8 誘惑に負けて、糧となる
俺の頭は西堂さんのスカートの中に閉じ込められた。
視界から見えるのは紫の下着だけ。
「離さないと……」
俺は手を太ももに伸ばして活路を開こうとする。
どうにかしないといけない、この状況を。
しかし、どうやってか。
誰かに助けてもらうか。
でも、誰ならばいいか。
俺の頭には誰も浮かばなかった。
おそらくはいる、この状況を打破してくれる人は。
でも、俺は出せなかった。
この状況から離れてしまえば、こんなことはもうないと思えてしまって。
「いやよ。君にだけしか下着見せないし、見せていて気持ちいいのは君だけなんだから」
西堂さんは俺の顔を後ろから押し込む。
距離も縮まって、下着を鼻に押し付けてきた。
「んぅ……」
股間の匂いが鼻を経由して、脳へと届く。
さらにと太ももで頭を揺らし、臭いを広範囲に行き届くようにしてきた。
これがフェロモンの匂いというのか。
脳が退化しそうだった。
こんな経験は初めてだし、下手したらもう味わえない経験だ。
結局、抵抗手段も思い浮かばない。
しばらく、俺はフェロモンを脳へと送り込まれた。
「それじゃあ、終わりにお礼をしないといけないわ。受け取って……ん!」
お礼と言って、西堂さんは自分の下着を俺の鼻に密着させる。
俺の後頭部を押し込んで、ふとももも閉めて。
それで俺の鼻は根っこまで埋まるかのような密着をした。
そして、西堂さんの体が一振るいする。
「ん……」
先ほどまでと違う臭いを嗅いでいた。
なんと言うか俺の脳へと直接刺激するようなにおい。
この匂いも悪くない気もする。
俺は勝負をしているんだ。
負けてはいけない勝負を。
でも、誰のために負けられないんだっけか。
あることはあるが、それは思い出せなかった。
そのおかしいことにも考えが回らない。
そんな考えをしていると西堂さんは顔の拘束を解いてくれる。
解いてからは俺の真正面へと着地をした。
名残惜しさが残る。
もっとあのままでもよかったような気分だ。
「ふふふ、もう一つのプレゼントよ」
俺の顔に手を触れて、西堂さんは顔を近づける。
唇と唇が浅く触れ合う。
ちょっとの時間が経ってから、すぐに距離を置いた。
「あ……」
生命力を吸い取るんじゃないのか。
なんと言うか期待外れだ。
もっと深く絡みつくようなキスがあるのかと思ってもいたのに。
「焦らないのよ。それよりもステータスを見せてほしいの、君がどれくらい強いか詳しく見たいな」
西堂さんの頼み。
俺に攻撃をするんでなく、情報の確認なのか。
何でそんなことをするのか分からない。
提案を飲む理由なんてない。
「あ、その……分かった……」
のだが、俺はそれを呑んでしまう。
何故か分からないけど、見せた方が一番いい気がして。
ステータスを見せるくらいならば。
なんか、こんなことやっている場合じゃないような……。
そんな考えも俺の脳裏にあった。
俺はステータスオープンを念じると、西堂さんは俺の後ろに歩いてきた。
肩越しから彼女はステータスウィンドウを見る。
「凄いわね。私の何倍も強い。君はどれほど大変だったのかよく分かるわ」
「あ、その……ありがとうございます」
素直な評価は嬉しかった。
無意識に礼を言う。
「それでね、自然治癒スキルを無効化して。スキルを見るとできそうでしょ? やってほしいな」
それをやったら、勝負で不利になってしまう。
でもやらなかったら、この雰囲気も終わりなんじゃ。
どうすればいいんだろうか。
少し悩む。
それから、俺は決めた。
「あ、えっと……わ、分かりました。無効化します」
俺は自然治癒を指示通りに無効化した。
これで俺の耐久力は回復しない。
きっとこれでよかったはずだ。
そもそも、こういうことまで素直に従うっておかしいんじゃないのか。
考えはあったが、それは後回しだ。
今は西堂さんの期待に応えたかったから。
そうすれば望む結末があるはずだ。
「ふふふ、素直でさらに好きになっちゃった」
西堂さんから俺の頬へキス。
浅いし時間も短い。
でも、嬉しかった。
恋人だったら、こういうキスがよくあるんだろうか。
西堂さんが俺の恋人だったら、キスだけじゃないかもしれない。
もっと、深い関係もあるはず。
「えっと、ありがとうございます」
俺からの礼を聞いて西堂さんは離れる。
その彼女の顔は笑顔だった。
その後ろではいつの間にか黒い円も浮かんでもいた。
「それじゃあね。素直で好きな君にいい報告があるの」
「そ、それって一体!?」
俺の心は踊っていた。
黒い円が大きくなり、スライドしていく。
そこに現れたのはカーテン突きの広いベッドだ。
「このベッドで二人だけの時間を過ごしましょ」
「……それって!」
ベッド、二人だけの時間、二つの語句。
俺の期待を醸し出すのに十分だ。
西堂さんはカーテンを開けてベッドに座る。
そしてゆっくりと足を組む。
一瞬だけだが、スカートの中の下着も見せつけて。
「エッチな快感をお互いに感じるってことよ」
「その、キスもしてくれるってこと!?」
俺の質問は期待が大きく膨らんでいた
期待通りの展開だ、ここまでは。
「ふふふ、キスで生命力も奪っちゃうわよ。で、君の意思を聞きたいのだけど?」
凄く行きたい、それが俺の意思。
行ってキスをされたいし、吸われる快感も味わいたい。
先ほどのサキュバスの戦闘で、快感は味わっている。
だからこそ、それ以上の快感があると期待が出来た。
「そ、それは……!」
行きたいという言葉、それが言えなかった。
何故か知らないが、身を委ねることへの危機があるような気がして。
外からも内側からも引き留める声が聞こえているのかもしれない。
その声は内容も聞き取れないので、分からないけど。
言葉を出すのに戸惑いがあった。
しかし、その戸惑いは消えていく。
西堂さんは手を俺に伸ばして、膝を上に伸ばす。
足はM字を表すように開き、スカートの機能も意味をなさない状況。
下着を覆う股間も俺に見せつける。
子供が抱いてほしいと意思を伝えるように。
「来て、君が欲しいの……」
西堂さんの願うかのような瞳と言葉。
あの状態で抱き着いて、キスをされたい。
俺の快感は約束されている姿だ。
戸惑いなんて俺から消えていた。
「そ、その……俺を欲しがってください!」
俺は剣を離して、西堂さんへと歩いて行く。
何か重大なことをしていた気もした。
その重大さも気にしたくなかった。
俺が向かい合う形で西堂さんに抱きつくと、腕を背後に回す。
そして胸と腰も密着させて、股間の固いものも押し付ける。
快感が俺の腰回りに感じた。
「あん……それじゃあ、はじめましょ」
西堂さんは俺の首に手を伸ばして、後方へと倒れる。
赤味がかったオーラもすごく出ていた。
先ほどのサキュバス以上に。
俺も同時に倒れ、ベッドの上だ。
今は四つん這いの俺の下に仰向けで西堂さんがいる状況。
カーテンも締まっていて、二人だけしかいない空間。
「は、はじめてください!」
俺はもう待ちきれなかった。
その先の快感が味わいたくて。
「いいわよ、君の全てを私の糧にしてあげる」
西堂さんが俺の顔を引き寄せてキスをする。
同時に開いた足を俺の腰に巻き付けて、股間との密着を強めた。
俺もまた抑え込むように口と舌を押し込んだ。
さらに腰の固いものを埋めるように西堂さんの股間に密着させる。
一気にだるさが来た、それと快楽もだ。
「んぐ……!」
生命力が奪われる。
口と股間からそれが離れているのが分かる。
それも先ほどのサキュバスとは比べないほどに。
「んぁ……」
西堂さんに離れた生命力が吸われていく。
だが、彼女は満足気味の顔である。
ふと、互いの耐久力に目が行く。
俺は12700で、西堂さんは2900。
これで、耐久力が500奪われたようだ。
不味いかというよりも、もっと奪われたらどうなるか。
たくさん奪われたらもっと快感があるはずでは。
それが俺の頭の中にあった。
俺は一旦唇の距離を離す。
西堂さんもそれを受け入れた。
「こんなに気持ちいいことがあるんですね……」
「ふふふ、エナジードレインって君も気持ちいいでしょ。でも生命力だけじゃないわよ、奪うのは」
「そ、それは何を」
「あなたの強さの元も欲しいの。レベルとスキルが欲しいの」
西堂さんからの要望。
生命力だって限度があるし、他も奪われれば快感があるはずだ。
「具体的には、その、何が……?」
「スキルはね。試しにブラストボムが欲しいわ。私が吸うときにブラストボムいらないって考えて」
スキルを手放せば、もっと快感があるはず。
それに違った快感かもしれない。
要望を飲むしかない。
「わ、分かりました。ブラストボムはいらないです!」
「ありがと。それじゃあ、確認のためにもお互いにステータスオープンしていましょうか」
俺はさっそく西堂さんにキスをした。
ステータスオープンもして、だ。
お互いに手足の力を強めて、密着を強める。
「ん……」
俺の股間から生命力とは違うものが離れていく。
きっとブラストボムの魔法だろう。
俺のステータスからその魔法の表記が薄くなっていったのが分かる。
その力のようなものが西堂さんに流れて行った。
キスしながらも彼女は喜びを見せる。
俺の魔法の力を感じてたようだ。
生命力とは違う力が俺から離れていき、西堂さんは俺から口を離した。
「ふふふ、ブラストボム。私が使えるようになったわ。成功よ」
成功の言葉。
俺のステータスにはブラストボムがなくなり、西堂さんのステータスに移っていた。




