9 誘惑との勝負
俺は西堂さんに抱きついて、密着をしていた。
彼女もまた俺に手足を巻き付けて、密着を強める。
「ん……これで嗅覚強化を送りました。次は何が欲しいですか?」
一旦俺は密着している腰と胸を話す。
西堂さんは密着しすぎると痛いというので、合間に弱めている。
「次はね。パートナー遠隔可能が欲しいわ。自然治癒もそろそろいいかしら?」
西堂さんからの指示。
奪われたのはアクアヒール、アクアシールド、ウィンドランス、爆弾化、爆弾混入。
そして今、嗅覚強化を渡してしまった。
それと、LVも10奪われていた。
スキルのついでにこちらも欲しいということで、要望を受け入れる。
不味いって感情はない。
奪われて快感があるだけ。
生命力とレベル、スキル、奪っていいものはある。
だから、快楽のためにそれも奪われていい。
「分かりました。パートナー遠隔可能を放棄します」
「あん……次は生命力も頂くわ。LVが上がって回復もしたいから」
俺はキスをせず、股間の密着をさせる。
西堂さんも足を絡める力を強めてきた。
パートナー遠隔可能が俺の腰から離れていく。
そのスキルが彼女へと流れた。
スキルを奪われる快感もかなりいい。
今では奪われるというよりも、密着して流し込むという感覚さえある。
それがどこか病みつきになりかけている感じだ。
だが、パートナー遠隔というスキルで思い浮かべる。
俺にパートナーはいたのか。
何故か気になることだ。
「放棄しました。次はまとめて送りますか?」
「ふふふ、ありがとうね。でも、本命のスキルがなかなか来ないのよね」
本命のスキル、それは自然治癒のスキルだ。
きっと西堂さんも喜んでくれるだろうし、何よりこれを渡せばすごい快感が期待できる。
でも、送ろうとしても何故か失敗していたのだ。
「あ、すいません。何故か送れなくて……」
「いいわよ、それっ」
不意に俺の顔を引き寄せて唇を奪ってくる。
「んぐ……」
口と腰から生命力が流れている。
こちらの快感もなかなかいい。
少ししてから西堂さんは俺から口を離す。
イタズラをしたとの笑みを西堂さんは浮かべる。
なんというか、可愛く感じる。
ちなみに今の俺のLVと耐久力だが、LVが99で耐久力が11000/12100。
対して彼女はLVが33で4500/4500。
生命力とLVを奪われた結果がこれだ。
「ふふふ、素敵なことよね、こうして君が私の糧となってくれるなんて。君は強さと引き換えに気持ちよくなって、私はその強さを奪って気持ちよくなる。んぅ……素晴らしい仕組み」
「あ、ああ……同感です」
俺は抱き寄せられて、腰の密着も強めてもらう。
生命力が俺から奪われていった。
この快楽はまだまだ続けられそうだ。
出来ることならずっと味わいたいくらい。
「それでね、もっともっと気持ちいいエッチができたら、本命のスキルを奪えそうな気がするの」
「そ、それって……!?」
西堂さんは俺から絡みを解き、距離を置く。
今でも十分な快楽を得られるし、悪くない。
でも、さらにすごい快楽ということは。
そして彼女はベッドから立ち上がって、スカートの横に手を入れる。
その手を下げると紫の下着を脱いだ。
今彼女のスカートの中は股間を覆う布はない状況。
俺は上体を起こして、その様を見ていた。
「私とあなたで交尾エッチすれば、自然治癒も頂けそうでしょ?」
「あ、ほ……ほん……!?」
俺が確認をする最中に、西堂さんは下着を手に取って、カーテンの外へと放り出す。
やることはつまり、俺の固いものを彼女の中に入れること。
今まではいれないで触れ合うだけ。
それがもっと深い絡みをすれば快感は今以上だ。
断る理由なんてない。
「本当よ。あなたのサキュバスのパートナーさんだってしてくれなかったこと。それを今しましょう」
西堂さんは腰を低くして、俺に近づく。
更にと俺の方に抱き着いてきて、再度、互いの腰と胸を密着させる。
彼女の言葉に思い出すこともあった。
「あ……」
パートナーか。
そういえば、いたはずだよな。
「サキュバスなのにエッチもしていないんでしょ? 好きな君にだったら私の初めて奪われてもいいし、私もこれから凄い楽しみなの」
「……」
西堂さんのささやきに俺は何も言えなかった。
俺の腕を絡めたい気持ちもあったが、動かない。
俺にはパートナーがいたんだ。
確か名前は、サキュバスのアムリスだ。
最初にダンジョンが出来てから出会って、それで冒険者に成ったんだ。
それで、彼女の目的は何だっけか。
そうだ、多くのモンスターを倒すってことを言っていたんだ。
……こんなことをしてていいのか、俺は。
「だから代わりに私がしてあげる。パートナーなんて忘れさせてあげる」
「……」
俺は再びの無言。
俺は何をやっているんだ?
見知らぬ女性からの誘惑に負けていていいのか?
情けない姿晒して、アムリスにどうやって謝るんだ?
「だからズボンを脱いで、その固くなったものを私に入れて」
俺は情けないことをしているってようやくわかった。
理解できるとふと涙が出てきていた。
このままいったら絶対に勝負を捨てるようなもんだ。
本当に俺は情けない。
情けなすぎて、自分が大馬鹿すぎる。
抵抗しないといけない。
「……だ」
「どうかしたの? 私が脱がしちゃっていいの?」
西堂さんは確認をする。
俺ははっきりと言葉を出す。
「駄目だ……」
「あら?」
「俺はこんな誘惑に負けるなんてダメなんだ、俺は凄く情けないことをしているから……」
抵抗の意思を俺から伝える。
押し返して西堂さんを突き放すべきか?
いや、それでは駄目だ。
確か近くに俺の剣もあったはずだ。
粘着化して拾えば、攻撃手段になるはずだ。
「そうなの? 私はいやよ」
「んぐ……」
西堂さんからのキス。
距離からして防げなかった。
再びの脱力。
一旦、西堂さんは口を離す。
俺はその間にカーテンへ向けて、手を伸ばした。
そして粘着化も念じる。
カーテンではなく空気に向けて。
「ねえ、気持ちいいことお預けなんて嫌よ。もうエッチしたくてすごくむずむずしているから。赤ちゃんも作りたいぐらいなの……」
西堂さんは腰を上下させて、俺の固いものを刺激してきた。
甘く誘う声。
まだ根っこの方から誘惑に乗りたい気持ちが俺にあるみたいだ。
改めて情けないと感じる。
「それでも、それでもダメなんだ……」
「じゃあ、気持ちいいこと思い出させてあげる。またしたくなるように」
西堂さんは手に触れて唇にハートを出す。
そのハートの上からキスをしてくる。
再度俺の視界が桃色を強めた。
快楽はあるし、それに流されたい気分もある。
でも、俺は抵抗しないといけない。
何とか粘着化した空気を放てた。
そして、外の床に向けてその空気を目一杯広げる。
剣はどこにあるかは分からない。
だが、たくさん広げれば絶対に引っ掛かる、床にはあるんだから。
その粘着化した空気を今度は俺の手元へと戻す。
手ごたえからして、おそらくあるはずだ。
「んんん!」
キスされた状態で俺からの抵抗の言葉。
だが、何とかやってきた、俺の剣が。
俺の手に剣が収まる。
今の俺達は密着している状態。
下手に動かせば、俺も巻き添えになる。
だが、その方が都合がいい。
「んぅ!」
西堂さんはふさいだ口から痛みの声を漏らす。
俺は密着した状態から攻撃をしたからだ。
キスの状態がお互いに解ける。
「こんな痛みぐらい受けないとな。こんな情けない姿で、俺はただで済ませたくないんだよ」
どんな攻撃をしたか。
それは西堂さんへと突きを放ったのだ、俺ごと巻き込むように。
当然、かなり痛い。
だが、桃色の視界も弱くなったし、誘惑もこれで断ち切れそうだ。
剣を引き抜くと、西堂さんはよろけて後ろへ下がる。
まだ密着するようなら再び俺ごと突き刺すまでだ。
だったら、彼女は離れるしかないよな。
「私の誘惑を完全に跳ね除けるなんて……こんな、こんなことが……」
西堂さんは翼と尾を生やして、俺から離れる。
逃げるつもりだが、そのまま黙ってみているつもりはない。
俺は呼吸を整えて、剣に魔力を込めた。
「これで終わらせる! 誘惑を断ち切るために! そして、アムリスのために!」
俺は剣で西堂さんへと突きを放つ。
結晶は槍をイメージして伸ばしていく。
その槍は彼女を貫いた。
そして、そのまま結晶を粘着化して上に動かし、振り下ろす。
結晶からは離れて、彼女は叩きつけられた。
「ああ、そんな……私の負けなんて……」
俺はカーテンをのけてから西堂さんの元へと歩む。
すると、彼女の耐久力は0になっていた。
メイルオンさんがその様子の中で頷いて、この声が響く。
「勝者、天川照日」
情けない姿もさらしてしまった。
だが、これにてこの勝負も勝てたわけだ。




