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9 いつもと違う冒険者との戦い

 僕とフェリアはフォルツに乗って、大河原の案内の元で道を進んでいた。

 移動中での罠も特になく安全に進んでいく。


 そして、大きなスペースのある公園のような場所へとたどり着いた。


「ここで戦闘という訳ですわね。狭くはないようですし、壁も気にせずに戦えそうですわ」


 フェリアは場所を見渡して呟く。


 スペースにはぼさぼさの黒い髪でスーツの男と鎌を持った黒い布を深々と被った人らしき者が待っていた。

 大河原とクリーバンはあの二人なのだろう。


 フォルツから下りて僕とフェリアは進んでいく。

 頭骸骨も役は果たしたということで、霧のように散って消滅した。


「君が大河原君で、間違いないかな?」


 僕からの確認。

 さすがにこんな状況で一般人がここにいることはあり得ない。

 でも、一応の確認としてだ。


「ああ、そうだ。俺が大河原だ」


 大河原君がそう答える。


 近づいてわかるが、僕よりも大きい。

 年上かもしれないし、君付けで呼んでしまったのは不味いのかもしれない。

 でも、この際どうでもいいことか。


「招待してくれてありがとう。しかし、君は僕をほっとけば復活できたろうに、わざわざ呼んだ理由があるのかい?」


「それを聞くか? 俺とお前が配下だっていうのに」


 大河原君が聞き返す。


 二人が配下という語句が出た。

 ならば、理由は予測がつく。


「ああ、やはりそういうことか。優勝候補を倒すために力が必要だって理由だね?」


「そうだ。他の冒険者だけじゃ物足りない。だが幸前、お前を倒せば復活した後にジャクソンを倒せる」


「それだけ君の上司は強いということか。ここまでの騒動を起こした張本人だけはありそうだね」


「ジャクソンの奴は強いからな。もしかすると、お前の上司よりも」


 大河原君が強さについて語り出す。

 同時に手を動かして、その際にグローブのようなものをはめていることも分かる。


 どうも、あの大河原君は天川君を甘く見ているようだ。


「それはどうだろうか? 僕の上司的存在、天川君はステータスだけで測れない強さがある。侮れば確実に負けると思っていい」


 反論した方がいいと思い、僕はこう答えた。

 かつて僕は侮ることなく戦った。

 しかし、それでも僕は負けたのだ。


 侮ればどうなるか、結果は見えている。


「そうか、天川ってのと俺はどうなるか分からないがな。でもよお前、随分と余裕そうだな?」


「おや、そうかい? 僕はこれから戦闘をするつもりで来たから……」


 確認に対して、僕は否定で返す。

 大河原は僕より強い可能性だってある。

 顔から判断されるかもしれないが、内面は余裕があるとは言えない。


 ふと、僕は背後から何かを感じた。


 何かが来たことは分かる。

 それを何か確認するために後ろを向くとだ。


 黒色の魔法で出来た刃が宙に浮いていた。

 それは、僕の胸を貫く形で。


「メイルオンの手が回らない状況なら、こんな不意打ちだってありなんだよな。状況理解が浅いやつだ」


 大河原はにやつきながら、こう語った。


 今ではメイルオンさんが忙しい状況。

 戦闘の立会だってできない状況。

 こんなルール無用の戦いになったはず。


 そう思ったのも今になってやっとだった。


「ぐあぁっ!!」


 黒色の刃が僕から抜かれた。

 僕は地面に手を付き、傷を抑える。


 鎌の人物、クリーバンが同時に引き抜く動作も見せているので、それの仕業なのだろう。


「幸前!!」


 フェリアは驚きと心配の言葉を向ける。


「痛いけど、戦えないほどではない……心配いらないよ」


「く……不意打ちなんて真似を」


「不意を突かれたのは僕が悪いし、大丈夫だ。時間が経てばこの傷もなかったことに」


 僕にとって傷はさほど問題でもない。

 自然治癒のスキルおかげで傷がなくなるとも言える。


 だが、それでも大河原のにやつき顔はまだ変わらない。


「自然治癒スキルだよな。本当にいいもんだよなー? でも、それに頼りすぎているならかなりやばいと思うぜ?」


 もったいぶったような大河原の言葉。


 嫌な予感がした。

 これに似た前例が少し前にもあったからだ。

 僕はステータスオープンをする。


 そこには自然治癒のスキルの後に無効の文字があった。


「……自然治癒が無効。まさか、さっきの鎌の攻撃で?」


 僕の耐久力は30000/35000。

 事前に回復する見込みはないと見ていいだろう。


「そういうわけだ。クリーバンの攻撃はスキルを無効化していくから、気を付けなよ」


 そう言うと大河原は僕へと向かって駆け出す。

 僕は手を付けている状況、確かに今の内に攻撃する他はない。


 僕は立ち上がると、フェリアがすぐに弓矢を構える。


「私の存在を忘れては困りますわよ! スキル一つが無効になったところで!」


 フェリアが矢を四つ飛ばす。

 その矢は大河原に二つ、クリーバンに二つとそれぞれ異なる曲がり方で向かっていく。


 彼女の弓はテイラズの弓と言われて、以前の天川君との戦い以降で手に入ったものだ。

 魔力で軌道が変わるようになっていて、それは矢を停滞させることも可能とする。


「おっとそうだな。クリーバン、お前は後方で援護してくれ」


 大河原はその矢へと拳を向けて弾く。

 クリーバンの方は鎌を回転させて防壁とし、防ぐことになる。

 予想は出来ていたことだが、簡単に当たってくれない。


 再度、大河原君は僕の方へと駆けていく。


「接近戦がメインと言ったところか、大河原君は」


 見たところの分析を僕から呟く。

 武器の見た目もだし、今のところの動きも合わせて、少なくとも大河原君は遠距離で戦う敵では無いようだ。


「隠せることでもねえしな、その通りだ。だが、リーチが勝っているからって有利と思うなよ?」


「ふむ……そうか」


 僕は呟く。

 剣とグローブのリーチ差、これによってリーチが勝っているから勝ったと思うほど甘くはない。


 大河原君は一度立ち止まって、片掌を前に出す。


「俺は遠距離から攻撃できねえわけではないからな! 炎魔法、フレイムレーザー!」


 大河原君の掌からレーザーが瞬時に僕の足元に飛んで行く。

 同時に僕は後方へと飛ぶと、レーザーが地面に当たる。


 当たった地点から炎が急に巻き上がった。

 それもかなり半径5Mはあるだろう、大きな炎だ。

 避けなければ火に呑まれていただろう。


「そろそろ僕も攻撃に移ろう。攻撃しているだけでは大河原君も退屈だろう?」


 それに僕だって天川君に負けてからはLVが上がった上に、戦闘で使えそうなスキルだって増えている。

 戦闘で使えそうなスキルは四つ、光源化と薄膜化、攻撃魔法巨大化と魔法混合化。

 他にも獲得したスキルはあるけど自動で強化するスキル以外は他に使えそうにはない。


 さらにはヴェルナ戦の後に貰った剣もまた戦闘で使えることが分かった。

 その剣は持っている間スキルを所持できるものであり、僕の戦闘での手段だってあれから増えている。


 スキルが一つ減ったところで戦えないわけではないんだ。

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