向いて首を傾げている。
お前は知らなくていい。
こんなこと知ったら、妹は俺に同情してもっと学校に行きにくくなるだろう。
お前にはより楽しい方に進んでほしいから。
「なんでもねーよ。それよりほら、アイス買ってきたぞ」
「ええーー!ありがと!!」
妹は無邪気に喜び、袋を開けてアイスを食べ始めた。
その笑顔を見て、俺は一人約束した。
俺だけは、何があってもお前の味方だから。
「なかなか面白いじゃないか」
「次もちょっと気になるな」
「まあ、読めなくもない」
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