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7 懺悔と告白

三行あらすじ

・照日、武器を捨てる

・ブレザー粘着化で危機回避、ゴブリンのリーダーも撃破

・三木島、謝る


・銀色パンツでも手を打てなかった

 三木島は頭を下げて、謝罪をしていた。

 音と現状を察するに、三木島が勢いよく頭を下げたんだろう。

 俺がやったらかなり痛そうだもん。


「三木島……謝るのはいいけど、今じゃなくても……」


「いいんだ! 俺は今日、天川から四千円持って行った、それも返す。あれは、むしゃくしゃしていたからやっちまったんだ」


「おい、何もそこまで言えって言ってないぞ」


 他の人だっているんだぞ。

 ほら、他の縛られた人も三木島に視線を浴びせている。


「いい! こんなことしないと俺の気が済まないんだ。それで、俺は気に入らないからと、天川を殴った。何発かなんて正直覚えていない、これは何度もやっていたことだからだ」


 三木島は謝罪を続ける。

 よく見ると、地面は少し血が流れているようだ。


「俺は今まで天川をいじめていた。だが、そんな天川は人質となった俺に手を出さないよう、動いてくれた」


 俺は無言の中、三木島の謝罪を聞く。


「俺は今日生きていて、これ程恥ずかしいことはねえ! だから、この場で謝りたいんだ! 俺が悪かった!」


 三木島の謝罪。

 彼が心の底から謝っていた事は分かる。

 謝ってまたいじめようと考えているなら、関係ない第三者もいる中で、こんなことはしない。

 今まで、いじめやカツアゲは人にばれないように努めていた。

 それをばらすってことはもうしない意思があってだろう。


 俺は三木島の後ろへ移動する。

 そして、手足を縛る縄へと手を伸ばす。


「三木島、お前の気持ちは分かった。だから、許す」


 縄に粘着化を念じると、縄は縛りを緩くする。

 粘着はしていたが、これで三木島の手足は左右に動いていた。


「天川……」


 頭を上げずに、三木島は呟く。


「三木島、頭はもう上げていいんだ。俺はお前を罪悪感で縛るつもりもない」


 粘着化した縄を引っ張って、粘着解除。

 縄は三木島を開放して、俺の手に収まる。

 彼は頭をこちらに向けた。


「天川、本当に助けてくれて……ありがとう……!」


 額から血を流しながら、三木島は礼を言った。

 これで、三木島は俺をいじめることはないだろう。


「よし、あとは人質の解放だ」


 敵ももういないし、粘着化の能力を使えば開放も早そうだ。

 次にと中年の黒い髪の男性へと向かう。


「ホント、君には感謝だ。おじさんはここに様子見をしたら捕まって、何もできなかったよ」


 男性からの感謝を聞いて、俺は縛られた縄へと手を触れる。


「正直、俺は運良く戦える力が入っただけで、ここまで行けました」


「でも、今までいじめられていたんだろ? 君はそれでもこんなことが出来るなんてすごいよ」


 俺に対してすごいとの言葉。

 こんな言葉はたまにしか聞かない。

 今まで普通にいじめられるだけだったから、すごいと評価された回数は今まで百回にも満たないだろう。


 だからこそ、素直にうれしかった。


 俺は粘着化して縄を手にまとめて、粘着解除する。

 そして、俺はあることに気づく。


「そうだよ! 俺、いじめられっ子だったんだよ! なんかいつの間にか、とんでもないことしてしまったぞ!」


 俺がいじめられっ子だっとこと。

 男性の言葉を聞くまで割と忘れていた。

 三木島の言葉? そのときは解放が優先だったから、俺がいじめられっ子だなんて頭になかったんだ。

 そこはおかしいことじゃない。


(照日、反応おっそいわね。そんな反応、今することじゃないわよ)


 そうは言うが、アムリスよ。

 いじめられっ子がダンジョンクリアなんておかしい話だろ。


 これでも、俺は勇気なんて出せるたちじゃない。

 今回のは色々流されたって動機で、ここにいるんだよ。

 いつの間にか逃げられないって思いで、いつの間にかここにいたって感じなんだ。


 そんなことを思いつつ、俺は人質を解放しつつ、縄を確保していった。

 そして、人質全員とダンジョンを脱出した。




 人質とダンジョンを脱出して、俺はそれぞれの人たちの帰り道を護衛していった。

 やったことは、個別で別れることなく、全員でそれぞれの帰り道まで移動。

 捕まった人は全員で十人、しかもそれぞれの家はダンジョンからそれほど遠い場所ではない。

 個別に分かれても帰りまでの時間はかからないも、別れてゴブリンなんかに襲われれば、俺が助けた意味がない。


 途中の護衛で

「あんなモンスターがいるんだな」「野次馬は行くんじゃないな」「こんなことがあったから自衛隊はどうなるんだ」

 と、捕まった人たちは言ってもいた。

 まあ、現実世界にいきなり驚異的存在の出現だし。

 色々な人たちが黙っていないよね。


 それをやって、あとは佐波さんを護衛するだけとなった。

 今はブロック塀が囲む夜の道を俺とアムリス、佐波さんの三人で移動中だ。

 離れたところに、ダンジョンはそのまま残っていて、今日のことの象徴のように鎮座していた。


「天川君。今日は本当にありがとう」


 佐波さんからの礼。


「まあ、一緒にさらわれた人からも助けてと頼まれたからね」


 それに俺は答えた。

 あと、外に放置した俺が飲んだ飲み物も回収して持っている。

 そのまま放置していたら悪いし。


「今日の天川君。本当にすごかったよ。もっと自信を持っていいくらいだよ」


「そ、そうかな……? まあ、とりあえず、これからもモンスターを倒していこうとは思う」


 俺はちょっと照れ気味で言葉を返す。

 その後にアムリスは飛びながら口を開く。


「そう言ってくれると私も嬉しいわね。これからも、よろしく。照日」


「ああ、それも構わない。でも、そろそろいいか? 教えてほしいことがかなりあるんだよ」


「そうね。急を要するいろいろなことが落ち着いたし、私も話すべきだと思うから」


 ようやく、聞きたいことがいろいろ聞けるわけか。

 まず聞きたいことを俺は口に出す。


「まず聞きたいことは、ダンジョンについてだな。何であんなのが急に出てきたんだ?」


「私のことじゃないの? まあ、ダンジョンについてはね。私たちの世界では王様を決めるためにこの世界でダンジョンを出すの。で、期間を決めて、その中のモンスターを一番多く倒した者が王様になる決まりなの」


「ダンジョンねー……ずいぶん大掛かりなことを」


 現状を見るに結構迷惑だよな、このダンジョン。

 今の俺は複雑な表情だろう。

 アムリスのおかげで周りからすごいと言われることに至ったが、やはり迷惑ではある。


「その、ごめんなさい。私もこんなものが現れるなんて思わなかったから。前は外見を大きく変えるような変化を出さないでいたのよ」


「そっか。ん、前てことは、以前も王を決めるためにこんなことをやっていたのか?」


「そうよ、しかもこの町で。前はひっそりとやっていたのだけど、今回はかなり大掛かりとは思わなかったわ」


「以前もこの町で……俺の記憶はこんなダンジョンが出た覚えもないな。で、アムリスは王様へとなるためにこの王様決定戦に参加したと」


「いえ、王様になることが目的ではないの。私は王様に興味はないから」


 王様への興味があったから参加かと思えば、その解答は意外だ。

 あと、ダンジョンのことはアムリスが謝っても仕方ないことだし、俺から責めることはない。


「じゃあ、何のために?」


「私はね。今回の決定戦に真相を探りたいから参加したの。王様であるパパが、なぜ私を参加させたかを探るため」


 アムリスは何気なく語る。

 その言葉に驚きがあった。


 アムリス、お前、王様の娘だったのか。

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