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1 冒険業の裏のヒーロー

 俺はアムリスと共に夜を過ごして、スキルの受け渡しも行う。

 それから朝を迎えて、準備も行う。

 ダンジョンの出現から結構経って、この日常もいつもの習慣となってきていた。


 ミュサからのキスもだ。

 今日もアムリスのいないところでキスをしてきた。

 やむを得ないとは言えど、アムリスにはどことなく申し訳なさも出てくる。


 それと、剣の強化も終わっていた。

 ガティークが強化してくれたのは新たなる剣、ベルガルドエンデス。

 強化されても剣からの光の漏れは変わらず。

 だが、剣を振ると刀身から光が更にあふれて、軌跡としてしばらく白い光が残るようになった。

 結構かっこいい。


 準備を整えた俺はアムリスと共にダンジョンの調査を始めていた。

 現在は多くの家で囲まれた一本道を二人で歩んでいる途中だ。


「今のところはダンジョンの出現って話もないわね」


 歩みながら、アムリスから声がかかる。

 今はダンジョンが出たという話が周囲からも仲間からもない。


「そうだな。これから出てくるかもしれないけど」


 俺からの肯定の言葉。

 今は出てないだけで、気を緩めることはできない。


「一日くらいはダンジョンの出現がなくてもいいのだけど」


「そう言って、ダンジョンに潜らなかった日なんてなかったけどな」


「まあ、そうなんだけど……だからこそよ。ダンジョンに行かない日もあっていい気もするの」


 アムリスは語る。


 そういう日があったらそれはそれで落ち着かないと思う。

 その一日で大きく突き放される、突き放されるきっかけが出てくるんじゃと考えてしまうからだ。

 割とダンジョンを攻略が習慣になり始めているのもあるかも。


 あと、ダンジョンが出るようになって日が経つが、自衛隊の動きも全くないのもあるかもしれない。

 ニュースで聞くには自衛隊からも行きたい声があるが、知事の方で動きを止めているのではないかと、噂みたいなことまで流れている。


 と、そこで、奥の分かれ道からにぎやかな声を聴く。


「声がするけど、何だろうな?」


 俺からの疑問。

 もしやダンジョンか。

 地震はない特にないが、野次馬が騒いでいる可能性がある。


「行ってみましょう」


「ダンジョンならほっとけないな」


 俺はそう言うと、声の方へと走っていく。

 走っていくと声も近づいている。

 ただ、ダンジョンが出た時とは違う声だ。


「ん? ダンジョン……とは違うようね」


「子供たちの声がよく聞こえるな」


 以前ダンジョンの近くにいた野次馬の声も聞いていたが、その時とは違う。

 子供が応援するような声が多かった。


 俺は移動していくと、空き地にたどり着く。

 その空き地には多くの子供と少数の大人が囲むように集まっていた。

 集まりの中心にいたのは成人五人。


 男か女かは分からない。

 その成人は四人の黒い覆面と黒い服をまとった人、もう一人は黄色と白の鎧と赤いマフラーをまとった人だから。


「ねえ、照日。あれって何かしら? モンスターとは違うようだけど」


 複雑な顔をしてアムリスは聞く。

 確かにあの五人はモンスターかもしれないし、その中で子供たちが脅える様子もない。

 彼女からはそう見えるだろうな。


「マーシナルライオンか。周辺地域のご当地ヒーローだよ」


 俺は赤いマフラーを身に付け、構えている人を見て答える。

 あのマフラーのヒーローこそがマーシナルライオンだ。

 鎧はライオンの形を取り入れていて、胸にはライオンの顔らしき形が施されていた。


「え、なにそれ?」


「ご当地ヒーローがこの国には割といるんだよ。うちの方では最近、よくヒーローショーをやってくれているようなんだ、しかも無料で」


「ヒーローショー……ね」


 アムリスはそれを聞いて、一応だが納得の表情を見せる。


「大波先生も言っていたけど、最近出てくるモンスターとも戦っているとかな」


「え! 冒険者なの? あの人」


「それは違うと思うけどな。ただ、ヒーローって弱い人々を悪い奴から守るだろ? だから、子供たちもマーシナルライオンがモンスターから守ってくれるってイメージは大事にしたいんだよ。冒険者ではないけどそれでも戦っているはずだ」


 俺から解説する。


 子供たちからは応援の声や、必殺キックの声が出ている。

 大きな大人も応援しているが、きっと親なのだろう。


 その様子を見ていて、アムリスは口を開く。


「ふーん、大変そう。でも、子供たちは楽しそうね」


「ああ、そうだ」


「もしかしたらモンスターが自分のところに来るかもしれないけど、その時にあのヒーローの存在があるから大丈夫ってところ?」


「そうだ。子供たちだけでなくて、戦う力のない大人にとってもな。普通の人は戦う力もないし、本当に戦ってくれるヒーローの存在はそういう人たちにもありがたいと思うよ」


「なるほどね。照日が言うとよく分かるわ」


 アムリスは納得を話す。


 俺はかつていじめられていた。

 でも、柄池さんがああいって支えになってくれたからこそ、いじめに耐えることが出来た。

 やはり、ああいうヒーローは存在するだけでもありがたいのは分かる。


「まあ、やっているのは俺達とは関係ないし、ほっといてもいいやつだ。ここの敵はマーシナルライオンに任せて問題ないさ」


「そうね、ここはあのヒーローさんに任せましょうか」


 そうアムリスが言うと、俺はこの場を後にした。

 彼女もまた俺の後をついて行き、移動する。


 移動していき、子供たちからの声も遠くなってくる。

 そこで、俺のスマホが鳴り始めた。

 スマホの表示を見ると幸前からの連絡だと分かる。


「天川だ。どうした幸前?」


 俺はスマホをポケットから取って、通話を始める。


「やあ、天川君。じつはだね、僕だけだといけないダンジョンが出てきて」


 慌てる様子もない幸前の声。

 ただ、言葉から俺は大きな問題だと感じていた。


 なにせ、彼だといけないというくらいだから。

 まだ詳しくは分からないが、相手の強さに問題があるのかと思う。

 幸前だって俺と同じくらい強いはずなのに、だ。


「ダンジョンか。幸前だけで手に余るってのは珍しいな」


「詳しく言うと、このダンジョンはスザンガの砦というんだが、そこは二人の冒険者と組まないと入れないんだ」


「ダンジョンの方からの規制があるってことか。で、俺に手伝ってほしいという訳だな」


「そういうわけだ。実はフェリアからも天川君とアムリス君に来てもらいたいって言うからね。お願いしたいんだけど、大丈夫かい?」


 幸前からの質問。


 話の内容と声の様子から察するに、敵の強さが幸前に余るという訳では無いようだ。

 そこは一安心だが、ダンジョンに入って敵の強さが少しでも分かったわけではない。

 油断はできないのは変わらない。


「まあ、俺は構わない。ダンジョンを探していた途中だから」


「助かるよ……ああ、フェリアこれは言っちゃダメだったか? 許してくれ、そう叩かないでほしい」


 スマホから幸前の声を聞くにフェリアからの注意する声が聞こえる。

 彼女からの注文は俺に聞かれたくないことだったのか。

 あの二人も思ったより砕けた中になっているみたいだ。


「ともかく、俺はそっちに向かうから場所を教えてほしい」


「ああ、頼む。場所はだね……」


 幸前からダンジョンの場所を聞く。

 それから俺はそこへと移動を始めた。

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