お屋敷の噂話
「ねぇ、知ってる?エミリの妹がすっごい玉の輿に乗ったって話」
「知ってる知ってる。その話、知らない人なんかいやしないわよ。
カフェの女給から地方の荘園を持つブルジョアの奥様になるだなんて、何の夢物語よって感じ」
「でも、クリュウさんも意地悪よねぇ…
エミリにお休みをあげなかったらしいじゃない。
だからエミリ、遠方で行う妹の結婚式に出席できなかったんだって。気の毒に。
誰も身内が結婚式に出ないのはかわいそうだからってカフェ・ド・ルフランの支配人が親代わりということで出席したらしいけど…」
「あーそうなんだぁ…
でもなんでクリュウさんエミリにお休みをあげなかったの?」
「ふ、クリュウさんってば、1日ならともかく何日も休ませるわけにはいかないなんて言ったらしいよ?
いつもはエミリなんかなんの役にもたたない、経理の仕事は自分一人で充分だなんて言ってるくせに」
「あはは、逆よねぇ?
エミリがいればクリュウさんはいらないっつーの。
ああ、あれよ。エミリに何日も休まれちゃったら経理の仕事が滞っちゃって、自分がエミリに仕事を任せっきりにしてるのがバレちゃうから」
「ははは、正解!」
「あとさー妹の旦那さんがエミリにも一緒に暮らそうって言ってくれたけど断ったって話、本当かしらね?
そうだとしたらバカよね!
ブルジョアの屋敷で奥様の身内として悠々自適な暮らしが出来るチャンスなのに」
「まあ、断るってエミリらしいわ。ただでさえ身分違いの結婚で肩身の狭い思いをする可能性の高いところに、姉まで転がりこんだんじゃ妹の肩身が益々狭くなるんじゃないかって思ったのよ、きっと」
「そうね。
でもなんというか…
そういう思慮深いところが妙に重くて…」
「美人だけどモテないのよねーあの子」
「そうそう!
なんか友達としても付き合いづらいしー」
「あーん、でもエミリにブルジョアの親戚が出来るってわかっていたらうちらのグループに入れてあげてたのになぁ」
「ねーっ」