《正規空母》
―正規空母『ティフォン』
第一次世界大戦の勃発により建造が停滞していた巡洋戦艦『フラウィウス・ベリサリウス』を、ワシントン海軍軍縮条約締結にあわせて航空母艦に改装したもの。
改装に伴い装甲配置の変更や艦首の延長工事、空母甲板の取り付けなどが行われ、さらにはバルジも取り付けられたことにより、ほぼ新造といっても過言ではない状態になっている。
また新たに甲板を一段重ね、両舷にケースメイト配置で10門の50口径8inch砲を装備し、飛行甲板両脇に張り出しを設け防空用の4インチ両用砲を8基装備し、排水量は3万2800トンになった。
これらの改装工事のおかげでイギリスが建造していたハーミーズの設計を参考にすることができ、エンクローズド・バウの採用や島型艦橋を基部として三脚型のマストを採用。
頂上の射撃指揮所の左右に測距儀をそなえ、その後ろに集合煙突を備えるという配置を模倣する方針だったが、工期短縮とトップヘビーを嫌ったパパドプーロスの指示で、三脚型マストは単脚型に改められた。
また、搭載予定だった大型の測距儀は調達が間に合わずナヴァルホス・デル・レイ級軽巡洋艦用に予備があったものに変更されたため、主砲の有効射程を減じてしまっが、1930年の改装で艦橋の大型化に伴い正規のものに取り換えられた。
速力は30ノットを発揮し、68機を搭載できた。また艦尾には水上機を運用可能な設備があり、格納庫とは別に1機を露天駐機することができた。
巡洋戦艦時代に張られていた152㎜装甲の一部はそのままになっており、運用思想としては航空機による偵察と露払い、砲火力による準主力艦としてのものだった。
そのため巡洋戦艦時代の甲板装甲の一部もそのままにされ、工期の都合もあり格納庫は一部に切り欠きが存在し、疑似的な開放式になっていた。
船体は巡洋戦艦らしい細長い形状だったがバルジを取り付けられ肥大化し、巡洋戦艦計画時32ノットから速力は低下している。
それにもかかわらず、直進安定性が良すぎて舵の効きがタンカー並に悪かった。
―オルトロス級航空母艦
ワシントン海軍軍縮条約で定められた空母保有枠6万トンを埋めるために1925年に計画された『1万3500トン級航空母艦』。
A案では空母『ティフォン』と同サイズの空母をもう1隻建造するとされ、B案では1万3500トン級航空母艦を2隻とされ、B案が採用された。
前級と比べて小ぶりとなるため艦橋は簡素かつ小型で、その背後に二つの煙突が外側に張り出すようにして設けられている。
巡洋戦艦から改装された空母『ティフォン』とは別に、本級では機関部を覆う76㎜の装甲以外に装甲防御はほどこされていない。
また、艦橋の小型化にともなって測距儀の搭載に難があること、搭載機数確保のため艦砲のケースメイト配置は廃され、飛行甲板両脇に設けられた張り出しに武装を備えている。
武装は防空用の4インチ両用砲を6基装備、これは艦橋と煙突の配置の都合上、右舷側に2基、左舷側に4基となっている。
近距離防空用には艦橋を挟み込むようにして4連装ポムポム砲の銃座が、艦橋後部には連装マドセン20㎜機関砲のマウントが設けられている。
速力は前級が改装で肥大化したため30ノットとなっていたが、運用上は問題がなかったため本級でも30ノットが基準として設計されたが、実際には32ノットが発揮できた。
一方でバルジ等の水雷防御対策は必要最低限となっており、オーバーホール時にはやはりバルジが追加され速力は28ノットにまで減じてしまった。
搭載機数は47機で、前級のように不完全な密閉式格納庫ではなく、本級では本格的な密閉式格納庫となっている。
本級は第二次世界大戦を通じてフェアリー・ソードフィッシュを艦上攻撃機兼艦上爆撃機として運用したことで知られ、多くの戦いで偵察・攻撃・支援を行った。
1番艦は『オルトロス』で、2番艦は『ケルベロス』だが、就役が前後してしまったために初期の記述ではケルベロス級とも。
ゲオルギウス・エスカンダリアン提督は2隻を「番犬の姉妹」と述べて、重宝していたという。