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天然パーマ(KAMITSUBAKI STUDIO オーディション③)

作者: あまいはな

迫りくる進路調査票の期限、来週金曜。


日没は、6時から4時へ。


「工事中」の看板の奥で、金属が積み上げられていく。


世界は、変わっている。



中学の卒業アルバムは行方知れず。


チョーキングで固くなった、薬指の皮。


電車に乗れば、大人料金を払って。


私も、変わっていく。



嫌な事があると爪を噛む癖とか。


どうやってもまとまらない天然パーマとか。


そういう所だけは、相変わらずなのに。





友達ができて。


普通のお弁当を食べて。


勉強もそこそこやって。


鼻歌なんか歌うようになって。


こうやって


笑って生きていくのか。


保健室には行かなくなって。


カッター無しでも泣かずに。


「死にたい」の輪郭もぼやけて。


ぼやけて、


ぼやけて、


ぼやけて。






3年後には、大学生になって。


近くのカフェでバイトして。


ひいひい言いながら卒論を書いて。


雑なお世辞を就職の武器に使って。



10年後には、地方で働くOLで。


まあまあ気の合う同僚と、恋愛っぽい事をして。


心の中で、ひとりハゲ上司の悪口を叫んで。



20年後には、母親になって。


ファミレスで泣き止まない娘に


「うるさい!」と拳骨を落として。





うん。


良い未来だ。


十分良い未来だ。


でも、


その先を想像する気は起きない。





見えてしまった。


もう見えてしまった。


私の全部、その終わりすらも。



こうやって、死んでいくのか。




気に食わない。


気に食わない。


何の為に、私はあれだけ泣いたんだ。


何の為に、私はあれだけ我慢したんだ。


結局、一番嫌いだった「まっとうな人間」に成り下がるのか。



「希望に溢れた未来」とか、笑顔で歌って。


置いてきぼりを食らった奴に気づかない。


そんなの


あいつらとまるで同じじゃないか。



「人間としての理想像」なんて、


「夢」なんて、


持ったことも無い。


持つ方法も知らない。


でも


「あんな大人にはなりたくない」って。


それだけは確かに思うのだ。





どうすれば良い?


このまま戸惑い続けるには


どうすれば良い?


分からない。


分かるはずもない。


自分の感情さえ分からない


今の私には。



段々頭が痛くなってきて。


たまらず髪をかきむしると


天パは余計にこんがらがった。




ストレートパーマをかければ


ストレートに、「大人」へなれるのかな。



分からない。






私は、変わって行く。



















































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