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11 自然衰弱のスキルを受けて

 俺はヴェルナにされたことに驚く。

 まさかスキルを書き換えられようとは。


 そんな驚きの中、幸前は俺を見ていた。


「天川君。どうも僕もスキルが変わっているようだ」


 ステータスウインドウを開きながら幸前は語る。

 俺にやっていたことを幸前にもやっていたようだし、こうなるのは予想できることか。


「幸前までもか! ちょっと待ってくれ、デメリットのあるスキルだったら……」


 俺は残念の言葉を出した。

 自然治癒が真逆のスキルへと変わってしまうなんて。


 だが、対処できる範囲のことだ。

 デメリットのあるスキルならば、スキル発揮解除選択で無効化できる。

 早速、俺は自然衰弱を無効化してみる。


 ステータスを改めてみると、耐久力は22500であった。

 減っていく様子もなく、成功と言える。


 対してヴェルナは円盤を俺達に向けて飛ばしてきた。

 円盤の数も多く、範囲も広い。

 流石に相手も黙ってみているわけでもないか。


「防御は僕の方で何とかするから、スキルの方を頼みたい」


 幸前はそう言って、アイテムボックスから盾を取り出してきた。

 盾を円盤の方へと掲げつつ幸前が俺の方へと向かうと、それを中心に半透明な半径5Mほどの円が現れる。

 円盤はその円に弾かれた。


 幸前にもスキル発揮解除選択をスキルコピーしなければ。


 俺は彼の元へと向かっていき、手を伸ばす。


「よし、スキル発揮解除選択をコピーした。無効化したいスキルを念じれば行けるはずだ」


 幸前に触れて、スキルコピーを念じる。

 スキル発揮解除選択は消えるだろうが、おそらく無効化したことは自然に消えないはず。

 自然治癒も無効化されたようなものだが、逆に減っていかないだけましと言える状況だ


「分かった……よし、なんとかうまくいったようだ。耐久力の減少も止まった」


 これで幸前が何もせずに負けることはなくなった。


 あとは、ヴェルナの撃破だ。

 しかし、そのヴェルナはかなり大きい、そこが問題だ。

 円盤一つ一つは小さいのだが、その数が千枚以上あって形成している姿を大きく見せている。

 その姿は10Mはあるだろう。


 倒すのも一苦労しそうだ。


「これから仕切り直しと行くか。幸前、まずは俺から仕掛けたいんだが、いいか?」


 ちょっとした作戦を思いついて俺は提案をしてみた。

 俺は続けて小声でその内容を話す。


「ああ、分かった。僕は準備をする。フェリアも援護に回ってもらおう」


 幸前から了承を得た。

 フェリアも頷いて了承すると、ヴェルナは再び数多くの円盤をこちらに飛ばしてきた。


 対して、幸前は再び盾を構えて円を発生させる。

 その円が円盤から守ってくれた。


 召喚の機会としてはかなりいい状況。


「それじゃあ呼ぶか。狐燐さん、来てくれ」


 俺は言葉と共に狐燐さんに念じる。

 召喚は短時間の間ここにいてもらう方。

 魔法陣が俺の足元に現れて、そこからスーツ姿の狐燐さんが出てきた。


「呼びましたか? 照日君」


 狐燐さんの言葉。


「俺に化けて同時に向かってほしいんだ。それとちょっと託すものもあるから」


「分かりました。指示通りに」


 狐燐さんから了解を聞く。


 俺は剣に魔力を込めて結晶を作り、粘着化経由で圧縮もした。

 狐燐さんも真上に飛んで縦回転をすると、俺と全く同じ姿に変わる。

 ベルガルドエンデスも同様に持っていて、偽物の姿として申し分ない。


 そして、今は幸前の盾と円に隠れている状態。

 召喚して俺が二人いるなんてヴェルナは見ていない。

 それも含めて絶好の機会だ。


「じゃあ、行こう!」


 俺は剣を真上に向け目の前に出して、偽物の俺も同じようにして、剣を合わせる。

 そして同時に二人の俺は幸前の左右へと別れていく。


「何? 二人の天川だと!?」


 ヴェルナの驚き。


 いきなり俺が二人なんて驚くだろう。

 それにこの手を見せるのも初めてだから。

 左右に分かれた二人の俺はヴェルナへと向かっていく。


「「そういう訳だ! どっちも本物と思った方がいいぞ!」」


 二人の俺が同時に同じ言葉を放つ。

 しかし、ぴったりと言葉を合わせるとは狐燐さんはさすがだ。


「だが、どっちかは本物の劣化だ。アムリスはどちらか一人にしかいない上、本物の力は偽物に使えない!」


 ヴェルナから数多くの円盤攻撃を向けてくる。

 向ける先は二人の俺にそれぞれ。

 それは俺も想定していたこと。


 二人の俺は剣を前に出して、結晶を精製した。

 その結晶を盾にしつつ走っていき、円盤を防ぐ。


「「言っただろう? 二人とも俺の本物だって」」


 当然、狐燐さんに結晶を精製して、盾にする力なんてない。

 俺は事前に結晶を精製して圧縮したものを偽物の剣に付着させた。

 付着させたのは偽物と本物の剣をお互いに触れあった時。

 その結晶を遠隔操作して、彼女も操っているように見せているのだ。


 俺達は盾にした結晶を剣の持ち手へと圧縮してしまう。


「くぅ……ならば次は……!」


 ヴェルナは二人の俺の前に数多くの円盤を飛ばしてきた。

 先ほどと同じ攻撃か。

 そう思えば、円盤は俺達の前に止まり、白い部分を見せる。

 瞬間、飛んできた円盤から光が発せられる。


「「なら、防ぐ!」」


 二人の俺は結晶を盾に形成して光を防いだ。

 光を浴びるのは不味いことも知っている上に、攻撃自体も来ると分かって防ぐ必要は認知していた。

 その甲斐もあってか、光に目が眩むこともなく、俺は光を防げた。


 今の俺とヴェルナの距離はもう少しで剣が届くというところ。


「く……」


「「行くぞ……!」」


 俺達は剣の結晶を鋭利に伸ばして、長い剣を精製する。

 対して、ヴェルナは数多くの円盤を盾にして、二人からの攻撃に防御の態勢をとった。


 俺達はその盾の存在を眼中の外に置いて、相手へと剣を振り上げた。

 結晶自身も鋭利な武器として使えるのは、赤城達にも実証済み。


 円盤の盾は破られて、すぐさま二つの斬撃がヴェルナへと届く。


「うがあ……」


 ヴェルナは声を漏らす。


「さて、幸前……準備は十分だろ?」


 俺は幸前の方へと視線を向けて声を出す。

 同時に、左にいた俺は狐燐さんへと変わる。

 偽物は左の方であった。


「ああ、十分だし、余裕さえもある。助かったよ」


 そういう幸前の足元には魔法陣が出ていた、普通以上の輝きを放って。

 更にフェリアの前には数多くの矢が空中に停滞していた。


 あの時話したちょっとした作戦。

 その内容は俺が準備の時間と隙を作って、アークスラッシュまでの準備を整えることだ。

 ヴェルナを倒すにはこの魔法こそが一番いいからだ。


「じゃあ、頼む」


 俺からの言葉。

 そのあとに俺と狐燐さんはヴェルナから離れて行った。


 すでに幸前の剣には赤青緑茶の四色の光があふれている。


「混合魔法、アークスラッシュ」


 幸前は剣を振り下ろすと、三日月状の斬撃がヴェルナに届く。

 そして、フェリアは弓から矢を放つと、停滞していた矢も一斉に向かっていく。

 斬撃を受けて、矢も届く。


 瞬間、大きな爆発が響いた。

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