セロリのツナ合え
セロリが今、安い。
普段128円くらいのセロリが、今野菜の売り場に98円で売られている。どういうことだセロリ、お前はそこまで安い野菜だったのか。見損なわないぞ、何故なら美味しいからだ。
兎角、旬の野菜というものは安くなるものだが、つまり今セロリが旬だということか。真かセロリ、嬉しいぞセロリ。美味しく食べようセロリ、という訳で、今週セロリを二本ずつ、二日に分けて買ってきてしまった。
さぁ、この瑞々しく歯ごたえの素晴らしい野菜をどうやって食べよう?
生でマヨネーズをつけてガリッと齧るのもよい。
トマト缶とコンソメでミネストローネにしてもよい。
あえて衣をつけてカラッと揚げて、塩で頂くなんてのも一興だ。
悩んだ挙句に、私はスマホの検索画面を起動した。そうだ、ぐぐるのだ。太古の昔から先人たちは言いたもう、『ぐぐれ、粕』と。心理である。ぐぐれば沢山出てくるもの。
と、いうわけで、今回は『セロリのツナ合え』を作ることにした。
まず、さっと洗ったセロリ二本を適当に切る。ざくざくと切ると、筋を断つ感覚が大変心地よい。切り口から香るこの薬っぽい匂いも良いものだ。
最初この匂いをかいだ時は、「うへぇ、薬っぽい野郎だ!こんなもの好んで食べる奴はとんだスキモノだなっ!!」なんて思ったものだが……本当に、私はとんだスキモノである。
だがそれが良いのだ。
この薬っぽい匂いがないともう私は満足出来ないのだ。ミネストローネにセロリを入れないと耐えられない体になっちまったのだ。
もしもセロリが違法野菜として取り締まられることになり、売り場からその姿を消してしまったとしたら、きっと闇セロリ市にほっかむりをしてひた走ったりするに違いない。夜の闇に紛れ、この薬っぽい匂いを求めて地下へ潜るのだ――――
そんな事を考えている間にセロリが切り終わった。これを、耐熱タッパーのなかにグイグイと押し込んでゆく。
私の横暴により、縁から溢れる緑のセロリ。押し込む私とセロリの戦いは二分ほど続き、私の勝利で幕を閉じた。今回もいい勝負だったな。
ラップをして、謎の電波で火が通る電子レンジにぶち込み、二分すれば……あんなにもさもさだったセロリはほんの少し嵩を減らして、タッパーに潔く収まってくれる。
分かってくれたかセロリよ、だが悪く思うな。お前はこれからツナと一緒になってもらう。
ツナ缶の油ごと、行儀のよくなったセロリの上にぶちまけ、混ぜる。
時折飛び出すはぐれセロリを私の口に収監しつつ、いい感じに混ざったところで麺つゆとお酢を大さじ2入れるのだ。
因みにお酢はまろやか、かつ簡単なものがよい。お手軽にピクルスも作れるらしい。作ったことはないが、作れるらしいからきっと良いものだ。
これをさらに混ぜ合わせ、粗熱が取れて味が染みれば『セロリのツナ合え』の完成である。
火が通っても歯ごたえの良いセロリと、ツナの油と旨味がよく絡まり合って途轍もなく美味だ。
おまけに「麺つゆとお酢の組み合わせなど」とへの字に曲がった口がニッコリするほどよく合う。
嘘だと思ったらやってみるといい、この塩気や旨味、油が回った口の中をお酢がキリッと引き締めてくれるのだ。
おかげで箸が止まらない。
だがセロリだからヘルシーなのだ。
…………そのはずだ、たぶん。
〈追伸〉
因みに、食パンの上にのせても美味い。とろけるチーズの布団を被せてジリジリ焦げ目がつくくらい焼けば、朝から野菜もとれるヘルシーパンの完成だ。セロリは噛みごたえがあるから頭もシャッキリする。