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4 俺が強くなった時間で、幸前もまた強くなっている

 俺は三人の男性を倒してからフロアを繋ぐ道を歩んでいた。

 歩む道中に特に問題はない。


 だが、ここで俺はふと感じ取ったことがある。


「ん? ちょっと待て。なんか変だな」


 俺から待ったをかけると、幸前とフェリアが止まる。


「どうかしたのかい?」


 幸前からの疑問。

 そのまま進むのは危ない可能性もあるから、止まってくれて助かる。


「さっきのフロアとは違う臭いがする。なんというか植物の匂いや炎の匂いが忙しなく出てくることを感じるんだ」


「臭い? 僕には分からないけど……」


 幸前は臭いから分からないようだ。

 嗅覚強化スキルは今のメンバーで持っているのは俺だけらしい。


「俺は嗅覚強化のスキルもあるんだ。それで分かった」


「なるほど。悪いけど、天川君が様子見をしてくれると助かるんだが、いいだろうか?」


「ああ、様子見なら俺一人で行った方がいいからな」


「すまないね。さっきから君に任せてばかりで」


 幸前は申し訳ない表情で謝る。

 察知能力は俺の方が高いようだから、一人で行った方が最善だろう。


「気にするな、後で頼ることになるかもしれないし。じゃあ、行ってくる」


 そう言って、俺は通路を進む。

 進むにつれて、奥のフロアの様子が分かるようになってきた。

 間違いなく何者かがはいた炎もあり、直物の蔦も伸びている。


 マトトを救った時のように仲間割れか。

 その可能性も思い浮かべつつ、俺は入口から様子を見る。


 するとどうだ。

 とある男性が一人で逃げ回っていて、そのフロアには炎をまとった鳥や蔦を伸ばした大きなバラ、さらには狼までもいた。

 仲間割れとも違うようだが、状況の理解がいまいちできない。


(ねえ、照日。これってどういうことなのかしら?)


 アムリスからの疑問。


 まさか、このダンジョンに一般人が紛れ込むなんて予想できない。

 冒険者だったがモンスターが寝返ったとかそういうことなのか。


「分からないな。だが、とにかくあの男性は助けないといけないよな」


 俺からの言葉。

 どういう訳にせよ、男性は見過ごせない。


 俺は入口から出て、駆け付けようとしていた。

 と、ここでまずいことに男性がつまずいて、こけてしまう。

 それを鳥が見逃さないと、炎を吐きつける。


 男性の前に攻撃が届こうとしていた。

 このままでは焼かれてしまう。


「間に合うか!? 結晶の壁!」


 俺は剣の先を床に接触させて、魔力を注ぐ。

 結晶は床を走るように精製されて、男性へと向かう。

 アクアシールドの方がいいが、それはアムリスが所持しているため、ここは一刻を争うので結晶の方だ。


 男性に炎が届く

 かと思われたが、結晶の壁が何とか間に入って、防いでくれた。

 間一髪で助かった。


 俺は剣の先を床から離して、再度男性へと向かう。


「大丈夫ですか? ここは俺が引き受けます!」


「え? あ、うん。ありがとう」


 男性からの礼。

 特に慌てている様子もないような声だ。


 あんなことが起きたのに肝が据わっている。

 普通であったら命の危機なのに脅える様子の一つもない。

 もしかすると冒険者なのか、それともか。


 すると、今度はバラの方から赤い粉のようなものを射出してきた。

 それは霧のように散っていき、俺へと向かう。

 当たっても痛くはないかもしれない。

 だが、推測で分かることは少しでも受けるとまずいということだ。


「とにかく下がってください。俺が安全を保障しますので。アムリス、アクアシールドも念のため張っていてくれ」


 防ぐ手段は結晶であの粉のような霧を包むこと。

 念のための予防線として、アクアシールドも貼っておく。


 俺だけが受けて何かあればフォローも可能だが、後ろには男性がいる。

 男性が少しでもあれを吸って、不味いことになることは避けたい。


「分かったわ。水魔法、アクアシールド」


 俺から上半身を出したアムリスは魔法を唱えて、魔法陣が出る。

 同時に俺は赤い粉へと剣を向けて、結晶を精製する。

 イメージは長方形の紙で、できるだけ大きく。


 俺の胸に泡が現れて、大きくなった泡が俺と男性を包む。

 更に結晶の精製も済んで、向かってくる赤い粉に被せる形で衝突させた。


 衝突すると、粉の全てを包むように結晶に粘着化を念じる。

 粉は四方八方を包まれて、俺への向かうことを阻止される。

 少し結晶の包みから逃れた粉はあったが、これも泡に阻まれた。


 これで粉は完全に防ぎ切ったわけだ。


「さて、そろそろ攻撃に移りたいな……ん?」


 俺の声の後に疑問が出る。

 入口から白い馬が出てきたのであった。


 その馬は白い羽根を生やしていて、二人を乗せていた。

 二人は幸前とフェリア。


「天川君。あの三体のモンスターは僕が引き受ける。ここまで何もしないではさすがに申し訳ない」


 幸前からの話。


 俺は三体を相手しても普通に倒すことはできる。

 だが、せっかくここまで出てきてくれたのだ。

 幸前を頼ってもいいだろう。


「幸前! ありがとう!」


 俺からの礼に幸前とフェリアをを乗せた白い馬はフロアをかける。

 三体のモンスターの視線はあちらへと移っている。


「フェリア、あの技で一気に蹴散らす。こっちに何かあったら、フォローを」


 幸前の言葉に弓を持ったフェリアは頷く。

 その後に白い馬は大きく跳躍した。


「何をするつもりだ? 二人の大がかりな技か?」


 あの時の合体技、ブラストドラゴンのような技か。

 だがそれは違うようだ。

 フェリアは今のところ何もする様子もない。


 赤い鳥はそれを見て、溜めての動作に入っていた。


「フレイムスラッシュ、アクアスラッシュ、ウィンドスラッシュ、ストーンスラッシュ……」


 幸前は剣を構えて、空中で停滞した白い馬の上で呟く。


「ん?」


 二つは俺も知っている魔法だ。

 渋沢から回収した魔法である。


 すると、馬の下から魔法陣が次々と現れる。

 その魔法陣は大きく光を放った。

 普通の魔法陣以上の光を。


 炎の鳥は炎を吐いた。

 俺に見せたものとは一層大きく、どことなく鳥の形を思わせる。


「混合魔法、アークスラッシュ」


 剣に赤青緑茶の四色の光があふれて、幸前が呟く。

 モンスターに向けて斬撃を放った


 距離は明らかに三体のモンスターから離れている。

 剣が当たらないのは見えていた。


 しかしだ。


 剣から放った三日月の形の光は巨大であった。

 それこそ一瞬で三体のモンスターに届くほどに。

 炎の鳥が放った炎もすでに四散していた。


「一瞬で……モンスターが……」


 あの光のような斬撃を受けて、三体のモンスターはすでに光に包まれていた。

 光も散っていき、モンスターがフロアから消失する。


 幸前が俺と戦った時の強さのままのわけがない。

 そうは思っていたが、こんな派手なことを見せられて驚くほかはなかった。

 間違いなく、あの時の強さの倍以上はある。


 その幸前の乗った白い馬はゆっくりと落下して、足を付ける。


「どうだい? 天川君も強くなったけど、僕だってそれは同じだってことなんだ」


 俺を見て、幸前は告げる。


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