12 アムリスはスキルが欲しい
俺は他の三人と話をしつつ、家へと帰った。
家に帰ってからは今回大波先生からもらった石についてガティークについて聞いてみる。
もしかすると、今のミシワイドエンデスがさらに強化されるかもしれないからだ。
聞いてみると案の定、あの石でさらに強化されると聞く。
石の名はベルガルド石。
これで強化すると、自分の魔法の効果が剣や結晶に乗るとのこと。
例えば、剣にブラストボムを唱えると、切った後や精製した結晶に当てた後に爆発という感じにだ。
強化する他ない。
俺はガティークに剣とベルガルド石を頼んだ。
さらに今回手に入ったポイントは計110ポイントだ。
内訳が
・渋沢の分 +20ポイント
・御銅の分 +30ポイント
・日町の分 +60ポイント
となり、今までの撃破ポイントは1110ポイントとなる。
幸前は今回ダンジョンがなかったためにそちらの分はない。
そして、俺はダンジョンの見張りを済ませて夜まで時間を過ごす。
寝間着でベッドの上に座っていたのであった。
「今日もポイントがたまったわね。照日」
そして最近はいつものようにアムリスがいる。
「これくらいポイントがたまると他にこれ以上稼いでいる冒険者がいるのかって疑問に思うな」
俺は今まで稼いだポイントのことで呟く。
思えば結構ポイントがたまったものだと感じる。
「油断はしちゃだめよ」
「まあ、油断はできないのも分かる。このポイントだって負ければあっさりなくなるし」
「これからも勝ってね?」
「ああ」
俺は頷く。
あっさり負けるようではアムリスにも示しが立たない。
すると、アムリスは笑みを浮かべて話を続ける。
「照日も頼りがい出てきたわね」
「そっか……まあ、前はお世辞にも頼りがいがあるなんて言えないしな」
「今では照日に安心して頼れるわよ」
「いつの間にか仲間も増えたし、やりたいことのために指示もしたりするようになったしな」
あの時の自分からすると変わってはいるのは分かる。
ただ、アムリスからすれば大きく変わっているのだろうか。
「そういえば、照日」
「どうかしたか?」
「照日はこのままいくと王様になると思うけど、王様になって何したいかはあるの?」
アムリスからの疑問。
何気ないものかもしれないが、割と考えるのに時間がかかる。
少しの沈黙。
俺は少し考えた後に応える。
「……それはないんだよな、今のところ」
「レックスのこととかはどうなの?」
「そのレックスについてなんだが、トルーハの力を借りることが出来ればって考えているんだよ」
レックスのことは実は頼まれてた時から考えがあった。
なので、俺は解決済みと判断していた。
駄目ならその時はその時だ。
「私の力……ね。確かにそれだったら可能かも」
「頼まれた時からあの力ならっては考えていたんだ。狐燐さんのこともあって更に可能かと考えてね、後はトルーハに会えればレックスのことは解決だとは思う」
「それも解決なのね、だからないということ」
「そういうわけだ。なんというか、日々勝っていかなきゃと考えているから、いまいち考える余裕もないんだよな」
俺の答え。
それを聞いて、アムリスの顔はいまいち浮かない表情であった。
「確認するけど、王様になるつもりはあるのよね?」
難しい顔でアムリスは疑問を投げる。
言葉からして王様になった方がいいのだろうか。
でも、今の俺の考えは少し違う。
「うーん……なったほうがいいきもするけど、ものすごい硬い意志があるってわけではないな」
「えー、そうなの?」
「俺はアムリスの追う真相のために勝つって目的があるからな。王様のことについては割と考えていない」
「んー……そう……」
不満気味でアムリスは答えた。
今の俺は真相を追える環境を維持することを優先している。
真相を俺から追うにしても正直当たるところの見当もつかない。
ダンジョンも放置できないため、受け身にならざるを得ない状況だ。
今では仲間もいるが、ダンジョンの敵はそれ以上に強い可能性だってある。
やはり、俺もダンジョンに向かいたい気持ちはあるのだ。
幸前は俺とほぼ同じくらい強いと考えているので、任せるには十分だ。
しかし、彼だって同じくらい強い人が他にいるわけではない。
「今の俺はともかくダンジョンのモンスターを倒すことを優先したい。放置して他に危害が及ぶことは避けたいからな」
俺は目的について語る。
かなり強くなったが、俺以上に強い冒険者が出る可能性だってある。
自分を強くするためにもやはりダンジョンは行きたい気持ちはある。
「まあ、それも必要よね……それでさ、もう一つ別件いい?」
「なんだ?」
「隷属化のスキルだけど、それ欲しいの」
「え、それを? そのスキルってあんまり使いたくもないし、使わせたくもないんだよな」
このスキルは西堂さんから回収したスキルだ。
使ったことはないが、名前からするに忠実な奴隷にするようなスキルだろう。
このスキルはいいイメージがない。
「大丈夫、他人に使うつもりはないから。照日以外に使わないわよ」
「それでもだ……あれ、俺に使うつもりなの?」
俺は驚くほかない。
言うなれば、俺を思い通りに操りたいと言っているようなもの。
こんなことを言うようになったんだな、アムリス。
アムリスは不味い表情を浮かべて、俺から目をそらしていた。
口が滑ったと表情が語っているみたいだ。
「あ……ま、まあそういうことよ」
「何のためにだよ? そんなスキル」
「そのね……最近、照日に私のやりたいことをさせることが面白いって感じて」
アムリスからこんなことを言い出すなんてな。
割と呆れているし、驚きもある。
「……そんなこというなんてな。そのきっかけはなんだ?」
「その……照日からスキルを送ってもらったでしょ? それが気持ちよかったんだけど、もっとあの時色々なことしてもらえたらって。それとテオリスに聞いたのだけど、照日を隷属できればもっと気持ちいいって」
もっと気持ちいいことをしたいからという理由か。
変に大きなことを企てているわけでなく、単純な理由ということは少し安心している。
最もやりたいこと自体がダメなので、理由については論外だが。
「ともかく駄目だ」
「……ねえ、照日もきっと気持ちいいよ」
「気持ちいいからって許可できるものじゃないからな」
「ねえー、おねがいー」
アムリスからのねだるような甘い声。
顔と顔の距離も近づけてきた。
夜の雰囲気もあってか、俺の胸は少し高鳴っていた。
アムリスみたいに可愛い女性がいれば、やはりこうなってしまう。
だが、高鳴りは西堂さんの時よりは小さい。
分かった、渡そう
なんてことは言えない、流石に。
「駄目だ。あと、俺はそろそろ寝ようと思う」
俺はアムリスから視線を外して距離を置く。
西堂さんから誘惑されたから、少しは抵抗が出来たのかもしれない。
あの誘惑がなかったら、今のおねだりはもしかすると抵抗できなかった可能性もある。
俺は離れて横になる。
そうしようと思った時だ。
「だったらこうする!」
そのアムリスの声と共に俺は口を塞がれる。
ふさいだのは彼女の口。
キスして俺の口をふさいできたのだ。
「ん!?」
俺のくぐもった声。
すでにアムリスの腕は俺の後頭部にまで回っていた。
その後、一旦彼女は俺から口を離した。
「私はこれでもサキュバスなのよ。だったら、照日を誘惑して貰うまでよ」
アムリスは話した後に向かい合った形で座位の俺にまたがってくる。
更には脚も俺の後ろに回して、絡みついて来た。
「あ……待て……他のスキルならいいから……」
「他のスキルもだけど、一番欲しいのは隷属化なの! ちょうだい!」
そしてアムリスは後ろに倒れ掛かってきた。
俺もまた抵抗できなく、強引に彼女の上に覆いかぶさる形となる。
すでに赤味がかったオーラも出ていて、俺の力も抜けていた。
こうして俺は抵抗できずに生命力も吸われて、隷属化以外のスキルもいくつか渡すのであった。




