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スラッガー⚾️  作者: 宇目 観月(うめ みづき)
19/29

自主トレとお正月と耀との初詣

僕のチームは十二月と一月は、オフシーズン

で練習は休みになるんだ。


監督は個人で走り込んだり、バスケとか水泳

とか他のスポーツもやって、基礎体力をつけ

るようにって指導してるんだ。


勉強も頑張らないといけないしね。


でも「ブラックホークス」とか、他のチームは一年中練習したり試合したりしてるんだ。


「一年中休まない方が良いのか、オフを入れ

た方か良いのか俺にもよく分からない。でも

俺達は心にゆとりを持って、アメリカ方式で

行こう。オフが終わったら、どんな取り組み

やスポーツをしたか、一人ひとり聞かせても

らうからな、勉強も頑張れよ!」


って、監督は言ってた。


僕達は二カ月も休むから、二月になっていきなり全力投球したり、フルスイングしたりすると故障こしょうするリスクもあるんだ。


だから、キャッチボールとか素振りだけは、

たまにやるようにって監督は言ってた。


でも危険だから、絶対に道路でやるな、

運動場でやれって。


「道路でキャッチボールして通行人に怪我でもさせたら、指導者の俺と緒方君の責任になるからな。俺達に恥をかかせるなよ。俺達は道路族どうろぞくじゃないんだ。道路でキャッチボールしてるヤツを見かけたたら直ぐ俺に報告してくれ。俺が警察に通報して、成敗せいばいしてやる!

キャッチボールは絶対に運動場でやれ!」


って。



◇◇



僕は三年生の冬は、土日に市民プールで水泳

をやったんだ。


四年生の時は、ひたすら硬式こうしきテニスのカベ打ちをやった。


今年はピッチャーも始めたし、この冬は走り込むことにした。


聖司君は一年中、毎朝十キロも走り込んでる

って聞いたから、僕も負けられないと思った

んだ。


僕はとりあえず、毎朝五キロから始めること

にした。


雨や雪の日は休み。



最初は寒くてキツいから、何度も心がくじけ

そうになった。だけどれると、走るのが楽しくなったんだ。



クリスマスが終る頃には、五キロ走り終わる

と近くの神社で階段ダッシュまでやるように

なってた。



◇◇



大晦日おおみそかは、耀の家でテレビをごした。


耀のお祖母ばあちゃんと僕の母さんは、

おせち料理を作るのにいそがしそうだった。


みんなでコタツに入って、ミカンとかおせちを食べながら、紅白こうはくを観て過ごしたんだ。


耀の母さんは、ベートーベンの『第九だいく』の演奏があるから居なかったけど、夜の十二時頃にはテレビにうつってた。


耀の母さんが所属してる楽団の演奏がテレビ中継されたんだ。



僕と耀は、


徹夜てつやする」


って言って、頑張ってた。


だけど年越しソバを食べた後、いつの間にか

二人ともコタツで寝ちゃったんだ。



◇◇



翌朝、僕が目を覚ますと、耀はもう出かけちゃってた。


耀はお雑煮ぞうにを食べると直ぐに、着物きもの着付きつけと髪のセットに行ったんだって。



母さんにお雑煮を作ってもらって、

耀のお祖母ばあちゃんと一緒に三人で食べた。


焼いたおもちが入ってて、凄く美味おいしかった。


「明けましておめでとう、今年もよろしく

お願いします!」


って、三人で新年のあいさつをしたんだ。


母さんは昨日、一度家に帰って寝てから、

また来たって言ってた。



◇◇



食事が終わると、僕は家で着替きがえて、

ロードワークに行ったんだ。


五キロ走り終わって近所の神社まで行くと、その日は元旦がんたん参拝客さんぱいきゃくがたくさん並んでた。


階段ダッシュはあきらめて、代わりに僕は学校のそばの坂道をダッシュしたんだ。


三十メートルを五本くらいやって、

家に帰った。


耀の家に行ってみたけど、耀はまだ帰ってなかった。



◇◇



何もやる事が無かったから、僕は運動公園に行って投球練習をやってた。


すると耀から、僕の携帯に電話がかかって来たんだ。


「ねえ翔太、初詣はつもうで行こうよ! 今、桜と美優も一緒、後で聖司と直樹も来るって。 翔太もおいでよ、八幡宮はちまんぐうで待ってるから」


って、耀は一方的にしゃべって電話を切っちゃったんだ。


だから僕は、もう一度家に帰って着替えてから行くことにした。



耀達は着物だし、僕はどういう格好かっこうで行けばいのか分からなかった。


だから、母さんに相談したんだ。


「あなたは男の子だから、別に普段着ふだんぎいんじゃない」


って母さんが言ったから、僕はジーンズと

スタジャンで行くことにした。


寒いからマフラーと手袋をつけた。



◇◇



バスに乗って八幡宮はちまんぐうまで行ったら、参道さんどうの入口の大きな鳥居とりいの所で耀達が待ってたんだ。


人が多くてみ合ってた。


僕がまったく気づかずに、耀達の前を通り過ぎようとしたら、


「おい、翔太、どこ行くんだよー!」


って、直君に呼び止められた。


耀達は大笑おおわらいしてた。


耀達は着物を着てて背も高いし、髪型とかもいつもと違うから、僕は全然気づかなかったんだ。


大人の人達かと思ってた。


「翔太って、ホント天然てんねんだよねー。私達さっきから手を振ってるのに全然気づかないんだもん」


って、桜ちゃんに言われちゃった。


「ごめん、大人の人達がほかの人達に手を振ってるのかって思ったんだ」


って言うと、またみんなに笑われちゃった。


「まったく、翔太は正月からおおボケだなあ。まあいや、さあおまいりしようぜ」


って、聖司君が言ったんだ。



◇◇



聖司君は羽織袴はおりはかまを着てたけど、直君は僕と同じような服装だったからホッとした。


耀達は明るい色の綺麗なそでを着て、

白い足袋たびに、かかとの高い草履ぞうりいてた。


三人とも、白いフワフワした肩掛かたかけをして、小さな和風わふうのバッグを持ってた。


髪も綺麗にセットしてカンザシをつけてた。

唇があかかったから、少しお化粧けしょうもしてるみたいだった。


みんな凄く綺麗で高校生くらいに見えた。


僕は恥ずかしくて、耀の顔をまともに見れなかったんだ。



入口の鳥居から本殿ほんでんまでは、百メートルくらいの距離があって、たくさんの参拝客が長い列を作ってた。


参道の両側には屋台やたいがたくさん並んでた。


僕達は参拝するまで一時間くらい並んでたから、時々(ときどき)、交代でタコ焼きとかチョコバナナを買って来て食べたんだ。



◇◇



やっと僕達がお参りする番になった。


僕達は二人ずつに分かれてお参りしたんだ。


聖司君と桜ちゃん、直君と美優ちゃん、

僕と耀の順でお参りした。


最初にお賽銭さいせんを入れて、鈴を鳴らして、二回お辞儀じぎして、柏手かしわでを二回打って、手を合わせてお参りして、また一礼して終わりなんだけど、僕はよく分からなかった。


耀を横目でチラチラ見ながら真似まねしてたら、耀がクスクス笑い出して、


「もう翔太、笑わせないでよ!」


って、小声で僕に注意したんだ。


僕も可笑おかしくなって、 


「ごめんね」


って、笑いながらあやまったんだ。



◇◇



お参りが終わると、みんなでおみくじを引いたんだ。


僕と耀と桜ちゃんは中吉、直君は小吉、

美優ちゃんと聖司君は大吉だった。


「チェッ、おみくじなんてきらいだ!」


って直君が言ったから、みんな吹き出しちゃったんだ。



みんなでお守りも買ったよ。

聖司君は破魔矢はまやまで買ったんで、


「おおー」


って、みんな驚いてた。



それから、みんなで記念撮影をしたんだ。

みんな携帯で何枚もってた。


直君がおどけて、ウサイン・ボルトのポーズ

をしたら、みんなも真似まねして色んなポーズを

やり出したから可笑おかしかった。



みんなで公園まで行ってみようってことになって、八幡宮の近くの川沿かわぞいに広がる大きな公園を散歩したんだ。


公園にもたくさんの人がいて、屋台もたくさん並んでた。


羽子板はごいたをやってる人達もいた。



さっきお参りした組合せで自然に歩いてたら

耀がほかの組に手を振って、僕の腕をつかんで池の方に連れて行ったんだ。 


「えっ、 みんなと一緒に行かなくていいの?」


って僕が聞いたら、


「いいのよ、バカね」


って耀が言ったんだ。



[これがグループ交際ってやつか]


って、僕はずいぶん後になってから気がついたんだ。


今思い返せば、あれから僕達は、あのメン

バーで、遊園地や映画館によく行くように

なったんだ。


だから、その時の初詣が僕と耀の初デートっ

てことになる。



◇◇



耀と二人で池の周りをゆっくり歩いてたら、

耀がこう聞いたんだ。


「ねえ翔太、さっき神社で何てお祈りしたの?」


「うーん、よく覚えてないけど、みんなが幸せになりますようにって感じのことかな」


「翔太は優しいのね。私は何てお祈りしたと思う?」


「うーん、えーっと、分からない」


って僕が言うと、


「知りたい?」


って耀は聞いたんだ。


「うん、知りたい、知りたい、耀は何てお祈りしたの?」


「教えてあげない」


って耀が言うから、


「えっ、何で? 教えてよ」


って僕はお願いしたんだ。


そしたら、


「じゃあ、教えてあげるね、翔太達が県大会に行ったらね」


って言って、耀は悪戯いたずらそうに笑ったんだ。


「えーっ、ズルいよ、そんなの!」


って、僕は文句もんくを言ったんだ。



屋台でクレープを買って、とりとめもない話をしながら、公園のベンチに二人並んで座って食べた。


耀達はこれからサッカークラブの新年会に行

くって言うから、バス停まで送って行った。



みんながバス停で僕達を待ってた。


聖司君は親戚しんせきの家に行くから、先に帰ったらしい。


僕達野球チームの新年会は、五日いつかに監督の家でやることになってたんだ。



みんなと別れて、僕は直君と八幡宮近くの

バッティングセンターに行って汗を流した。



◇◇



家に帰ると、母さんとお正月番組を見ながら

おせち料理をおなか一杯食べた。



クタクタにつかれてたから、僕は早めにお風呂に入ってベッドに横になった。


翌日は朝早くから、お祖父じいちゃん達の家に行くことになってたんだ。



僕は昼間の初詣のことを色々(いろいろ)と思い出しながらねむりについた。


みんなの笑顔が目に浮かんだ。


着物を着た耀の姿が目に焼きついて、

頭から離れなかった。



[耀は、何てお祈りしたんだろう?]


って、僕は気になって仕方なかったんだ。

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