書きたいことを気ままに書くよ。 ⑨
友人の結婚式に参席したときの話です。
大学時代の学友の結婚式に行った時の話です~♬
〇〇〇
「うぅ~。緊張する……」
私は人生初の結婚への参列にドキドキしていた。ううん、ドキドキなんてものじゃないくらい、ドキドキしていた。
チラリと腕時計を見ると、まだ受付には早い時間だ。かといって、別に何もすることもないし、暇をつぶす場所もないし、でも会場に早く入って待つのは邪魔じゃないかしら、なんて色々考えてしまう。
そこでだれかもし私に突っ込みを入れてくれる人がいたら、
『受付時間の15分前に到着したところで、別に誰の何の迷惑でもないし、むしろ遅れてくる方が迷惑だし、受付前にもトイレに行くとか着替えるとか、やることはあるだろう!』
とか言ってもらえたら助かったんだけど、如何せん集団行動を大の苦手としている私は、式場の門の入り口近くで時計とにらめっこをする次第である。
やることがなく手持無沙汰でスマホを開く。困ったときのスマホ!ある意味スマホは神である。
私は徐にその日に配信された新R25の記事を読んだ。内容は、ホリエモンの『なぜ会話をすることも無駄だと考えるホリエモンが、プレゼンを勧めるのか?』と言ったものだ。
プレゼンは、30秒・2分・30秒の3部構成にして、プレゼンのレイアウトの美しさとか見やすさとかよりも、3分以内に相手にどれだけわかりやすく物事を伝えるか、ということに徹底したものだった。
3分以上話すのはダルいし、3分あれば伝えたいことは伝わる。それ以上時間を使うのは無駄っていう、超ホリエモン節な内容!
そんな記事を2本読んだら受付開始時間の5分前になった。我ながら良い時間の読みである。
そんなことを考えながらウキウキして門をくぐると、まさかの大学時代からの友人と鉢合わせた。
今年の梅雨前にみんなでBBQをして以来だから、約半年ぶりの再会だった。
私は友人らと一緒に門をくぐり、建物内に入る。すると、そこには新郎新婦の親族方や、既にカウンターで荷物を預けている人たちでにぎわっていた。
白を基調とした館内は、淡いオレンジ色の優しいシャンデリアや装飾の輝きで満たされている。優雅に構える案内役のスタッフの誘導で、私たちは羽織っていたコートやカバンを預け、待合室へと向かった。
あちらこちらに大きな窓が備えつけられており、外の光をいっぱいに取り込むような作りになっている。もし晴れていたら、さぞ美しい光景であっただろうと思うと、薄曇りの空が少しもったいない気がした。
螺旋階段を上がると、庭園のような開けた場所に出た。建物の中にいるのに、まるで外を散歩しているような気分だ。建物の隅では職人が丹精込めて食事作りをしている様子が風景の一部として切り取られている。薄いベージュ色のレンガが敷き詰められた床の上を歩いていくと、深い茶色の木で作られた礼拝堂のような部屋があった。御祝儀を受付に渡し、空いている席にみんなで腰を下ろす。備えつけられているテーブルや椅子も深い茶色の木目で統一されており、丹念にやすりで削られたそのさわり心地は滑らかで快適だった。
みんなで談笑し、懐かしさとこれから始まる式へのワクワク感を募らせていると、
「おっ!みんな元気?」
と、懐かしい声。
大学時代の恩師の登場である。
もともと先生はひょろっとした体格なのに、最近筋トレを始めてさらに痩せたんだって!
「僕、痩せたでしょう?」
と先生は顎を撫でながらどや顔で言っていたけど、こちとら大学を卒業して5年逢っていなかったのよ?痩せたかどうかなんてわかんないよ。
そんなことを言い合いながら、みんなで笑う。なつかしい、学生時代に一気に戻った気がする。
そうこうしている内に、会場の時間が来た。
私は静かに深呼吸して、案内に従ってその場を後にした。
案内されたのは、ステンドグラスが美しい、礼拝堂だった。優しい表情をした、恐らくイエス・キリストを象った飾りが日の光に輝いて見えた。中心にある十字架は、思ったよりちいさい。大学の礼拝堂にあった十字架の方が、立派で大きかった気がする。あ、パイプオルガンも同じく。
何てことを思いながら、新郎新婦の入場を待つ。我ながら失礼な思考の持ち主だ、とあきれてしまった。
祝辞に訪れた神父さんの誘導で、いよいよ新郎新婦の入場だ。
初めに入場したのは新婦だ。お父さんを伴って、裾の長い真っ白なウエディングドレスを纏い、赤い絨毯の上をゆっくりと進む。
彼女は美しかった。言いたいことは、ただそれだけ。
歩き方は慣れないドレスの所為もあるか、少しカクカクしてぎこちなく感じたけど(ペンギン歩きみたい?)、でも、普段身に着けないのだから仕方がないよね?
私たち、別に某時代の社交界で優雅にダンスを踊っていたような人種宜しく!ではないのだから。
新婦が壇上に上がると、今度は新郎の出番。
結構いい年齢なんだけど、少年のようなあどけなさと純朴さを心に残した青年は、薄汚れてしまった自分にはうらやましいくらいに真っ白で美しいと思う。……悔しいから、本人には言わないけどね。
新郎と新婦2人が、神父の前に並ぶ。
美しい讃美歌が流れ、愛を誓う宣誓と、指輪交換に誓いのキス。
うっとりしながら、わたしはそれらの光景に見入ってしまった。
そこだけ世界から切り取られたように、時を忘れるような空間だった。
「……うらやましいなぁ」
そんなことをちょっぴり思う自分と、きっと自分はこんな風にたくさんの人に祝ってもらえないんだろうなっていう、もの悲しさが胸に残った。
自分が生きると決めた道に、後悔はしていない。でも、もう少し違った選択をしていたら、未来は変わっただろうね。
素敵な式だった。自分の心もあったかくなるような、とってもいい式だった。参席できたことを、とてもうれしく思う。
……でもね。
新郎・神父共におばあちゃんが参加していて、嬉し涙を流していた。
その姿を見るのがちょっと辛くて、わたしは何度も目を伏せた。
私は、両親ともに親を亡くしていて、今存命なのは父方の祖父ただ一人。みんな、いなくなった。
ごめんね、ひ孫見せてあげられなくて。
特に母方の祖母からはすごく心配されていて、『だいじょうぶ?』とよく声を掛けられたものだ。
私の選択がだいじょうぶかどうかわからないけど、家庭を持つだけが正解じゃないと思うよ。
でも、自分の中でやっぱり心残りはある。
結婚式も、子どもの姿もまだまだ夢のような話だからね。
生きている内に見せてあげられなくてごめんね。
そんなことを考えながら、今、私は書いています。
読んでくださってありがとうございます。
評価など、とっても嬉しいです(*^▽^*)