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スラッガー⚾️  作者: 宇目 観月(うめ みづき)
18/29

耀たちの県大会

十一月後半になると耀達のサッカーチーム、

「アストラル」は市のアンダー12(十二歳以下)のBブロックを通過し、今年も県大会に出場したんだ。


地区大会も県大会も僕は野球チームの練習日がかさなって、ほとんど応援に行けなかった。


たけど耀達が準決勝まで進出すると、商店街には横断幕おうだんまくがかけられて、地元じもとも大いに盛り上がった。


僕達野球チームも練習を休んで、県立競技場まで応援に行ったんだ。



◇◇



耀達の準決勝の相手は、「ヴェント」っていう強豪きょうごうチームだった。


耀はこの試合で、ワンゴール、ツーアシストの

大活躍。


三対二で勝利して、チーム創設そうせつ以来、三十年()りで決勝に進出したんだ。



決勝点は耀が決めたんだよ。


最初の二点は耀のアシストで桜ちゃんと美優

ちゃんが決めてた。


後半同点に追いついかれた後、耀は残り時間

一分で、前線まで出て行って、美優ちゃんに

ヒールパスしたんだ。


美優ちゃんは、ゴール右手にいた桜ちゃんにすかさずパス。


桜ちゃんは胸でトラップした後、ゴール前に突進して来た耀にするどいパスを送ったんだ。



耀は思いっ切りジャンプしながら、右足で

ボレーシュートをゴール左(すみ)たたき込んだ。


耀は蹴った後、グラウンドに横向きにころがって一回転したんだ。


アッという間にの出来事に、観衆も一瞬息をんだ。


耀が立ち上がり、ガッツポーズして飛び上がると、ドッと歓声が起きた。


三人の見事な連携れんけいプレーに、観客も興奮してた。


相手の選手達は、芝生しばふ寝転ねころがってくやしがってた。



試合終了のホイッスルがると、地元側の

スタンドはお祭り騒ぎだった。


僕も直君や聖司君達と抱き合って、

飛び上がって喜んだんだ。



試合が終わると耀達は、僕達が応援してる観客席の真下ましたまで来てくれて、とびっきりの笑顔で手を振ってくれたんだ。


耀と桜ちゃんと美優ちゃんは、三人で肩を組んでた。


その三人は、勝利のダンスを楽しそうにおどったんだ。


カッコ良かったよ。


[サッカー選手って、開放的かいほうてきいなあ]


って、僕は思ったんだ。



◇◇



準決勝が終わると、決勝戦までまだ大分時間があった。


僕は耀に差し入れを持って行ったんだ。


一人で行くのはずかしいから、

聖司君と直君について来てもらった。



耀は桜ちゃんと美優ちゃんと一緒に、選手(ひか)え室から出て来ると、僕達を見て、


「翔太達、やっと応援に来てくれたんだね」


って、言ったんだ。


おそくなってごめんね。さっきの試合、凄かったね。僕達、感動したよ」


「私達、どうしてもこまった時は、あれをやろうって決めてたの。あのプレーは三人で何回も練習したんだ。本番で決めれて良かった」


って、耀は嬉しそうに言ったんだ。


「そうだったんだ、凄いね。みんな驚いてたよ。決勝戦も頑張ってね!」


って言って、僕は母さん手作りの唐揚からあげと、耀が好きなマカロンを渡したんだ。


「あーっ、唐揚げだ! ありがとう、私これ好きなんだ。あっ、マカロンも!」


「野球の時のお返しだよ」


「嬉しい! 私達、これ食べて頑張るよ。翔太の母さんに、ありがとうって言っといてね」



僕達はしばらく三人と談笑だんしょうしたんだ。


僕は耀と、聖司君は桜ちゃんと、直君は美優ちゃんと話してた。


僕達がスタンドに戻る前、耀は僕にこう言ったんだ。


「翔太、パワーちょうだい」


「えっ?」


って、僕が首をかしげると、


「手、出して」


って、耀が言ったんだ。


僕が右手を差し出すと、耀は僕の手を握手するように両手で強くにぎって、しばらく目をじてじっとしてた。


「よし! これで大丈夫。翔太のパワーもらったよ。見ててね、私、頑張るから!」


耀はニッコリ笑って、元気よく言ったんだ。



◇◇



耀達の決勝の相手は、「レガシー」っていう県大会で何度も優勝したことがあるチームだった。


緊迫きんぱくした試合だった。


両チームともシュートは打つけどゴールポストにきらわれたり、キーパーがファインセーブを連発したりして、なかなか点が入らなかったんだ。


耀も三本くらいシュートを打ったけど、

大きくわくはずれて全然ダメだった。


耀に対するマークがキツぎたんだ。


だけど後半五分、とうとう相手チームに一点先制された。


ゴール前の混戦こんせんからの失点しってんだった。


その後、相手は守りをかためて来たんで、

耀達はなかなか得点できなかった。


時々カウンターを食らって、防戦一方ぼうせんいっぽうになる場面もあって、ヒヤヒヤした。


「戻れー!」


とか、


「行けー!」


とかさけび過ぎて、僕達はノドがれちゃったんだ。



そのまま試合が進んで行って、残り五分を切った時だった。


時間がだんだん無くなって来て、耀達もあせってた。


だけどここで、耀がまたやってくれたんだ。



耀は中盤で受けたボールを、そのままドリブルで中央突破して、ペナルティーエリアまで持ち込んだんだ。


相手チームは、耀の予想外よそうがいの動きに対応たいおうできなかった。


耀は三人抜いた後、横から来た四人目をかわしてシュートをとうとしたんだけど、四人目のディフェンダーがすべり込んで、後ろから耀の左脚ひだりあしにタックルするかたちになった。


すると、主審のホイッスルが鳴って、耀達は試合終了間際(まぎわ)に、とうとうペナルティキックを獲得かくとくしたんだ。



耀は最初、グラウンドにころがって痛そうにしてたけど、すぐに立ち上がってガッツポーズしてた。


大丈夫そうだったんで、僕はホッとした。



キッカーはもちろん耀がつとめた。


僕は心臓がドキドキして、居ても立っても居られない気持ちだった。


両手を胸の前に組み合わせて、祈るような気持ちで見てたんだ。


[神様お願いします、どうか耀に力をあたえて下さい!]


って、僕は実際に祈ってた。



る前に、耀は深呼吸してた。


それから一度空を見上げたんだ。


そしてボールに視線を戻し、耀はスタートを切った。


耀が勢いよく蹴ったボールは、ゴールどなかの少し上だった。


ボールを蹴った時の、


「ボン!」


っていう音が、スタンドまで聞こえるくらいの強烈きょうれつなシュートだった。



左端ひだりはしを予想してダイビングしてたキーパーは

空中で左足をばして止めようとしたけど、

とどかなかった。


一瞬後、耀の蹴ったボールはゴールネットをらしたんだ。


耀はゴールを決めた後、グラウンドに両膝りょうひざをついて、神様に感謝するように両手を組み合わせ、天に向かって突き上げた。


そしたらチームの仲間達が駆け寄って行って

耀はもみくちゃになったんだ。



地元側スタンドはみんなその場で飛び跳ねて大喜び。


まるで優勝したような大騒ぎになった。


僕もチームの仲間達と抱き合って、

飛び跳ねて喜んだ。


聖司君も直君も嬉しくて泣いてた。

僕も感動して泣いたんだ。



その後、試合は延長戦にもつれ込んだ。


両チームともヘトヘトに疲れててて、

まさに死闘って感じだった。


みんな気力だけで闘ってた。


耀も左脚が痛そうだったけど、

最後まで頑張った。



でも結局、延長前半も後半も、両チーム共に

無得点でPK戦になったんだ。


流れは完全に耀達の方に来てた。


だけど、勝利の女神は耀達に微笑ほほえまなかったんだ。



PK戦では、耀も桜ちゃんも美優ちゃんも得点を決めたけど、最後は六年生キャプテンのあいちゃんが蹴ったボールが、敵のキーパーにファインセーブされて、耀達は負けちゃったんだ。


地元スタンドの声援もその瞬間、ため息に変わった。


相手チームは大喜びでグラウンドを駆け回ってた。


相手側スタンドはさっきの僕達みたいに大騒ぎしてた。


愛ちゃんは、グラウンドにくずれ落ちて泣いてた。


チームのみんなが駆け寄って行って、

愛ちゃんをなぐさめてた。



負けたのは愛ちゃんのせいじゃないって、

観客のみんなも分かってた。


PK戦は運の部分が強すぎるよ。


メッシやロナウドだって、PKは外すこともあるんだから。



愛ちゃんはキャプテンとして、チームを見事にまとめてた。


ディフェンスラインを完全にコントロールしてたんだ。


愛ちゃんがいなければ、耀達はもっと早く負けてたかもしれないんだ。



僕たち野球チームの仲間たちは、


「チックショー!」


って、最初は茫然ぼうぜんとしてたけど、 


「よく頑張った、えらいぞアストラル!

ありがとう!」


って、直君が大声で叫んだんだ。


するとスタンドのいろんな場所から、


「愛ちゃん、泣くな!」


「よく頑張ったぞー! 愛ちゃん!」


「耀ちゃんもよくやった、偉いぞ!」


とかって、いろんな声援が飛んできて、

自然に拍手がき起こったんだ。


観客は選手達の激闘げきとう圧倒あっとうされ感動してた。

みんな選手達に感謝の気持ちを伝えたかったんだ。


[サッカーって、素晴らしい!]


って、僕は心の底から思ったんだ。



◇◇



試合が終わってしばらくすると、表彰式が始まった。


愛ちゃんは準優勝のたてもらって、盾にキスしてた。


もう泣き止んで笑顔に戻ってた。

愛ちゃんはもともと明るい性格なんだ。



耀はね、大会の得点王で表彰されたんだよ。

得点王のトロフィーをもらって耀もトロフィーにキスしてた。


耀は最初の二試合で四得点、準決勝と決勝で一点ずつ得点したから、合計六得点で得点王に輝いたんだ。


表彰式まで僕も知らなかったんで、


「今大会の得点王は、アストラルの海野耀うみのようさんです!」


って、アナウンスされた時は驚いた。


僕は自分のことのように嬉しくて、

ほこらしい気持ちになったんだ。



◇◇



表彰式が終わってみんなで記念撮影した後、

耀達は地元側応援席の真下ましたまで来てくれた。


チームのみんなで一斉いっせいに頭を下げて、地元の応援団にお礼の挨拶あいさつをしたんだ。


地元のみんなは、大盛おおもり上がりで、

拍手喝采はくしゅかっさいしてた。


「耀! おめでとう!」


「桜! 美優! カッコ良かったよ!」


「愛ちゃん! 最高!」


とか、みんな大声で叫んでた。



僕も、


「耀! 耀!」


って叫んで、一生懸命いっしょうけんめい手を振ったんだ。



そしたら耀は、ニッコリ笑って僕に手を振りかえしてくれた。


投げキッスまでしてくれたんで、僕は少し目がてんになったんだ。



聖司君と直君が、僕の背中をたたいて爆笑ばくしょう

てた。

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