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スラッガー⚾️ ~白球の奇跡~   作者: 宇目 観月(うめ みづき)
3/29

僕の野球チーム

僕の野球チーム「デンジャラス」は、

まだ一度も県大会に出たことが無いんだ。


デンジャラスはね、英語で、


「危険な」


っていう意味。


危険なほど強いチームになってほしいって願いが込められてるんだ。


実際けっこう強いチームなんだけど、

いつも地区大会で敗退しちゃうんだ。


なぜかっていうとね、同じ地区に、


「ブラックホークス」


っていう強豪チームがあるからなんだ。


そこの監督さんは元社会人野球の選手で、

とても厳しい指導をするんだ。


メンバーの数も多くて、

Aチーム(五、六年生)

Bチーム(三、四年生)

に分かれて活動してる。



それに比べて僕のチームは部員が二十人弱。


チームを分けられないんで、三年生から六年生まで一緒のチームで活動してるんだ。


監督もコーチも優しくて、練習も軽め。

 

高野監督は五十歳くらいの野球が大好きな面白おもしろいおじさん。

いつも冗談じょうだんばっかり言ってるんだ。


緒方コーチは三十歳(くらい)真面目まじめそうな人。

優しいお兄さんって感じ。



僕のチームも、春と夏の大会前に、二週間くらいは、ほとんど毎日厳しい練習もするけれど、普段の練習は土日だけ。練習がない週も結構あるんだ。


自由で伸び伸びした雰囲気が僕のチームの魅力かな。



◇◇



小三の秋から小四の秋までは、僕は補欠で代打ばっかりだったんだ。


だけど、練習に行って、外野で球拾いするだけでも楽しくて仕方なかった。


時どき大きなフライも飛んで来るしね。


仲間達とワイワイ言いながら、競争みたいにフライを取りに行って、思いっ切り返球するのが凄く楽しかった。



高野監督や緒方コーチから野球の基本を一から教わって、練習すればするほど、僕はだんだん野球が上手くなっていったんだ。


あれほど恥ずかしかったユニホームも、

全然恥ずかしいと思わなくなった。


長嶋茂雄が凄い選手だったこともネットで調べて分かったし。



小三の秋に野球が好きになってから、

僕は一人でもずいぶん練習したんだ。


野球の本やユーチューブなんかで自分なりにいろいろと研究もしたよ。


チームの練習がない時は、小学校のグラウンドとかで、いつも一人でトレーニングしてたんだ。


僕の野球チームの仲間達は、みんな塾や習い事で忙しかったからね。



だけど野球って、やってみると本当に面白い。


試合の時なんて、自分の打順が回って来るのが待ち遠しくて仕方ないんだ。


一人で素振りしたり、壁に向かって投球練習するだけでも面白いよ。


自分が狙った通りのコースにボールが行って、イメージ通りの投球が出来た時は凄く嬉しい。


素振りもね、 バットを振ると、 空気を切り

く、


「ブン!」


って音がするでしょ?


あの音も僕は大好き。


調子が良い時は、あの音が鋭く大きく聞こえるんだ。


とにかく、野球にハマってから、ゲーム機で遊ぶこともほとんどなくなった。


ご飯もたくさん食べるようになったし、

体も筋肉が発達して丈夫になったんだ。



高野監督から言われて、僕は勉強もするようになった。


「翔太、イチロー選手も、王選手も勉強は出来たらしいぞ、やっぱり一流の選手は頭も良いんだ。お前も勉強頑張れよ」


ってね。


だから僕は、塾には通えなかったけど、学校の勉強だけは、宿題と予習復習を必ずやるようにしたんだ。


そしたら成績がだんだん上がって来たんで、

母さんも喜んでる。 



◇◇



僕のチームは中学受験をする人達が多くて、

「デンジャラス」の六年生のメンバーは、

夏の大会が終わると、直ぐにチームを卒業しちゃうんだ。


だから四年生の秋になると、僕はレギュラーになってレフトを守ってた。



初めてレギュラーで練習試合に出た時は緊張したよ。


相手は「港南こうなんイーグルス」っていう結構強いチームだった。



最初守備についた時は、


[お願いだから、僕のところに、打球なんか飛んで来ないでくれ!]


って祈ってたんだ。


だけど野球って不思議なんだけど、そういう時に限ってバンバン打球が飛んでくるんだ。


でも、最初の難しいレフトライナーを後ろ向きで走って行って、上手く処理出来たら妙に落ち着いちゃって、


[もう何でも来い!]


って気持ちになった。



結局その日は、毎回レフトに打球が飛んで来たから、合計七、八回は打球を処理したんじゃないかな。


僕は失策エラーも無く全部無難(ぶなん)処理しょり出来たから、


「翔太をレフトにして良かった」


って、監督も喜んでた。


一年間、たくさん練習した甲斐かいがあった。



その日は、バッティングも調子が良くて、

三打数二安打だったんだ。


守備が調子良いと、バッティングも調子良くなるみたい。



僕はその日、七番バッターで、最初の打席は一死ワンナウト、一、三塁で回って来た。


僕はファーストストライクから積極的にねらって行ったんだ。


そしたら、二球目に良い球が来て、思いっ切りバットを振ったら、三遊間をライナーで打球が抜けて行った。


三塁ランナーがホームに帰って来て同点になったから嬉しかった。


一塁ベース上で、僕は思わずガッツポーズしちゃったんだ。



二打席目は、二死ツーアウト、ランナー無しから、

左中間へ大きな当たりの三塁打だった。


三塁コーチが滑り込めって合図したから、

僕は頭からベッドスライディングしたんだ。

 

そしたら、セーフだったんでホッとしたよ。


次のバッターの浩一こういち君がライト前ヒットを打って、僕はホームに生還せいかんして勝ち越し。


ベンチに戻ると、チームのみんなが狂ったように喜んでるし、僕も嬉しかった。



三打席目は六回裏、また二死ツーアウト、ランナー無しで僕に打順が回って来たんだ。


試合は三対一で勝ってた。


「翔太、今日はお前、当たってるから、一発大きいの狙っていけ!」


なんて監督が言うから、三球続けてフルスイングしたら力が入り過ぎて三球三振だった。


ベンチに戻ると監督が、


「翔太、あんなこと言わなきゃ良かったな。

ゴメン、ゴメン」


って言って、笑ってた。



七回表はピッチャーの貴史たかし君が無難に締めてエックス勝ち。


僕達のチームは、秋の新メンバーで初勝利を飾ったんだ。

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