6 ヴェルナ配下の冒険者たち
「邪魔しそうな敵が……弱ったな」
俺からの呟き。
こちらはハルトさんを外へ送らないといけないのに。
「いざとなったら、僕一人で相手しよう。フェリアだって戦えるから実質は一対一の二つの勝負になる」
幸前からの提案。
任せるのは申し訳ないが、素直に受け入れるのが一番最善だと分かる。
任せなければ、ハルトさんを一人にして送ることになり、それはまずい。
「そうか? 迷惑かけてすまない」
俺はその提案を受け入れる。
ここで足で床を二度踏む音。
踏むというより、踵を付けたままそれ以外の部分でノックするに近いか。
コートの男の方からだ
「おっと。そうやって逃げて、態勢立て直しってのは困るなあ、天川照日」
コートの男性から釘を刺すような言葉。
「俺の名前も知っているのか」
立ち止まって、俺は言葉で反応する。
優勝候補の地位に立っている以上、知られてもおかしくない。
驚きはないこと。
「そういうことだよ。後ついでに、俺は冒険者って区分けにある。まあ、冒険者って名乗りたくはないんだけどよ」
冒険者で俺の敵だということ。
悪い予感は強まる。
それでやることと言えば一つしかない。
「……そうか。どうも嫌な予感は当たったようだ」
「天川照日、俺は決闘を申し込む」
その嫌な予感を起こすと、直々に言われる。
決闘からは逃げられないし、俺はこの場にしばらくいないといけない。
一方、髭の男性は幸前の方へと視線を向けていた。
「それと俺は幸前継刀へと決闘を申し込む」
髭の男性の言葉。
「……どうも僕も逃がしてくれないらしい。天川君」
幸前は手を挙げて残念がる。
これで、俺と幸前は逃げるわけにはいかなくなった。
「ふう……やってくれるよな。これでハルトさんは残ってもらうしか無いようだ」
俺は愚痴を呟く。
ハルトさんはガッツポーズをしていたような気もするが、そこは触れないことにする。
あの人にとっては好都合だろうな。
メイルオンさんがどこからともなくワープして出てくる。
冒険者の戦闘になったので、恒例のように。
「では、決闘の宣言を聞きまして、エルドシールダー所属の私、メイルオンがジャッジを務めさせていただきます」
メイルオンさんからの宣言。
そういえば、今回同時に二つの戦闘するんだよな。
メイルオンさんあっちも見て、こっちも見てで出忙しないな。
そう思っていた時だ。
「え? 嘘だろ?」
なんと、幸前の近くにもメイルオンさんが現れたのだ。
俺の近くにも全く同じ人がいるのに。
「では、決闘の宣言を聞きまして、エルドシールダー所属の私、メイルオンがジャッジを務めさせていただきます」
先ほどと同じメイルオンさんからの宣言。
まさか双子だったのか。
(あれ、知らない? メイルオンさんは分身して見届けができるのよ、照日)
アムリスからの解説。
まじか。
でも、どれくらい冒険者がいるか分からないから、こうやって分身でもしないと冒険者の戦闘を見届けられないか。
想像できないほどの数の冒険者を考えれば納得する。
こうやって決闘を申し込まれた以上は下がるわけにはいかない。
だが、一つ思ったことがあるので、それを言葉に出してみる。
「メイルオンさん、この決闘って冒険者での一対一だよな? これで部外者が巻き込まれるってことは?」
「いえ、それはあり得ません。私の方で部外者を巻き込まないように見張ってもいますので、それに防壁も用意します」
メイルオンさんの言うことであれば信頼できる。
流れ弾がハルトさんへ、という心配はいらないようだ。
相手を倒すことだけに専念できそうだ。
「ならいいか。ということで、お前はさっきの鉢巻の三人のようにすぐに倒す」
先ほどの三人のように簡単にはいかないかもしれない。
だが、この男性は時間をかけずに倒したい気持ちだ。
すると、コートの男性の表情が怒りへと変わる。
鬼のような目に見える表情ではないが、静かな怒りだ。
「お前……赤城たちを倒したんだな?」
「ああ、そうだが。お前が頭か、もしや」
鉢巻の男性たちは頭もいると言っていたが、その頭が目の前にいる男性か。
状況と消去法で考えれば、おそらく確定だろう
「俺が頭だ。だからな、俺はあいつらの敵は打っておきたいんだよ。天川、お前を選んだのはいい選択だったよ」
「そっか、俺は敵討ちされる立場になったと」
「そういうことだ、覚悟しろよ。あと、ヒゲ大臣も抜かって醜態をさらすなよ」
コートの男性は髭の男性へと目を向けて、注意をする。
「それはお前もだぞ、じゃがいも農家」
髭の男性からも言葉を返される。
コートの男性、じゃがいも農家やっているのか。
いまいち見た目からはイメージできないな。
コートの男性の足の裏から黄色い液体が現れる。
それが渦巻くように包み込んだ。
液体がはじけ飛ぶ。
その後に男性は仮面と黄色い鎧、片手には鋭利な杭をまとった姿を見せる。
さらに髭の男性も左右から紫色の液体があふれ出す。
その二つの液体が男性を挟むように包んで、はじけ飛ぶ。
姿を現したのは仮面と紫色の鎧をまとった姿だ。
あの男性の戦闘フォームと言えるものか。
「それではメイルオンがカイエンと天川照日の戦闘、そしてヒョウゲンと幸前継刀の戦闘を見届けます。戦闘開始」
戦闘開始の声。
それが出されて、俺とコートの男性、カイエンが向かっていく。
冒険者ということでやっておきたいことがある。
「まずは、両者HP公開だ」
お互いの耐久力とLVが表記される。
カイエンの耐久力が15000でLVが100。
LVはこっちが有利だが、油断はならない。
「LVの差が何だ! お前の方が高いからって必ず勝てると思うな!」
カイエンが鋭利な杭を振りかぶり、突きを放った。
それを俺は剣で受け止める。
彼の言う通り、LV差があるからと言って俺が勝つとも限らない。
だからこそ油断せずに俺は立ち向かうしかないのだ。




