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6 人質への対処

三行あらすじ

・ゴブリンのリーダーにばれる

・でも、照日は優勢に攻める

・人質の三木島、危機が迫る

「さて、冒険者よ。見捨てるか、剣を捨てるかだ」


キングの問い。


「な、なあ? 正義の味方なんだし、見捨てないよな、俺のことは?」


三木島の問い。


(どうするのよ? この状況?)


そして、アムリスからの問い。

俺はこれらの問いに応えなければいけない。


三木島は俺をボコボコにした張本人だ。

俺はあの男の存在を気に入らない、それは間違いない。

もしも助けたところで、改心するかと言えば疑問だ。

調子に乗って、以降もいじめてくる可能性はある。


それを踏まえて、俺は答えを出した。


「分かった。俺の答えはこれだ」


答えを示す、剣を後ろに投げて。

三木島を含む人質は驚きのまなざしを俺に向ける。

その中には安心する人質も見える。


キングは笑みを浮かべた。


「いいだろう。お前は賢い正義の味方だ。それと、両手は上げろ」


「分かった、他にやることはないな?」


「ああ、それでいい」


両手を上げた俺にキングは十分と話す。

三木島を見捨てて、他の人質が無事という保証もない。


この状況にならないために、ゴブリンを倒すべきだった。

が、あいにく四匹同時に倒す方法なんて思いつかない。

こうなることは戦闘開始から予定調和だっただろう。


(こうするしかなかった……けど、どうするのこれから?)


アムリスからの不安の言葉。

剣も捨てているし、攻撃手段はない。

でも、その打開策はあるんだ、心配はない。


「じゃあ、あとは俺が冒険者のお前を処刑するだけだな」


その中でキングは歩み寄ってくる。

向かう先は俺の方。


「キングがすごいってこと証明するためだろ? やっぱり部下に手出しはさせないよな?」


「その通りだ、分かっているじゃないか」


「痛いのは嫌なんで、ばっさりと切り下してほしい」


「いいだろう、望み通りにしてやる」


キングは俺の傍まで近寄ると、剣を持ちあげる。

俺の望み通りにしてくれて、有り難い。


「流石、キングだ!」

「確か、キングって冒険者を倒すと、何かする公約あったっけ」

「キングのイチゴパンツもこれで卒業か、しみじみ……」


部下のゴブリンはすでに俺を倒したと考えているようだ。

あと、あのキングは今イチゴのパンツをはいているのか。

変なタイミングで可愛いところを出されても困る。


キングは持ち上げた剣を大きく後方へもっていく。

そして、剣を振り下ろした。


このままでは俺は切られるだろう。

確かに武器も捨てて、剣は手元にない。


「でもな、俺は何もできないわけじゃない!」


俺はそう言って、腕を下げて姿勢を低くする。

そして、背中の方を手でめくる。

手で触れたのは、普通の高校生の制服であるブレザー。

俺だって当然着ている。


さらに当然と、粘着化も念じている。

何も剣だけが俺の武器じゃない、服だって武器になるんだ。


粘着化してめくれたブレザーはキングの顔へと向かっていく。


「ヒブオッ?」


剣が俺に触れる前に、粘着化したブレザーはキングの顔に付着する。

ブレザーの袖に触れて、俺の背後へと相手を引っ張るよう念じる。


引っ張られたキングは俺の後ろの地面にたたきつけられた。

同時に持っていた剣も俺の元へと滑らせてきた。


「これで、俺に武器が渡ったわけだが、さて……」


キングの持っていた剣を俺が持つ。

重さはこっちの方が重い。

アムリスの剣はかなり軽い方だったんだな。


形勢逆転でキングをこれで攻撃できる。

だが、先にやっておくことはまだある。

今この瞬間に。


俺は片手で粘着化させた空気をキングへと放つ。

同時に三木島を囲むゴブリンへ視線を向けて、剣で突きを放つ。

離れているので、粘着化したうえで伸ばしてだ。


「ヒニュグッ!」


囲っていたゴブリンの一匹は胴を貫かれて、光に包まれる。

状況逆転であいつらはキングを見ていて、俺の攻撃を防御できなかったようだ。

この隙を狙って正解だ。


しかも、こうして一か所に固まっている以上、伸ばした剣も他のゴブリンにすぐ届く範囲。

そのゴブリン達は動揺で後ずさり状態。

俺は他のゴブリン三匹も剣を伸ばして貫いた。

貫かれた三匹は光に包まれる。


で、今度はキングの方だ。


「くそ……おまえら……!」


キングは仰向けのまま足をじたばたさせている。

粘着化した空気が胴と手を地面に固定させてもいた。


剣にゴブリンの重みはなくなっていて、俺は剣を元に戻す。

これならば、キングを安易に攻撃できるだろう。

でも、この剣で攻撃するのはやはり違う。


俺は剣をキングの手が届かないところへ投げ捨てて、アムリスの剣の方へと移動する。

その剣を手にしてから、キングへと移動していく。


「たしか、アムリスを無能と言ったな、お前」


俺からの質問。


「あ……! で、でも、無能って言葉は悪い意味で言ったんじゃないぜ。俺達の言葉では」


「誤魔化すな。無能って意味、知ってて言ったんだろ? あの言葉はアムリスをこき下ろす意味があると知って、言っただろ?」


俺はキングを見下ろす、アムリスの剣を持って。

あいつから悪い意味との語句があるから、こき下ろす意味を知っての言葉だ。


「ゆ、許してくれ……!」


「俺だってあの言葉にいい感情はなかったんだ。許すわけにはいかない」


「た、頼む! 俺がはく予定だった銅色パンツで手を打つから……」


「アムリスは決して無能なんかじゃない。俺をここまで戦えるようにしてくれたこの力、それは無能じゃない」


キングがアムリスに言った無能という言葉、それがさっきから気に入らなかった。

だからこそ、アムリスの反発も含めて、この剣で攻撃することに意味がある。


「や、止めてくれ! 銀色パンツでも手を打つ!」


その言葉を聞かずに、両手で持った剣をキングに突き刺した。

キングは口を開き、徐々に光が包まれていく。


光に全身が包まれる時間はゆっくりであった。

光に包まれた後は、それもまた時間をかけて消失する。


<やった! やった! ダンジョンクリアよ! すごいじゃない!>

<レベルアップ! レベルアップよ!>


アムリスの二つの声が脳内に響く。

これで、ダンジョンは安全だと見ていいのだろうか。

ともかく、この部屋は敵がいないから、人質の拘束を解くべきだな。


(普通にすごいわ! あなた、やればできるんじゃない! ステータス確認はしないの?)


まあ、先に人質を解放したいから、それが終わってだ。

まずと佐波さんのところへ向かった。


「佐波さん、大丈夫だった? 痛みはないか?」


佐波さんの背後へと回って、手足に目を向ける。

手は後ろに回されて縄で縛られて、足首も同じように縛られていた。

剣でその縄を切りこみを入れる。


「あ、天川君。私は痛めつけられなかったから。他の人たちも元気みたいだし、おそらく傷はないはずよ」


「そっか、無事なら安心だ」


何かされていたならと思ったが、そう言うなら安心だ。

手足の縄が切れて、佐波さんはこれで自由になった。

ここで思った、縄を粘着化した方が早く解放できるんじゃ、と。


次の縛られている人に試してみよう。

縄も有効活用できるかもしれないし、アイテムとして格納しておくか。


と、ここで地面にぶつかる音が聞こえる。

顔を向けてみると、三木島が縛られたまま、額を地面に付けていた。


「天川! 本当に俺が悪かった!」

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