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スラッガー⚾️  作者: 宇目 観月(うめ みづき)
17/29

父さんの声

じつは、退院してしばらくってから、母さんが僕に、父さんの若い頃の写真を見せてくれたんだ。


父さんの写真はぜんてたって、前に母さんは言ってたけど、本当は、父さんの写真は家にたくさんあったんだ。


母さんがおしれのおくから出して来てくれた。


父さんが学生服を着てる写真や母さんと付き合ってたころの写真、会社の仲間達との写真や結婚式の時の写真なんかもあった。


僕が生まれた頃の写真もあったよ。

父さんは僕をいて、うれしそうに笑ってた。


父さんが野球のユニフォームを着てる写真もたくさんあった。少年野球の頃の写真なんて僕とそっくりなんだ。


「親子って、何でこんなにるのかな?」


って、僕は母さんにいたんだ。


でんって言うのよ。あなたの体には父さんの血が流れてる。もちろん、私の血も流れてるわ。だから、親子はるの。あなたの顔やたいけいは父さんそっくり。たけどはだの白さと目と口は私にそっくりね」


って、母さんが言ってた。


だから母さんは、僕を野球チームに入れる時

こう思ったんだって。


「あなたは父さんの子だから、野球をやればきっとくなると思った。あなたが、どうしてもいやだったらめてもいいと思ってた。だけど、あなたは一生いっしょうけんめい練習してくなった。あなたの投げ方や打ち方は父さんそっくりよ」



◇◇



ハロウィンが終わって十一月もなかになると僕は母さんと一緒に父さんのおはかまいりに行ったんだ。



父さんのお墓は、けんに住んでるお祖父じいちゃんとお祖母ばあちゃんの、家の近くの、大きなお寺の中にあった。


母さんは今まで、父さんのおはかまいりをする時は僕にないしょで行ってたんだ。



お墓には、


やまはか


って、書いてあった。

下の方を見ると、


やましょう


って、父さんの名前が書いてあった。


僕はその文字を見た時、父さんにもうわけないような気持ちになったんだ。


だって僕は、父さんのことを七年間もわすれてたんだもん。


父さんがひっそりとこの場所で、僕を七年間もっててくれたような気がしたんだ。


[ごめんね、父さん]


って、僕は心の中でつぶやいたんだ。



僕が手を合わせてだまってうつむいてると、


「翔太、大丈夫?」


って、母さんがいたんだ。


「うん、大丈夫。今、父さんに忘れててごめんねって、あやまってたんだ」


「翔太、あやまらなくてもいいのよ。先生がおっしゃったでしょう? 思い出すことの方がせきなんだって。あなたは何も悪くないの、父さんもきっと分かってくれるわ」


「そうかなあ」


って僕が言うと、


「そうよ、自分をめたらダメよ。父さんも決して喜ばないわ。あなたが父さんのおくを無くしてたのは自然な心のはたらきなの。だからあなたは何も悪くないの。前にも話したけど父さんはいつもまえきな人だった。ポジティブ思考しこうでいつもニコニコ笑ってたのよ。あなたも父さんみたいに強くなって」


って、母さんが言ったんだ。 


「うん、分かった。僕、やってみるよ」


って、僕は答えたんだ。




お寺を出る時、さんどうまわりにちょうの葉っぱがたくさん落ちてて、黄色きいろじゅうたんめたようになってるのに気づいたんだ。


その黄色きいろ絨毯じゅうたんがやけにあざやかで、まるで黄金色こがねいろに光っているようにまぶしく見えた。


来た時はあんまり気にしなかったけど、帰りは少し風がいて、黄色きいろちょうの葉っぱが、ハラハラとたくさんりて来たんだ。


母さんは空を見上げて、


「うわー、れいねえ」


って言ってた。


僕はその時、何だかな気持ちになったんだ。


まるで父さんが空から、


『翔太、元気を出せ』


って、かたりかけてくれてるようなかんかくだったんだ。


[分かったよ、父さん、ありがとう]


って、僕は心の中でつぶやいたんだ。

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