6 霊から解放されるために
俺は霊に憑りつかれて、仰向けで拘束されている状況であった。
打開策を何か考えないといけない。
そこで俺はあることに気づく。
「もしかしたら、あの手ならば行けるかもしれない……」
俺は気付いたことを言葉にする。
俺は二刀流だと片手がふさがるために、剣は一本しか持たないようにしていた。
片手で空気の粘着化を行えないことを嫌ってだ。
そのために片手で二本の剣を持つ方法は考えていたのだ。
今それを試すほかない。
俺は握った剣を粘着化させて伸ばす。
伸ばす先はグランデソード。
(あなた、いいじゃない? 難しいことを考えなくても、一緒に私といれば……)
その行動に霊が俺の心に語り掛ける。
霊にどういう事情があろうとも、一緒にいるのは申し訳ないがごめんだ。
それを無視して、俺はグランデソードに剣を絡めて粘着化を念じる。
粘着化して伸びたグランデソードが粘着化したミシワイドエンデスを蛇のように伝っていった。
目指す先は俺の手中。
グランデソードの伸びた部分が俺の手に収まる。
同時に二本の剣の粘着化を解除する。
ただ解除するだけじゃない。
それぞれの剣がらせん状に混ざるようにだ。
今二つの剣は剣の形は成しているも、それぞれの部分が混合している形だ。
「これならば、二つの粘着化した剣を合わせれば……」
言葉と共に俺は混合した剣に魔力を込めてみる。
結晶の精製できる手ごたえもあるし、スキルを獲得できた感触もある。
そして奥の方から新たな鬼の霊が飛んできた。
今度は三体だ。
憑りついた霊も何かまずいと察したようだ。
(ああ! 止めて、あなた! そんな……)
霊が察して剣を持った俺の手へ手を伸ばす。
別の手に重力をかけようとするのか。
悪いけど、俺は霊が愛している本人ではない。
申し訳ないけど、俺への愛は今は向けないでほしい。
まずは気合具現化だ。
念じてみると、俺の体から白いオーラが沸き上がる。
オーラは俺の体全てを覆う。
不思議と冷たさも逃げて行くかのようだ。
「はあっ!」
言葉と共に俺は白いオーラを散らす。
すると、オーラと共に霊は飛ばされていく。
霊は霧のように散っていった。
その塵ざまに俺へと手を伸ばしていたようだった。
俺のやったことは好意をはねのけること。
枷となる霊とは言えど、申し訳ない気持ちだ。
だが、こういう方法しかない。
俺は心の中で謝って、剣に魔力を込める。
さらに強固な結晶のドームを作るためだ。
流石に三体の鬼となれば、今の結晶のドームでは力不足かもしれない。
結晶を精製して、粘着化していた結晶も戻す。
その結晶をドーム状に覆って、より厚いものにする。
これならば防げるか。
ドームが俺を覆ってから、轟音が響く。
おそらく鬼が金棒でドームを攻撃したようだ。
ドームの中から見ていて、ひびが走ってもいた。
轟音も落ち着く。
攻撃は止んだと思われる。
念のために結晶は完全に壊さずに様子を見よう。
結晶の一部を粘着化して、穴をあけた。
見えた範囲では鬼がいる様子はない。
臭いの方は霊なので、探るにしても臭いそのものがないからできない。
「鬼はいない……みたいだな」
ドームを粘着化して俺の周りからどけた。
この方法ならば、防御も容易だしやりようはあるからだ。
周囲の視界が目に入ると、やはり鬼はいない。
問題はないようだ。
(聞こえる、照日? これで反撃できそうね)
アムリスからの心の声も聞こえてきた。
「ああ、ようやく反撃に移れるな」
アムリスへの解答を俺はする。
それは相手の御銅に向けてもだ。
その御銅は手を合わせて、青いオーラをまとっていた。
「流石は優勝候補、一筋縄ではいかない。しかし、拙僧もただで負けはしません」
言葉と共に御銅は数珠を手で揺らしていた。
まとっていたオーラもさらに大きくなっている。
力をためているようだ。
「俺からも攻撃しないといけないな」
ならばと、俺は粘着化した結晶を剣にまとわせて、先端を伸ばした状態で解除する。
今の剣は刃の部分が結晶に覆われていて、長さも結晶がない状態の五倍だ。
その剣で、俺は縦に斬撃を放った。
リーチも十分相手に届く。
「くっ!」
数珠を剣の軌道に合わせて構える。
同時に青く半透明な腕も背後に出てきて、防御の構えを取っていた。
その腕も大きく、溜めていたオーラで形成した腕のようにも見える。
半透明の腕と結晶で伸ばした剣がぶつかる。
金属の音が響く。
その結果は俺が押していて、半透明の腕は切られて、御銅に結晶の刃が向かう。
「この攻撃、通れ!」
俺の声と共に縦の斬撃が御銅に当たった。
「がっ!」
御銅は攻撃を受けて後方に下がり、倒れる。
まだ俺からの攻撃は終わらない。
結晶で出来た剣を粘着化させて、相手にまとわせる。
倒れた御銅は粘着化した結晶に蛇のように巻き付かれて拘束された。
これで俺から近づける状況になった。
「どうする? 俺はこの結晶を爆破させて攻撃ということも可能だ。負けを認めれば、以降は攻撃しない」
俺からの次の攻撃を宣言する。
この結晶を爆弾化させれば、大きなダメージになるだろう。
最もブラストボムでもいいが、魔法を使えば魔力を消費するし、今あるもので少しでも節約した方がいい。
次も戦う訳だし。
御銅は拘束された状態で粘着化した結晶を見て、もがく。
暴れても結晶が取れる様子はない。
「ぐ、拙僧の負けを認めるしかないです……」
もがきを止めて、御銅は敗北を宣言する。
その様子を見ていたメイルオンさんは頷く。
「勝者、天川照日」
メイルオンさんの宣言。
これで俺が二戦二勝だ。
できるだけ、後続に戦わせたくはない。
三木島と佐波さんではやはり力不足は否めないし。
と、ここで、気になったことが湧くように出てきた。
「そうだ、今の耐久力って分かるかな? アムリス」
(あ、うん。どれくらい減ったか調べたいんでしょ?)
心の声でアムリスは了解する。
昨日サキュバスに生命力を吸われた状況に似ている。
霊にかなりの量の生命力を奪われた。
今の状態は正直かなりだるい状況で、吐く息も妙に重い感じだ。
重労働をたくさんしたときの疲労感にも似ている。
もしかすると生命力をかなり吸われた状態だと、自然治癒に鈍りが出るのかもしれない。
そのため、今の状態はあまり回復していないと俺は予想していた。
(照日の予想通りだわ)
そうか、どれくらい減って、どれくらい回復したか分かるか?
やはり具体的な数値を聞きたい。
(えっと確か、この戦闘の時の耐久力が17300、レベルアップもしたし。で、鳥の霊に当たってから、15100。キス自体では14900になって……今の耐久力は14900)
このアムリスの報告で分かる。
キスされてからは回復してさえもいない。
つまりは生命力を奪われたり、疲労を感じると自然治癒の速度が鈍るということか。




