エイトの申し出
ルミナ、お願いだ。
どうか僕と結婚しておくれ。
身分違いだとかそんなことは全く気にしなくていいから。
確かに僕の実家は田舎では名の知れた名家だ。
けれど、僕の両親はすでに亡くなっていて、年の離れた後見人の兄がいるだけだ。
僕のことを困った放蕩息子さんと呼ぶ兄が。
その兄は僕が都会のカフェで働くキュートな女の子と結婚したいと申し出た時、そらおいでなさった、と言うような顔をした。
遊び人と噂が立って久しい僕には最近お見合いの話も来なくなっていたのだ。それ相当に相応しい家柄の娘さんとの。
だから、兄夫婦はエイトはきっとある日突然不良の女の子を連れてきて、兄さん僕この人と結婚します!なんて言い出すに違いないなんて話していたらしい。
あ、誤解しないでくれ。
僕は君のこと不良だなんてちっとも思ってやしないよ?
なにせあのお堅い叔父夫婦だって君のことを気に入ったんだからね。
特に叔母が君の履いていた靴を見てあの子は信頼していい娘だわって言ってくれたんだ。
決して新しくないけれどとても丁寧に磨かれた靴を履いていたって。
叔母の実家は大きなホテルを経営していて、彼女は娘時代道楽でフロントに立っていたことがあったらしい。
そこで彼女はきちんと手入れをされた靴を履いた人物にとても品が良い人間が多いことに気づいたんだって。
たとえ最上級の部屋に泊まっている客じゃなくても。
あの日磨きこまれたあの靴を履いていた君はなんとも上等な人間に見えたって叔母が言うんだ。
カフェで働いているような娘には見えないって。
あ、どうか気を悪くしないでくれ。
上流社会の人間はどうも人を見下す癖がある。
良くないね?
でもその叔母が兄を説得してくれたんだ!
エイトにはあの娘が相応しいと思うって。
あの娘と結婚したらエイトも少しは落ち着いて真面目に家業の手伝いをするようになるなるんじゃないかって。
エイトは少し変わった子だから無理に良い家柄の娘と結婚させても長続きはしないだろうなんて、僕のことをけなすことも忘れなかったらしいけど。
それで…
兄夫婦も君との結婚を頭ごなしに反対しないって言ってくれたんだ。
兄たちはとりあえず君に会わせろと言っている。
だから僕の田舎に一緒に行ってもらいたいんだよ!
ああ、そうだよね?
その前に君に僕のプロポーズにイエスと言ってもらわなきゃ!