12 ぼろぼろでの綱渡り
僕は立ち上がり剣を構える。
ここまでの攻撃によるダメージは残っていて、ふらつく他なかった。
それを見て、フェリアはこちらに寄ってくる。
「幸前! 私だって加勢を……! くっ! あなたを倒さないといけないということ!?」
声の途中でクリーバンが短刀を出して、フェリアは防戦を強いられる。
彼女の援護は頼れない。
しかし、ここまでやってくれたことはこれから生かすほかない。
「何をするのか分からないけど、まるで綱渡りでもしているかのようだな? そんなフラフラだとよ」
大河原君は僕を見て呟く。
綱渡りだというのは同意だ。
僕の勝利への道は心許ない綱の上を歩むしかない。
「……」
「返答の余裕もないと受け取っていいのか? まあいい、こっちは倍加してLV500のステータスがあるからよ。無駄に足掻いてみな」
そう言って大河原君は消えた。
どこから分からないが、殴ってくるのだろう。
こうなっては目で追っても無駄なので、僕はまぶたを閉じた。
感覚を視覚以外に寄せる。
鼻、肌、耳に感覚を集める。
勝負は一瞬。
その一瞬に勝機はある。
僕の中にあるのは沈黙と暗黒。
きっと天川君もこの暗い中で勝機をつかんだのだ。
同じくあの時に綱を渡ったともいえる。
僕も成功させなければ、王への道なんてないにも等しい。
その状態がしばらく続く。
すると、僕の近くで大きな音がした。
分からないが、大河原君が来たこと。
「今だ! 光源化!」
僕は光源化を念じて、剣を光らせた。
これは周囲に入っていれば、前後左右、上空であろうと目が眩む。
どこにいるかなんて関係はない。
「くあっ! こざかしいことを……」
大河原君は拳を再度振る。
しかし、その拳は空ぶったのだ。
それもそのはず、僕はその場からすでにいなかったのだ。
相手は左右、次に前後を見渡していた。
それでも僕はその視界の中にいない。
「フレイムスラッシュ……アクアスラッシュ……ウィンドスラッシュ……」
僕は魔法を唱えていた。
大河原君の上で。
もっと具体的に言えば、上空を飛ぶフォルツの上でだ。
「お前……! いつのまに……」
光を放ってからはフォルツが飛んできて、急いでその上に乗ったのだ。
フォルツは懐いている、それも僕の頷き一つで機会を見計らって来るほどに。
そして、僕が最大限乗りやすいように気を遣ってくれる、これ程のダメージがあろうとも。
あのクリーバンの鎌さえなければ、フォルツに乗っての攻撃も可能であった。
上空での戦いも、そこでの混合魔法も。
「ストーンスラッシュ……混合魔法……」
アークスラッシュの準備もこれで整う。
すぐにでも放てるほどに。
当然のように大河原君は僕の方へと飛んでくる。
それはさすがに許せない、その焦りが見えていた。
「させる」
「アークスラッシュ」
僕は飛んできた大河原君に向けてアークスラッシュを放った。
三日月の形の光が放たれて、成すすべなく受ける。
その光は瞬時に強大化していき、相手を地面へと叩きつけるとともに押しつぶす。
轟音が響き、その後に三日月の形の光も消失する。
この斬撃を受けて、大河原君の動きは止まった。
まとっていた金色の気も消滅して。
これで大河原君も戦闘続行不可能だと思いたい。
「幸前! やったのね?」
フェリアは僕に向けて言葉を出す。
彼女はクリーバンと戦っていた。
冒険者の方を倒せば普通は戦闘が終わる。
しかし、今回はメイルオンさんも立ち会ってなく、普段の冒険者との戦いではない。
パートナーの方も倒すべきだろう。
「ああ、今からそっちの援護に入る」
フォルツに乗りながら僕は剣を握る力を再度出す。
痛みもあったが、慣れてきたのか少しは楽になっている。
戦えないことはない。
「ごめんなさい。私がこいつにてこずっていたから……」
フェリアはクリーバンから向けられた刃を短刀で弾いて謝る。
戦闘中での私情事だが、現時点ですでに二対一。
ほぼ勝負は決まったようなもの。
「いや、逆だ。君が鎌を引きはがしてくれたから、フォルツに乗れたんだ。感謝したいくらいだよ」
「そうなの? だったら少しは役立ったのね?」
「そういうことだよ。僕は援護に回るから後は頼む」
僕はそう言って、手を前にかざす。
何かあったときに剣は振れるが、期待した結果に間違いなくならない。
僕は援護に徹する方が最善だ。
「分かったわ」
クリーバンからの攻撃が来て、フェリアは後方へと飛んで弓矢を構える。
矢は三本。
「僕はこれだ。風魔法、ウィンドサイス」
僕からは魔法を唱える。
それも攻撃魔法巨大化も念じてだ。
三つの風の刃はそれぞれ半径2Mほどの刃になる。
矢も二つ含めて、それらがクリーバンへと向かっていった。
相手は横に飛んで矢をかわすも、風の刃は湾曲して向かう。
速度もある上に大きさもある、かわすのは困難だ。
それに対してクリーバンは両手から刃を出して、風の刃を二つ消し飛ばす。
しかし、残り一つは対処できなかったことから受けてしまった。
おそらくは一つだけ受けるのを覚悟しての対処か。
「では、幸前。この隙を」
「そうだね。相手の裏を僕は狙う」
その提案を受けて僕を乗せたフォルツは前へと飛んで行く。
同時攻撃をする提案を。
僕は飛んで、クリーバンの真後ろへと向かった。
機動力はフォルツの方が断然早い。
僕とフェリアで相手を挟む位置まで移動すると、一気に距離を詰める。
相手はこれを見て右往左往の状態。
「「はあっ!!!」」
二人の刃がクリーバンを挟むように突撃していった。
正反対の場所からの挟み撃ち、かわせるはずがない。
クリーバンはそれを受けて、回転しながら宙を浮く。
二人の突撃の勢いも収まったところで相手は地面に落下したのであった。
相手二人も立つ様子はない。
これで僕たちの勝利になったということだ。




