10 自然治癒が無効化されて
僕と大河原の戦いが始まった。
一方でフェリアは弓矢を三つクリーバンへと放つ。
クリーバンはその内の二つが向かうも、それをかわして鎌を振ってきた。
離れているが、狙いはフェリア。
突如、彼女の前に黒い刃が現れて、それをかわす。
「く……瞬時に遠距離に届く刃と弓矢ではやはり違いますわね。」
フェリアは苦い言葉を呟く。
あちらの戦いはリーチの違いが敵の方に分があった。
空を飛ぶことが出来るフォルツに乗る戦いもあるだろう。
その戦闘も方法の一つにあるけど、相手が空中からも刃が出せるとなれば空中での戦闘はやめた方がいい。
場合によっては僕の真下からの攻撃だって、飛んでいればあり得るのだから。
空を飛んでいるからと言え、有利になるとは限らない。
僕の脇から黒い霧が沸き上がる。
「それは……おっと!」
黒い霧が消えたと同時に黒い刃が出て、僕は言葉と共に避ける。
クリーバンが鎌を引き抜くと、その黒い刃も縮まって消滅する。
あの黒い刃は突然来るわけでなく、飛んでくる前兆もあると分かった。
最初は防げなかったが、注意して見ていればこれもかわせる攻撃だ。
「攻撃したいというけどしていいんだぜ? こっちが早く攻撃するけどよ!」
大河原は拳を下げて僕へと突っ込んでくる。
何もしなければ僕に当たるだろう。
「だったら僕は……」
僕は呟くとともに上に手を伸ばした。
攻撃の対処のために更に握る動作をとる。
握った先には空気しかないが、そこに向けて薄膜化を念じた。
大河原君はそのまま僕へと殴りにかかる。
グローブの攻撃は早い。
避けることもなく攻撃は当たってしまう。
「? この感触は……」
大河原君は僕を殴って違和感を口にする。
僕が得たスキル、薄膜化は念じた物に膜を精製する。
その念じた物が空気であれば、その空気の周囲を膜に変化させる。
その膜に映るものは自在で、僕自身と背景の映った光景を瞬時に載せることも可能。
今大河原君が殴ったものは僕の映っている膜。
僕自身が殴られたわけではない。
「受けよ!」
僕は回り込んで大河原君の横から突きを放つ。
相手は無防備で、防ぐ時間も与えるつもりもない。
「くぉ……!」
大河原君はこれを受けて、後退する。
僕の剣、ラルテアソードは特殊な効果はない。
でも切れ味と軽さに特化していて、並みの盾なら簡単に貫くほどだ。
そう簡単に防げる斬撃ではない。
引き抜いて、再度の突きを僕は放つ。
しかし、その突きは予想出来ていたのか、拳を向けて弾かれてしまう。
相手もまた機動力は高く、難しそうだ。
「攻め込むのもそう簡単には行かないようだ……」
苦みがある言葉を僕は出す。
出来ることなら耐久力はアクアヒールで回復させたい。
だが、その魔法詠唱は短縮できないため、どうしても時間がかかってしまう。
大河原君がそれを許すはずはないので、使える状況ではない。
同様にアークスラッシュのような混合魔法も狙いたいが、それも無理そうだ。
それを行うに四つ分の魔法を唱える時間が必要で、今の大河原君はそれを許してくれそうにもない。
すると、別方向からの声が響く。
「幸前、後ろ! 刃が来ますわ!」
フェリアの声、その後にすぐに後ろを見る。
黒い霧から刃が伸びようとしていた。
「おっと! ギリギリ当たらなかったようだね」
僕はかわしつつ話す。
フェリアの声がなければかわせなかっただろうし、感謝だ。
そのフェリアは再度三つの矢を放つ。
二つがクリーバンへ向かっていくと、それは避けられる。
二つの矢は避けられた。
だがだ。
もう一つの矢がクリーバンの後ろから飛んできた。
それを避けるすべがなかったことから相手に当たってしまう。
当たった矢は今フェリアが撃ったものではない。
彼女が最初に放った矢が停滞していて、それが動いたのだから。
クリーバンに隙が出来た。
黒い刃の攻撃はその隙のうちにはしてこない。
この機を利用しないと。
「おらよ! 余所見はいけないなあ!」
大河原君が僕へと向けて拳を振り下ろす。
それを僕は後方へと飛んでかわした。
拳が地面に落ちると、地面が円を描くように割れて、破片も浮く。
まともに当たればひとたまりもない。
「ならば……土魔法、ストーンエッジ」
僕は魔法を唱えて、足元の魔法陣から岩の破片が四つ現れる。
そして、攻撃魔法巨大化を念じる。
すると岩の破片一つ一つが自転車並みの大きさへと急変した。
このスキル、攻撃魔法巨大化は魔法力を消費して攻撃魔法が巨大化するのだ。
「何!? ストーンエッジがあんなに大きくなるのか!?」
大河原君の驚き。
初期で覚える魔法がこんなになるなんて思わないだろう。
その反応をしてもらえて、僕自身も面白いと思う。
巨大化したストーンエッジが大河原君へと拡散するように向かっていく。
魔法自体のレベルも上がっていて、速度も威力も十分脅威だ。
「さあ、どうする?」
着地しながらの僕の問い。
流石にただ黙って当たるとは思えない。
何かしらの対処があるはずだ。
「こう来るなら、こっちは……!」
大河原君は立ち止まったまま、拳を下げる。
そして、岩の破片の一つに拳を向けた。
轟音とともに当たった破片の軌道がずれて、地面にぶつかる。
破片に気を取られている今は好機。
こちらの攻撃の隙は逃すわけにはいかない。
僕はすでに走っていて、相手へと接近していた。
剣を携えた僕と大河原君、二人の視線が合わさった。
「目くらましと行こうか」
僕は剣に光源化を念じる。
すぐさま剣は白く発光し、周囲を光で照らす。
「なっ……! こんの……!」
急な光で大河原君も目が眩んだだろう。
僕は事前に光を遮っているので、問題はないけど。
光が収まったと同時に僕は突きを放つ。
相手に攻撃が当たり、さらに突きをもう一つ放つ。
これが当たればさらに突きを続けて、多量のダメージを狙うつもり。
そう思っていた時だ。
「ん?」
僕の放った突きは相手に刺さらなかった。
手で握られて防がれてしまったから。
「こう来るとは思わなかったな。だがその攻勢もここまでだと思え」
こう大河原君は呟く。
突きを防がれたことは残念だが、そこまで残念がることでもない。
片手もあるし、魔法だって可能だからだ。
僕はすぐさま片掌を前に出して、魔法陣を出し始める。
「炎魔法、フレイムショット!」
片手から火の玉を生み出し、さらに攻撃魔法巨大化を念じる。
火の玉は直径4Mの玉へと変化する。
ここまで大きくすれば、当たるのは必然のこと。
しかしだ。
火の玉は当たって散ることもなく、いるはずの相手に当たった感触もない。
通り過ぎたあとは大河原君の姿はなく、僕は左右を見渡す。
それでもいなかった。
「このスキルを出すために時間が必要だったが、ようやく発動できたぜ。デュアルスピードのスキルを」
ふと大河原君の声が離れた位置から聞こえる。
そこへ向くと、相手は着地をした。
上へと飛んで逃げたわけか。
それは分かったが、あれだけの至近距離をかわしたことに驚く。
おそらくは機動力が瞬時に変わったためか。
推測だが、相手の言っていたスキルが発動したように見えることもある。
少なくともわかることは、大河原君の機動力が倍以上になっていることだ。




